デスマッチファイターはイクメン多し 血だるまの下の顔は素敵なパパ【連載vol.11】

ガラスボードに突っ込み、蛍光灯で殴り合い、画鋲の雨を浴びる……デスマッチファイターの体は傷だらけ、流血も日常茶飯事だ。

宮本ファミリーはサンリオ展示会の常連【撮影:柴田惣一】
宮本ファミリーはサンリオ展示会の常連【撮影:柴田惣一】

毎週金曜午後8時更新「柴田惣一のプロレスワンダーランド」

 ガラスボードに突っ込み、蛍光灯で殴り合い、画鋲の雨を浴びる……デスマッチファイターの体は傷だらけ、流血も日常茶飯事だ。

 文字通り、体を張って日々、血を流しているプロレスラーが、家庭に戻ると「イクメン」という意外な話がある。実際、子育てに積極的に取り組んでいるのだ。

「デスマッチ・ヤンキー」宮本裕向もその1人。広島で暴走族を率いていたヤンキーも、今では素敵なパパとして知られている。

 キティちゃんでおなじみのサンリオの展示会で何度か一緒になったが、奥様、お嬢様2人をリードする姿は、格好良かった。

 サンリオ商品がずらりと並んだ会場。宮本ファミリーは毎回、にこやかに楽しんでいる。小学生高学年になった2人姉妹は思えば、幼稚園児の頃から、きちんとしていた。

「あいさつにお礼とおわびができなければ、人としてダメ」と、時には厳しく教えたという宮本。実際に、2人のお子さんは、大きな声で「こんにちは」とあいさつ。「大人には敬語」というお父さんの教えを守り「ありがとうございます」「すいませんでした」と頭を下げる。

 できなければ、その場で宮本がチェックを入れ、素直に応じる娘さん。そこには、しっかりとした親子関係が出来上がっていた。それもこれも、厳しいだけではない愛情もあるからこそだ。「パパ、大好き!」という言葉も何度も耳にしている。

 奥様が同行できない時にも「父と娘」で来場しており、その様子はうらやましい限り。サンリオキャラクターのショータイムには「パパは、肩が痛いんだよ~」と言いつつも、肩車して「見えるか? 大丈夫か?」と愛娘を気遣う。

 娘さんが小さい頃には、バイクならぬ電動ママチャリで、幼稚園への送迎もしていた宮本。リング上の勇姿からは想像もつかない一面を持っている。

「クレイジー・モンキー」葛西純も負けてはいない。息子さんを「ハッピーボーイ」、娘さんを「ジプシー嬢」と呼び、SNSで紹介。得意のイラストや似顔絵も駆使して、お子さんたちとの交流を明かしており、会場に同行することもある。

 リングでの狂乱戦士ぶりと子煩悩なパパの落差はすさまじい。葛西にいわせれば「どちらも自分」なのだろうが、プロレスラーの奥深さを、これほど感じさせる男はいない。

「クレイジー・キッド」竹田誠志も、宮本、葛西の後を追っている。お子さんはまだ小さいが、早くもイクメンぶりを発揮。デスマッチでも2人の先輩に追いつけ、追い越せ、とばかりに頑張っているが、子育てでもそのうち、先頭に立っているかも知れない。

 流行りだからという上っ面のイクメンではない。彼らは本気で子どもと向き合っている。子どもは大人が思うよりずっと正直で敏感だ。本物の愛情を感じれば、本気で懐く。

 痛みを知るからこそ、人に優しくなれる。生死の境を垣間見るデスマッチファイターだからこそ、子どもへの愛情も深いのではないだろうか。

 リング上では狂気を感じる怖いレスラーだが、プライベートでは優しいパパ。何とも素敵だ。

次のページへ (2/2) リング上とのギャップが激しい狂猿・葛西純
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