藤井聡太2冠(18)が誕生して約1週間。興奮冷めやらぬところだが、“史上最年少”記録を次々塗り替えている藤井2冠が、将棋の天才であることに疑いをもつ者はもはやいないだろう。このまま純粋に将棋を極めていってもらいたいものだが、好事魔多し。この先、藤井2冠の進む“将棋道”を邪魔するものも出てくるだろう。将棋界の天才が道を踏み外さないよう、注意すべきことは何なのか。かつて、12歳でプロ入りし“天才少女”といわれた元女流棋士・林葉直子さん(52)に電話で聞いた。

　藤井聡太クンを、もしも子どものときの私が見たとしたら、彼の脳をのぞいて見たい、と思うでしょうね。アホみたいかな。私は天才少女と言われながらも、私より将棋の強い人が周りにたくさんいて、その人たちの頭の中がどうなっているのか、とても不思議だったんです。

　藤井クンの将棋は、強さがわからないぐらい強い、不思議な将棋で相手を飲み込んでいく。得体のしれない魅力があります。強運でもあって、将棋の神サマから愛されている、と思います。スーパーコンピューターの富岳と私がタッグを組んで、対する藤井クンは目隠しをしたうえ一手5秒の制限付きで指したら勝てないかな？　なーんて、夢を見たります。

　藤井クンはまだ18歳。30歳ぐらいまで、何らかのタイトルを持ち続けるでしょう。でも、将棋は一般的に若い方が有利で、年齢が上がるほど勝つのが難しくなっていきます。天才・藤井クンといえども、将棋を極め長く第一線で活躍するのは厳しい道のり。特に今は実家暮らしで高校に通い、未成年でお酒もタバコもできない。いわば安全なところにいます。高校卒業後は大学へ進学せず将棋1本でやっていくそうだから、それからが大変になるでしょうね。

　実家暮らしで高校に通っていれば、規則正しいきちんとした生活が送れますよね。これって、ありがたいこと。実家を出て1人暮らしを始めた経験のある人ならわかると思いますけど、人間って何の制約もないと、ついつい自堕落な生活に陥りがち。よほど朝型の人でなければ朝は起きなくなるし、将棋の勉強より楽しい遊びに時間を使ってしまうものです。