歌謡曲からジャニーズまでヒット曲の秘密は「思い付き」68歳編曲家・船山基紀の流儀

名曲のアレンジは「主義主張のない」姿勢から生まれ、有名アニメソングは「なんとなく思い付いちゃった」――。「勝手にしやがれ」(沢田研二)から「シンデレラガール」(King & Prince)まで手がけた編曲家の船山基紀氏(68)と、新世紀エヴァンゲリオンの主題歌「残酷な天使のテーゼ」やWinkの「淋しい熱帯魚」に携わった作詞家の及川眠子氏(59)がこのほどトークショーを開催し、ヒット曲をつくる秘訣を語り合った。日本の歌謡、J-POP界を支えてきた音楽職人の信念には、“こだわりのなさ”が貫かれていた。

トークショーで笑顔を見せる船山基紀氏
トークショーで笑顔を見せる船山基紀氏

「勝手にしやがれ」「時代」のアレンジ手がけた船山基紀氏×「残酷な天使のテーゼ」作詞の及川眠子氏 ぶっちゃけ対談トークショーから探る

 名曲のアレンジは「主義主張のない」姿勢から生まれ、有名アニメソングは「なんとなく思い付いちゃった」――。「勝手にしやがれ」(沢田研二)から「シンデレラガール」(King & Prince)まで手がけた編曲家の船山基紀氏(68)と、新世紀エヴァンゲリオンの主題歌「残酷な天使のテーゼ」やWinkの「淋しい熱帯魚」に携わった作詞家の及川眠子氏(59)がこのほどトークショーを開催し、ヒット曲をつくる秘訣を語り合った。日本の歌謡、J-POP界を支えてきた音楽職人の信念には、“こだわりのなさ”が貫かれていた。

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 今月18日の夜、東京・下北沢の本屋B&B。音楽ファンら約80人で満席となった会場は、文字通りに熱気に包まれた。1980年代後半に一世を風靡したWinkでコンビを組んだ2人。息の合った会話が展開された。

「勝手にしやがれ」(沢田研二)、「時代」(中島みゆき)、「恋人よ」(五輪真弓)、「大都会」(クリスタルキング)、「Romanticが止まらない」(C-C-B)……。船山氏がこれまでアレンジしたのは名曲ばかりだ。80年代に早くからデジタルの打ち込みサウンドを導入し、時代の流行を敏感に取り入れ、多彩な楽曲を世に送り出してきた。

船山基紀氏と及川眠子氏
船山基紀氏と及川眠子氏

 Winkの代表作で洋楽カバー曲の「愛が止まらない ~Turn It Into Love~」(1988年)で大胆にユーロビートを採用した船山氏は「Winkは『当たって砕けろ』。カバーだからそのままやっても太刀打ちできないと思っていた。毎回、原作を超えたぞというのがレコーディング終了の合図だった。思い上がっていたね(笑)」と照れ笑いをみせた。
 
 ここで、カバー曲の訳詞の手法に話が移る。船山氏が「ずっと聞きたかった」として尋ねたことは、英語の歌を日本語に訳す場合に音数が足りなくなるのではないか、という疑問だ。

 これに対し、作詞教則本「ネコの手も貸したい 及川眠子流作詞術」(リットーミュージック)の著作がある及川氏は「元の詞と比べると、(日本語訳は)半分しか入らない。厳密に訳をそのまま入れると字余りになる。私としては作曲家が書いたメロディーに意味があるので、基本的にメロディーを生かしたい。そこで、Winkの場合は別のストーリーを持ってきているが、訳詞は核がぶれないように言葉を言い換えていく作業」と、職人技で訳詞を当てはめていくことを明かした。

 重ねて及川氏は「作詞家に天才はいないと思う。なぜかというと請負だから。相手の要求にきちんと応えることは天才ではできない」ときっぱり。船山氏も「僕は音の職人なんですよ。編曲家はものすごい音楽家ではなく、音楽を生業にしている職人なんです」と強調する。

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