青木真也はなぜ離婚に進むのか 語った「家族」と「ファミリー」の違い そして「再婚」

青木の人生観が詰まった「距離思考」
青木の人生観が詰まった「距離思考」

「再婚」について直撃すると…

 そんな青木に改めて聞いてみた。「再婚」することはあり得るのか?

「それ、いろんなところで言われるんですけど、『結婚』みたいな概念に疑問を感じているんですよ。マジメに。だから『パートナー』はあったとしても、『結婚』とかそういうもので縛る必要はないと本気で思っています」

「あくまで今の考えですよね?」と水を向けると、青木は「キナ臭くないですか、あのシステム」と答える。「あのシステム」とはもちろん「結婚」という制度のことだ。

「理屈が通らないと思うわけ。だって遊牧していた時代には『結婚』なんていう文化はなくて、定住し出したら人も増やしていかなきゃいけないからルールが必要になった。だからこそ『結婚』ていう文化ができたし、それがあることによって格差ができなくなった。ただ、人がつくったルールだし、それが今の社会に適用していると、あんまり僕は思えないんですよね」

 ここまで聞いて、実はそう感じている人が意外と多いのではないかと思った。でなければ社会問題になるほど大きな話にはなっていないだろう。諸説あるのでそれが真実かどうかは不明だが、SNS上では「3組に1組が離婚する時代」との記述も見受けられる。それを知ってか知らずか青木は言う。

「『結婚したい』っていう女性が割と多いけど、そういうのを聞くと、なんだこいつは? って思いますね。だから1回してみろって勧めます。そしたら嫌になるから。でも、なんなんですかね、『結婚したい』って言うのって」

 実はこの答えは意外と簡単だったりする。「子どもが欲しい」がその理由である場合は少なからずあるはずだからだ。海外の話は知らないが、少なくとも日本では、そのために「結婚」というシステムを通らないとそこにはたどり着きにくい。

「ていう人、多いですよね。一般常識で言うと」

 その話をした直後、青木はある友人との会話を披露した。

「僕のベストフレンドがいるんですけど、彼と『子どもが欲しいよな』『欲しいです』って話になって。その後、2人揃って『育てないけどな』って(笑)。超面白くないですか?」

 本来は「子どもが欲しい=子育て」を指す。

「それがイコールになっているじゃないですか。その場合、カネだけ出すから許して、みたいなことも出てくると思うんですよ、正直。でも受け入れられないんだよなぁ」

 真意の程は定かではないが、【お金配りおじさん】と自身を表している元ZOZOの前澤友作社長はそれに近い感覚でそれぞれの家庭を行き来しているとも聞く。

「実は俺の周りでもチョロチョロいるわけですよ。他には家庭を2つ持っている人とか。だから親にも言われるんです。『お前、そんな人と付き合っているから感覚がおかしくなっているんじゃないか』って。だから僕もその辺は反省していかないとダメですね」

 昔から「類は友を呼ぶ」と言われるが、さすがに青木も複数の家庭を行き来する気はないようだ。とはいえ、金銭的な条件面での折り合いがあってこそ、周囲の納得を得られるのではないか。そう思ったが、ここでも青木は持論を展開した。

「カネがあればできるのか。そうじゃない気もしますけどね。カネよりも覚悟じゃないですか? この国の場合は社会からの同調圧力のほうが強いと思いますけどね」
 
 金銭面より心であり意識の問題。「離婚」に向かっている青木の言動だと思うと、その覚悟が伝わってくる気がした。

「おれたちはファミリーだ!」

 ここまで青木の考える「家族」にまつわる話を紹介してきた。それに比べ、「ファミリー」とはゆるい感覚を持つ概念をいうこともすでに述べた。

 本書には「ファミリー」を「一定の距離を取りながらも、互いに助け合える関係」「とらえどころのない居心地のいい関係」と書き記したかと思えば、「格闘技が好きな人」「僕の試合を会場で見ている人(僕のことを好きか嫌いかなんてことは問わない)」とも書かれている。さらに「『助け合い』の思想が詰まっている」とも。要は、様々な解釈が成り立つ言葉になっていると思えばいいのか。

 そう考えると思い当たる話がある。

 あれは昨年末のこと。交際していた那須川天心の浮気報道が伝わってきたと思われる直後に、交際相手の浅倉カンナがツイートした「なんか惨めだなぁ。たくさん我慢してきたのになぁ(涙マーク)」に対して、ほとんど接点がないはずの青木が「おれたちはファミリーだ。」とリツイートしたのである。しかもその後、浅倉から「この言葉救われるなぁ。笑」と返信されたのだ。

 おそらく年末の試合に向けた直前の格闘家・浅倉の持つメンタル面を察した、青木なりの行動だったのだろう。そう考えると、単なる「やらかしてきた」だけの男ではないことがわかる。イメージと違って、意外と心配りができる男なのだ。

 いずれにせよ、「一定の距離感を保つこと」によって得られる心地よさを提唱する青木(コロナ禍だけに、という意味ではない)。これは誰しもが必ず持ち得る人間関係の煩わしさにも十分応用が効く考え方になることは間違いない。

 本書を読んで、あなたも青木の言う「ファミリー」を実践してみては?

◇青木真也「距離思考」

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