すかんち結成から42年、ROLLYの現在地 大切にしている「言葉遣い」と仕事観

ミュージシャンのROLLYが、『ALICE THE MUSICAL ~不思議の国のアリスより~』に出演する。今年11月から青森を皮切りに全国12か所をめぐる名作ミュージカルで、ROLLYは帽子屋・ハッターを演じる。1982年にバンド・すかんちを結成してから42年。俳優としても存在感を示すROLLYにその歩みとマインドを聞いた。

『ALICE THE MUSICAL ~不思議の国のアリスより~』に出演するROLLY
『ALICE THE MUSICAL ~不思議の国のアリスより~』に出演するROLLY

ミュージカル『ALICE THE MUSICAL ~不思議の国のアリスより~』に出演

 ミュージシャンのROLLYが、『ALICE THE MUSICAL ~不思議の国のアリスより~』に出演する。今年11月から青森を皮切りに全国12か所をめぐる名作ミュージカルで、ROLLYは帽子屋・ハッターを演じる。1982年にバンド・すかんちを結成してから42年。俳優としても存在感を示すROLLYにその歩みとマインドを聞いた。(取材・文=ふくだりょうこ)

 ROLLYはローリー寺西として、82年に結成したすかんちのギター&ボーカルを担当した。バンドは90年にメジャーデビュー。96年に解散した後はROLLYと改名し、奇抜なキャラクターでお茶の間の人気者になった。音楽活動も継続し、俳優として数多くのドラマ、テレビ、映画、舞台に出演している。自身が好む肩書きは「エンターテイナー」だ。

「僕はいろんな仕事をしている中で、ROLLYという小さい種をまいているつもりなんです。撒いた種が誰かの心の中で発芽して、ありがたいことに声を掛けていただける。積極的に何かオーディションを受けてみようというのは意外となくてね。なるようになっています。自分が普段、生活している上で『こういうのが好きなんです』と言っていることが返ってくるようなイメージですね。自分がやりたいものを選んでいるわけじゃなくて、お話をいただいたら精いっぱい取り組んで、その中で自分らしさに少しでも近づけている、というのかな」

 受けた仕事の中で「ROLLYだったらこうやるな」というところに近づけていく。例えば、NHKで料理番組に出演して「ピーマンの丸焼き」を作った時はこうだった。

「用意していただいたのはコンロと網とピーマン。網に乗せて焼くだけ。料理でも何でもないって笑われます。でも、丸のまま焼いたピーマンにポン酢をかけていただくとみなさん驚かれるんですよ。ヘタもつけたままで焼くと、中にある蒸気が内側から加熱されて、すごく甘くておいしいピーマンが食べられるんです。ジュワッとね。その料理番組は実にクレイジーに見えたと思います」

「他の人ではなしえない何かをできたら」。そういう姿が確かに、ROLLYっぽい。だが、自身は自然体だ。

「空気のように、呼吸するように生きているだけですから。ある意味、いつの間にか素とROLLYの垣根がなくなってきているんですよ」

 そして、大切にしているのは「言葉遣い」だ。「話し方から仕事につながっていることが理由」と言い、ほほ笑んだ。

「全てが地続きでありたいんです。そのほうが楽じゃないですか。突然、態度を変えるというのはカロリーがいるんですよね。わりと燃費を良くしているのかな」

舞台では帽子屋・ハッターを演じる
舞台では帽子屋・ハッターを演じる

帽子屋・ハッター役「ついに来たか」

 目の前でほほ笑む姿は確かに自然だ。そんなROLLYが挑むのが『ALICE THE MUSICAL』。演じるのは、イカれたふりをしている帽子屋・ハッターだ。その役どころに、周りは納得するだろうし、ROLLYも「ついに来たか」という心持ちだったという。

「お話をいただいた時から、おそらくこれは帽子屋だろうな、と思いました。ティム・バートン監督とジョニー・デップが組んで作った『シザーハンズ』、『チャーリーとチョコレート工場』とか、『アリス・イン・ワンダーランド』とか『いつかこんな作品をやってみたいな』と思っていましたし、友だちからも『やらないのか』と言われていました。自分の人生の中で一度はやらなければならぬ役柄だったので、予定通りでした」

 ROLLYにとっては、「帽子屋・ハッター」も自身の地続きにあるのかもしれない。「ROLLYがハッターなのか、ハッターがROLLYなのか」と言って笑う姿こそが、「ハッターなのでは」と思わせている。とはいえ、ROLLYはミュージシャンの印象が強い。「芝居」という仕事に対してはどのように考えているのだろうか。

「僕はこうもり男みたいなのでね。芝居の現場に行ったら、『自分はミュージシャンだから、完全にお芝居の人にはなりきれない』というジレンマがあります。ただ、本当のミュージシャンのところに行くと、どうも居場所がよろしくない。なので、フラフラ、フラフラと浮草のように生きてまいりました」

 では、ミュージシャンとして、ミュージカルへの取り組み方、ロックへの取り組み方では変わってくるのだろうか。すると、「どちらかと言うとわりとミュージカルの方が好きです。目指すのはミュージカルなんですよね」と返した。

「ソロアルバムの1曲目はいきなり10分ぐらいある曲なんですよ。すかんちの頃からミュージカルっぽい曲もやっていたんですけどね。本当にやりたいのは、ミュージカルのような音楽とロックが合体したもの。今回もいろんな音楽が出てきますが、全てが刺激になります。物語のクライマックスにはスリリングなシーンがあるんですけど、そこでは壮大な音楽が流れるんです。ゴジラのような、スターウォーズのような。『これ、いいな~』とうれしくて、喜んでやっています。あとは、ミュージカルの音楽にハードなロックギターが入ったものがやりたいですね」

 こんなふうに言うのも、「種をまいている」ことになるのかもしれない。いつか実現させてくれそうな予感がある。

「そうすると、『他の役者さんにはない独特な感じになるんじゃないかな』と思ったりもします。そういう舞台でもギターを弾かせてもらうことはあるんですよ。何しろ、本当の役者さんではないので、できる限りのことはやりますが、『ギターが弾けたら羽が生えたように楽しくできるのにな』と思ったりもします」

『アリス』という誰もが知っているような作品でありながら、「ROLLYが出演するとまた少し違うものが見られるのでは」という期待が高まってしまう。

「僕は子どもの時、姉2人と『長靴をはいたネコ』という作品を見に行ったんですけど、その日の帰りは、作品の曲をずっと歌っていました。そんな風に思わず真似をしてしまうような、印象的なものになって、さらに夢の中に出演できたら最高ですね。夢で会えるようにがんばりたいです」

 アリスの舞台でどのようにROLLYらしいハッターが見られるのか、上演を楽しみに待ちたい。

□ROLLY(ローリー) 1963年9月6日、大阪・高槻市出身。82年、ROLLYを中心としたロックバンド・すかんちを結成。90年、『恋のT.K.O』でメジャーデビューを果たす。96年に解散した後はソロでの音楽活動、プロデュースの他、バラエティー番組、CM、映画、舞台などに出演。ミュージカルでは『ロッキー・ホラー・ショー』『ピーターパン』『三文オペラ』などの出演歴ある。

次のページへ (2/2) 【動画】帽子屋・ハッターの衣装姿のROLLY
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