【プロレスこの一年 ♯3】小橋建太と佐々木健介 15年前の7月18日ドームに鳴り響いた衝撃の“200発超チョップ”
健介は全日本・ZERO1に参戦 小橋はアメリカでサモア・ジョーと対戦
この試合の後(7月26日)、健介は全日本でアジアタッグ王座を獲得(パートナーは中嶋勝彦)、さらにすごかったのはZERO1・MAXでの「火祭り」参戦にあった。ドームから至近距離の“聖地”後楽園ホールに小橋戦で見せたチョップを持ち込んだのだ。7月29日の開幕戦、健介は横井宏考との公式戦で場外戦を展開、観客の目の前で、あのチョップを炸裂させていったからたまらない。ドームの熱風を聖地に運んできた健介は、この年の火祭りで準優勝の結果を残した(優勝は大谷晋二郎)。
一方、3月5日に力皇猛に敗れGHCヘビー級王座から陥落していた小橋は、ドーム大会後、戦場を海外にも求めた。9月下旬に初のアメリカ遠征をおこない、ROHのリングに登場。10月1日にニューヨークでおこなわれたサモア・ジョーとの一戦は現地で語り草となるほどの大勝負になった。NOAHはヨーロッパ遠征も開始し、小橋はこちらでも大人気を博した。最後のひとりまでファンと握手をかわす姿勢が日本のプロレスへのリスペクト指数を高めたのは間違いない。
NOAHが正統派のプロレスでファンの心をガッチリつかんでいた05年、エンターテインメント路線で世間を巻き込む話題を提供したのが前年旗揚げのハッスルだった。ハッスルはグラビアアイドルのインリン・オブ・ジョイトイをインリン様に変身させ、お笑い芸人レーザーラモンHG&RGをレスラーに転向させるなど芸能人プロレスで「プロレスを根こそぎぶっ壊す」宣言を実践。そのひとつの頂点が、11月3日の横浜アリーナ「ハッスルマニア2005」で実現した、狂言師の和泉元彌が元WWEの鈴木健想と対戦する試合である。決定のいきさつや家族を巻き込む展開、登場の仕方に至るまで、ファイティングオペラの面目躍如と言っていいストーリーラインがマット界を飛び越え一般メディアでも報じられた。
この年、しかも小橋VS健介の試合がおこなわれる1週間前の7月11日、マット界が深い悲しみに包まれた。ハッスルでも活躍した橋本真也が脳幹出血により40歳の若さで急逝。橋本は前年11月にZERO1と決別、翌月に右肩の手術を受け、フリーの身で復帰へのトレーニングを開始したばかりだった。