1000万円持参も年齢理由に門前払い、40代オーナーが一度は諦めた夢のスポーツカーを手に入れるまで

20代前半の若い頃にハリウッド映画で知った、“かっこいいクルマ”の衝撃。映画館のスクリーンを通して初めて見て、「あっ、これは何?」――。門前払いされても探し続け、夢を手に入れた会社員がいる。英国のスポーツカー、TVR タスカン スピード6。外国車愛好家の40代男性オーナーはすっかり魅了されている。購入した金額以上の資金を費やして整備・改良を重ね、手間暇をかけている人生の愛車だ。

TVR タスカン スピード6は圧巻のオーラを放つ【写真:ENCOUNT編集部】
TVR タスカン スピード6は圧巻のオーラを放つ【写真:ENCOUNT編集部】

「バッテリーが上がってしまうと、ドアが開かなくなるんですよ」 まさかの苦労

 20代前半の若い頃にハリウッド映画で知った、“かっこいいクルマ”の衝撃。映画館のスクリーンを通して初めて見て、「あっ、これは何?」――。門前払いされても探し続け、夢を手に入れた会社員がいる。英国のスポーツカー、TVR タスカン スピード6。外国車愛好家の40代男性オーナーはすっかり魅了されている。購入した金額以上の資金を費やして整備・改良を重ね、手間暇をかけている人生の愛車だ。

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 映画『ソードフィッシュ』で、名優ジョン・トラボルタが乗る1台に、目がくぎ付けになった。23年前の公開時に鑑賞し、“ビビッときた”。20代の当時、アルファロメオ GTVを持っていたが、「乗ってみたい」とTVRを取り扱っているディーラーのもとへすぐさま行った。

 ところが、まだまだ若い年齢のため、取り合ってもらえなかった。「車1台の人には売れないよ」「雨の日は運転できないよ」と、話を聞いてもらえなかった。頑張って稼いだ約1000万円を持参して「試乗させてください」と再度出向いたが、試乗も断られた。

 一度は夢を諦めた。そこから海外の高級車やスポーツカーにのめり込み、次々と乗っていった。約30台を乗り継いだ。

「マセラティ 3200GTからマセラティ グランスポーツに乗り替えました。その次は、フェラーリやランボルギーニにも乗りたいなという気持ちがあって、思い切って買おうかなと考えたこともありました。でも、若い頃に憧れたTVRのことを思い出して、1回乗ってみようかなと思ったんです」。あの頃の情熱が、メラメラと再び燃え始めた。

 12年前、神戸の店でTVRを発見。ブルーのボディーカラーで圧倒的な存在感を放つ03年式の1台を手に入れることができた。

 3600CCの大排気量。「NAエンジンで、運転していると本当に楽しいんですよ」。至高のスポーツカーの乗り心地、爽快感にぞっこんだ。

 男性オーナーは、世界的名車のまさかのおちゃめポイントを教えてくれた。「エアコンは付いているのですが、夏は効かなくて、冬はすきま風が入ってきて、季節感をすごくよく感じます(笑)」。ドアノブがない斬新デザインで、サイドミラーの下方に取り付けられているボタンでドアを開ける仕組みになっているが、「これがね、バッテリーが上がってしまうと、ドアが開かなくなるんですよ。しかも肝心のバッテリーはタイヤの裏側に格納されているので、交換するのにもかなり苦労します。なので、トランク側に充電ケーブルを整備してもらったので、家のガレージで充電できるようにしました」。涙ぐましい改良だ。

 安全装置が付いていないため、シートベルトがまさに命綱だ。それに、駐車場に止める際は意外な苦労が。「マフラー部分が少し低く設定されているので、縁石にぶつかっちゃうんです。なんだか車庫入れが下手くそになっちゃって(笑)。なので、バックカメラを付けてもらっています」。

 実は男性オーナーは3台持ちで、メルセデス・ベンツ AMG G65と、DS7 クロスバックも保有している。「TVRに乗るのには、気合いが必要なんです。3台並べて止めているので、DS7をちょっと動かして、TVRのカバーを外して始動させて。『よし乗るぞ!』とならないと乗れないんですよ。以前はバッテリーが上がらないように、2週間に1度は動かしていたのですが、今は充電が整っているので、乗車頻度は少し減りました」。

 それに、ドライブから帰ってきてボンネットを開けて中を見てみたら煙が出てきたことも…。「走行中のトラブルはないですが、この時は火を噴きそうになったのには焦りましたね」と振り返る。

 手がかかる分、かわいさと愛着がわいてくるもの。ボンネットを開く形でオープンできるように特別オーダーで加工してもらった。「大阪の町工場の職人さんにやってもらいました。エンジンの冷却の意味もあります。この仕様を施しているのは珍しいそうです。この町工場はTVRオーナーたちの駆け込み寺のような存在で、本当にお世話になっています」。トランクの容量もしっかりあってゴルフバッグを2つ積むことができ、実用性も備えているという。

 人の縁にも恵まれた。オーナーズクラブの集まりに参加。今年6月にもミーティングが予定されているといい、「みんな集まると、TVRの故障・トラブル自慢話の言い合いで(笑)。でも本当に楽しい時間を過ごさせてもらっています」。仲間たちの存在も人生を豊かにしてくれる。

 クルマという存在は「サラリーマンなのですが、仕事を頑張ることのできるモチベーションです」。たまたま映画で見たことをきっかけに、導かれた愛車との運命。もうここまで来たら、生産が終了してしまったTVRをとことん究めたい。「当時600万円ぐらいで購入しましたが、買った金額以上のお金をかけているので、これだけかかっちゃったから、売るに売れないですよ(笑)。でも本当になんだかんだで一番長く乗っているクルマですし、これからもずっと乗っていきたいですね」と力を込めた。

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