“ポスト天心”無敗の23歳・龍聖、目指すのは真の日本一 キックにも「RIZINみたいな舞台があれば最高」

KNOCK OUT-BLACKフェザー級王者でデビュー以来無敗の龍聖(23)が27日、後楽園ホールでSHOOTBOXINGの第6代SBフェザー級王者・川上叶と対戦する。両団体の威信をかけた一戦になるが、龍聖はいつも通り「倒します」とKO宣言をぶち上げている。最近はK-1とRISEが対抗戦を行い、フェザー級(57.5キロ契約)の「日本一決定戦」を実施したが、龍聖は「しょぼいなー」とバッサリ。試合直前の龍聖を直撃した。

無敗のKNOCK OUT王者・龍聖
無敗のKNOCK OUT王者・龍聖

K-1対RISEによる「日本一決定戦」も「しょぼいなー」

 KNOCK OUT-BLACKフェザー級王者でデビュー以来無敗の龍聖(23)が27日、後楽園ホールでSHOOTBOXINGの第6代SBフェザー級王者・川上叶と対戦する。両団体の威信をかけた一戦になるが、龍聖はいつも通り「倒します」とKO宣言をぶち上げている。最近はK-1とRISEが対抗戦を行い、フェザー級(57.5キロ契約)の「日本一決定戦」を実施したが、龍聖は「しょぼいなー」とバッサリ。試合直前の龍聖を直撃した。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

 川上戦8日前の19日、場所は東京・調布にあるKNOCK OUTのジム。対人練習(スパーリング)こそ実施されていなかったものの、龍聖はサンドバッグを相手に、またはキックミットを持ったトレーナー相手に、左右のパンチやキックの連打を叩き込む。思った以上に熱のこもった激しい練習が展開されていた。

「(試合の8日前にしては)激しい練習ですけど、もっと上げられる日は上げてますね。今回、一番減量が多いし、怪我とかもしていたので強度は下げてもらいましたけど、行ける時はもっと行きますね」

 練習後、シャワーを浴びて着替えを済ませた龍聖がそう口を開いた。

「調子はいいですね。しっかりつくっているので大丈夫です。いつもと変わらないですよ」

 そこまで話すと、龍聖から「負けたら引退なのかなとか、そういう思いもある」と物騒な言葉が飛び出した。

「だから絶対に負けちゃいけないし、負けて次頑張りますとか性格的に言えないし、負けた後に自分がどうなるのかって想像できるし。ホント死にたくなるでしょうね。すぐに元気になれるタイプじゃないと思っているので、そういうのが分かっているからこそ、いつもと変わらず。集中してつくってますね」

 それだけ、常に勝たなければいけないと、自分を追い込んでいることは理解できた。が、逆にそれは勝ちたい、ではなく、負けたくない、という発想につながってはいかないのか?

「守りに入るってことですか? ああ……。そうはならないですね。そこまで器用じゃないので。攻撃は最大の防御。サッカーじゃないけど、守ろうとするとやられるから行く、だけですね」

 8日に実施されたKNOCK OUTの会見では、龍聖と川上の双方が出席したが、その際、3月20日に代々木第一体育館で開催された、K-1VS RISEの対抗戦に関する質問が記者から投げかけられた。実はその日、龍聖と川上が闘うフェザー級で「日本一決定戦」と銘打たれた一戦(軍司泰斗VS門口佳佑)が行われたためである。

 これに対し、龍聖は「まあ、しょぼいなーくらいにしか思わないですね」とバッサリ。一方、川上も「たぶん、やっている本人もそうなんですけど、あれに勝っても別に、日本一だと本人たちも思ってないと思うので……」とコメントした。

27日には後楽園ホールで龍聖VS川上叶が行われる
27日には後楽園ホールで龍聖VS川上叶が行われる

もし天心VS龍聖が実現していたら…

 改めてこの話を龍聖に振ると、「別に思ったことを言っただけですよ。凄いと思ったら凄いと言うし」と話した。

 なぜか格闘技界では、ほぼ同じルールで試合を行なっているにもかかわらず、同じ階級のベルトを持った選手が、結構な数で存在してしまう現状がある。

「ホントは全部が混ざれる。総合格闘技だったらRIZINみたいな舞台があれば最高ですけどね。それが一番いいじゃないですか。(誰が一番強いのか決めるのが)簡単じゃないですか。昔のK-1MAXは新日本キックの武田幸三がいてとか、いろいろいたじゃないですか。いろんなところを集めて。プロレスラーも呼んでとか、いろいろあったじゃないですか。だから、そういう舞台があれば面白いですけどね」

 そう言って龍聖は立技格闘技団体の「大同団結」を望む声を挙げた。たしかに魔裟斗をはじめ、各団体のトップが集結したのが、当時のK-1MAXだった。

 そのための参考になるのか。プロボクシングの統一世界王者・井上尚弥はWBA、WBC、IBF、WBOというボクシング団体が認めた世界スーパーバンタム級王者だが、これにならって、K-1、RISE、KNOCK OUT、SHOOT BOXINGといった、日本における立技の4団体が認めた統一王者が誕生すれば、「誰が一番強いのか」といった疑問にはかなり近づけるに違いない。

 龍聖にその話を向けると、「それをやったのが『THE MATCH』(2021年6月19日、東京ドーム)でしょう」とひと言。

 ならばと、「THE MATCH」をどう思ったかと質問すると、「自分も出たかったですよ。そこはいろいろ大人の事情が絡んでいたらしいですけどね」と苦笑した。

「THE MATCH」をご存知ない方に説明すると、同大会はメインで那須川天心VS武尊の8年越しの夢の対決が実施され、K-1、RISE、SBの主要ファイターが集結。東京ドームに超満員(主催者発表で5万6399人)の観客を動員したほか、PPVの数字を合わせると、50億円興行とも呼ばれた、伝説の大会になった。

 もしそこに龍聖が出ていたら、また格闘技界の流れが変わった可能性もある。今となっては天心がボクシング界に転向したため、実現は不可能になったが、もし天心VS龍聖が実現したらどうなったいただろうか?

 この問いに対し、龍聖は「普通にやられていたんじゃないですか?」とコメントし、「僕が普通にやられていたと思いますよ。子どもの時からの経験もそうだし、何より才能がすごいですよね。勝てるわけがないですよ。闘うために生まれてきたセンスも」と天心を絶賛した。

 天心戦こそ実現しなかったが、龍聖は2019年4月にあったデビュー戦で勝利を挙げて以来、現在、16戦16勝(11KO)の戦績を持つ。つまりは“ポスト天心”的な存在に当たるのが龍聖になる。

 そんな龍聖に、今までで最も自分らしさの出た試合はどれになるのかを聞いてみた。

「僕の瞬発力や爆発力が出たのは、『INOKI BOM-BA-YE×巌流島』(2022年12月28日、両国国技館/ダウサコン・BANG・BANG・GYM戦)ですよね。それプラス、人間味っていうか気持ちが出せたのは、僕が1回ダウンした時の中国人(チュームーシーフー/2023年6月11日、後楽園ホール)との試合、ラジャのチャンピオン(ペットセーンセーブ・ソーヂョー.トーンプラーヂン/3月5日、代々木第二体育館)との試合。その三つくらいじゃないですか?」

熱のこもった練習風景
熱のこもった練習風景

「ミックスルールとか。お祭りみたいなことはやりたい」

 なかでも2番目に挙げたチュームーシーフー戦では、龍聖がまさかのダウンを喫したことで、デビュー以来、最も苦戦した相手だったが、試合後に「ダウンした時からの記憶がまったくない」と話していた。

「ホント何も覚えていないんですよ。だから、自分がやられるかもとかも分かってないけど、本能でやってましたよね」

 記憶がなくても普通に闘っていたし、平然と手足が出るのだから驚くべき話でもあると思ったが、龍聖は「ずっとこうやって練習していると出るみたいですね」と笑った。

 また、「INOKI BOM-BA-YE×巌流島」で闘ったダウサコンは、その半年前に皇治(現在、RIZINに参戦中)が苦戦し、延長戦までもつれ込んだ相手。結局、試合後に皇治が判定に不服を申し立てて勝敗がくつがえったが、龍聖は「皇治、弱いっす。あれに負けてますからね。僕は30秒で倒しましたからね」とこれもバッサリと切り捨てた。

 ちなみにダウサコン戦はいつもと違い、ロープで囲まれていないなかでのキックボクシンルール戦だったが、龍聖は「それは嫌だなあっていうのはありましたよ。気にしちゃうなあって。でもセコンドでパンクラスのチャンピオンの伊藤盛一郎に入ってもらっていて。彼には寝技を教えてもらっていたんですけど。『気にしなくていいよ』って言ってもらって、すごい気が楽になって、気にせずやれましたね」と話した。

 さらに「お祭りですし、いつもより気がすごい楽でしたよね。あの試合は、キックボクシングを普段やるより楽でしたよ。ケンカじゃないですか。異種格闘技戦て。作戦とか大してないし。ケンカじゃないですか。お祭り。ああ言うのはやっていて楽しかったですね」と続ける。

 龍聖の気持ちはともかく、できれば年に1度でいいから、ああいう毛色の違った闘いを観てみたい。そう告げると、龍聖は「僕もやりたいですよね。ミックスルールとか。お祭りみたいなことはやりたいですね」とまんざらではない様子だった。

 ともあれ、まずは当面の敵である川上戦での勝利することが先になるが、会見でのKO宣言を受け、それは試合のどのタイミングになるのかを問うと、「2Rか3Rかなと思いますね」と龍聖。

 パンチかキック、もしくはヒザを含め、フィニッシュは決めているのかと聞くと、「全然ないです。その時に当たる技。そうやって決めると逆に当たらないですね」と答えた。

 最後に「最高の試合をします。必ず倒します」と話した龍聖。その先に「大同団結」はあるのか。もしくは異種格闘技戦やミックスルール戦を実現するためにも、まずは首尾よく勝って、無敗神話をどこまで伸ばせるのかが注目される。

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