今年2月、プロレス界に大阪から大きな衝撃が走った。その理由は前回に記した通りだが、ここから岡田太郎社長の思い描くスターダムが、少しずつ見え始めることになる。学生時代、レッスルマニアから大きな影響を受けたという若き社長は、今のスターダムの選手たちにどのような思いを持っているのか。（取材・文＝橋場了吾）

　2.5大阪大会。ワールド・オブ・スターダム王者の舞華の呼びかけで、ユニットを超えて選手たちがリング上で集合写真を撮影した。その中には、この数分後に解任されるロッシー小川もいた。

「（写真撮影の時点で）選手たちは何も知らないです。あの後、小川さんには別室に来てもらい、文書で解任を通知し帰宅いただきました。それから、選手たちには説明をしました。その中で5人の選手が退団することになりましたが、残った選手も含めて相当つらい判断をした選手もいると思いますし、ストレス・負担をかけた2か月だったと思います。ただよくわからない状態が続くのではなく、線を引いてあげるのが僕の仕事だと思っていました。強硬手段でしたけど、選手たちが安心してプロレスができる環境を整えたかった、何かあったら会社に頼っていいような環境にしたかったという気持ちが一番でしたね。最終的には（辞める・辞めないは）自己判断ですが、会社のせいにできる後ろ盾は作ったつもりでいます」

　結果、MIRAI、桜井まい（当時）、弓月（当時）が契約満了となる3月いっぱいで、同じく3月いっぱいで契約満了となったジュリアと林下詩美がフリーとして4.12後楽園ホール大会に出場した。

「（残った選手たちは）これからもスターダムで頑張っていきますと言ってくれています。コロナ渦の苦しい時期を過ごした場所で、もっともっと上を目指していきたいと」

　退団者が出たものの、スターダムには明るい話題も尽きない。その中でも大きなトピックといえば、AEWを含めた海外団体との提携だろう。

「就任して初めて話が来たのが、レッスルマニアウィークでのアメリカでの自主興行（現地時間4.4、フィラデルフィア2300アリーナ）です。新日本プロレスのアメリカ支社（NJoA）の方から『今まではやらない方向と聞いていたんだけど、経営者が変わったから方針が変わるかなと思って』と連絡があって『やります』と。それでせっかくアメリカに行くなら、スターダムの素晴らしさを広げるためにも、いろいろな団体に参戦できないかと思って」

　結果、朱里がGCWに、AZMがAEWに、その他にもROH、スパーク女子に多くのレスラーが参戦した。特にAZMはかつてのワールド・オブ・スターダム王者であり、現AEW世界女子王者のトニー・ストームと対戦し大きな話題となった。

「これまで選手たちの夢だったり、プロレスラーとしてのスケール感だったり、そういうものがあまり見えない状況だったと思います。なので、まずは選手たちにこんなことができるよという成果を見せたくて、3月にAEWに視察に行きました。世界に進出する下地を作って、選手たちに夢をもってもらいたかったという気持ちは大きいですね。今スターダムでやっている女子プロレスは世界一の女子プロレスだということを伝えていきたい……これは過去の小川さんがやってきたことも含めて、世の中に出していきたいということで、世界展開はちゃんと考えていきたいと思っています」

　今後、岡田はスターダムをどのような団体にしていきたいと思っているのか。

「一言では難しいんですが、しっかりとプロレスを世界・世間に広めていける団体にしたいなと思っています。プロレスファンの中では、スターダムはそれなりの知名度があるという認識ですが、やっぱりその層を厚くしていかないといけないですし、エンタテインメントスポーツとしてどんどん大きくして、10年後、20年後といった未来でもスタンダードであり続けるための、信頼される団体にしていきたいなと思っています」