TBS退社から5年…俳優・宇垣美里が不倫される妻役で新境地「こんな人たちが実在したら怖すぎる」

フリーアナウンサーで、俳優、モデル、エッセイストとしても活動する宇垣美里(32)が、2月29日から放送中のMBSドラマ『シンデレラ・コンプレックス』(木曜深夜0時59分)に出演している。予測不能なラブサイコ・スリラーで、宇垣は恐ろしい面々に翻ろうされる教師役。これまで経験のない役を挑んでいる“俳優・宇垣美里”の思いを聞いた。

『シンデレラ・コンプレックス』ではこれまで経験のない役に挑む【写真:北野翔也】
『シンデレラ・コンプレックス』ではこれまで経験のない役に挑む【写真:北野翔也】

MBSドラマ『シンデレラ・コンプレックス』で教師役

 フリーアナウンサーで、俳優、モデル、エッセイストとしても活動する宇垣美里(32)が、2月29日から放送中のMBSドラマ『シンデレラ・コンプレックス』(木曜深夜0時59分)に出演している。予測不能なラブサイコ・スリラーで、宇垣は恐ろしい面々に翻ろうされる教師役。これまで経験のない役を挑んでいる“俳優・宇垣美里”の思いを聞いた。(取材・文=大宮高史)

『シンデレラ・コンプレックス』は、縦型マンガ・Webtoonで4億ビューを突破した同名ウェブコミックが原作の作品。宇垣が扮する教師の相沢舞は、同じ学園の人気教師の相沢陽介(飯島寛騎)が夫で、はた目には順風満帆な日々を送っている。ところが、陽介は、教え子で学園のアイドル的存在・前園由良(田中美久)の誘惑に負けて不倫をしてしまう。陽介と由良の関係はエスカレートし、舞の幸福も崩壊していく。文字通り、ドロドロの愛憎劇で、宇垣は「映画の『エイリアンVSプレデター』のようです」と表現した。

「『こんな人たちが実在したら怖すぎる』って思いましたし、非人間的な妖怪のような怖さを感じました」

 由良は陽介に異常な独占欲を見せ、夫婦関係を引き裂き、陽介は由良にのめり込んで本性をあらわにしていく。舞の周囲には暴走する“地雷系JK”とみにくい振る舞いをする男たちが目立っており、宇垣にとっては「経験したことのない作品と役柄」だという。

「演技のお仕事をいただけるようになって、それまでの私のイメージからか、芯の強い女性の役を多く演じてきました。彼女たちは人生の足取りがとても力強くて、例え何かの選択が失敗しても、共感できることがとても多かったんです。ところが、舞は私にない部分ばかりを持っているし、受け身で友だちにもいないタイプの女性でした」

 平凡な幸福を望んでいたはずの舞には、続々と困難が降りかかる。

「舞には肉体的にも精神的にも災難ばかりで、私もしんどかったです。飯島さんはすごく優しいジェントルマンなんですが、陽介の嫌なところを本当に不快に演じてくれて、飯島さんまで本当に嫌いになってしまいそうでした(笑)。言葉と感情の応酬だけでなく、肉体的にも陽介と由良ちゃんからかなりひどいことをされていきます」

 2019年にTBSを退社し、フリーアナウンサーに転身。21年のカンテレ・フジテレビ系『彼女はキレイだった』で本格的に俳優業を開始した。キャリアウーマンやドラァグ・クイーンなどアクの強い役も演じてきた。だが、今回は夫に不倫をされる設定も踏まえ、舞を「かわいそうな人」とも思ったという。

「私が舞だったら、もっと早くに陽介に見切りをつけてやり返します(笑)し、(舞は)新婚時代の幸福が忘れられなくて、諦めきれずにだらだらと流れに身を任せてしまったのかなと思っています。でも、舞が『このままではダメだ』と立ち上がる展開が。励みになる人もいたらいいなと思って演じました。人生には戦わないといけない時が必ず来る。そこで逃げずに怖いと感じる場所や嫌いなものと正面から向き合うことで人生への自信がつく。そう信じて、勇気を持って生きることが作品のメッセージかもしれません」

 同作は、「整形」「地雷系」といった話題が作中にも登場し、現代ティーンの心の闇にも焦点を当てている。HKT48を卒業したばかりの田中美久が演じる小悪魔的高校生の由良については、宇垣は「大人からの愛情の不足」を感じ取っていた。

身近な人間が見せる狂気が見どころだと語った【写真:北野翔也】
身近な人間が見せる狂気が見どころだと語った【写真:北野翔也】

演技への課題は「年下の女の子や子どもにきつく当たれない」

「ドラマでは由良の両親が出てきません。大人との関係に問題があって、生まれついての自分を肯定できないことが彼女の暴走の根本的な原因かなと思いました。本当は大人たち、陽介も舞も由良ちゃんに『あなたはあなたのままで素晴らしいんだよ』と言ってあげないといけなかった。SNSの普及によって『他の可能性』が見え過ぎてしまう時代になったことも、なかなか自信を持ちにくい一因かもしれません」

 役について深く考える宇垣だが、俳優業はTBSを退社後、所属事務所からの提案で始めたという。

「幼い頃から物語やエンタメが好きで、そのモノづくりの中にいられることほど幸せな瞬間もなかなかありません。話したり、文章を通じてだけでなく、演技は私の新しいツールとして他ではできない表現ができる。そのプロセス自体を楽しんでいます。今まで現代劇ばかりを演じていたので、時代劇もいつかやってみたいです」

 演技への課題を聞くと、「年下の女の子や子どもにきつく当たれないことです」と言った。

「男性や年上に向けて感情をあらわにすることに抵抗はないのですが、女性や年下の存在など、自分が守るべきだと思っている人たちにはそれがすごく難しい。庇護欲が強いみたいで。だから今回もですが、大人なのに学生や部下に対してつらくあたるような役は、精神的にかなりハードです」

 ショッキングなスキャンダルと事件が連続する作中の展開には、「想像を超えていて、『もはや、笑うしかない』ようなサイコパスホラーぶりが、ホラーでありコメディーのようにも感じています」と評して言った。

「辛い目に遭いすぎる人を見ると、恐怖を飛び越えて笑えてくるような感覚があって。本性を見せた人間の、荒唐無稽な恐ろしさが見どころです。でも、こんなにかわいそうな私を見られることも滅多にないと思いますので、私が翻弄される様と、コメディーと紙一重なホラーを楽しんでください」

 身近な人間の狂気や冷酷さに翻ろうされる女性。文字通り、宇垣の新境地になっている。

□宇垣美里(うがき・みさと) 1991年4月16日、兵庫県生まれ。同志社大卒。2014年4月にTBSに入社し、『Nスタ』『ひるおび!』『サンデー・ジャポン』などを担当。19年3月にTBSを退職し、俳優、モデル、エッセイスト、ナレーターなど多方面で活動。ドラマ出演作は、MBS・TBS系『明日、私は誰かのカノジョ』、テレビ東京系『チェイサーゲーム』、フジテレビ系『自由な女神-バックステージ・イン・ニューヨーク-』など。著書は『風をたべる』『今日もマンガを読んでいる』など。趣味は映画鑑賞や読書をはじめ、エンタメ全般。164センチ。

スタイリスト:滝沢真奈
ヘアメイク:山下智子

(番組情報)
MBSドラマ特区『シンデレラ・コンプレックス』MBS、テレビ神奈川、チバテレビ、テレビ埼玉、とちぎテレビ、群馬テレビで放送。TVer、動画イズム、FODにて配信。

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