会場に渦巻く不穏な空気を一変させたジェイク・リー 冴えわたる“G.L.G節”の秘訣とは

新春早々、一歩間違えば暴動になりかねなかった緊急事態を「マイク」で救ったジェイク・リー。その論客ぶりは日に日に磨きがかかりノアマットで人気を集めている。

プロレスを語りだすと止まらないジェイク・リー【写真:柴田惣一】
プロレスを語りだすと止まらないジェイク・リー【写真:柴田惣一】

柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.181】

 新春早々、一歩間違えば暴動になりかねなかった緊急事態を「マイク」で救ったジェイク・リー。その論客ぶりは日に日に磨きがかかりノアマットで人気を集めている。

 ジェイクの大活躍は1・2東京・有明アリーナ決戦。GHC戦をセミファイナルに追いやり、メインイベントは飯伏幸太VS丸藤正道だった。飯伏のコンディションには問題があり、期待を裏切る展開になってしまった。

 不満の声が渦巻き出した時、ジェイクは「こんなウルトラヘビー級みたいなリズムで試合をやりやがって。そんなファイトをしていいのは俺みたいなデカいヤツなんだよ。今年のノアの舵を取るのはやはりこの俺だ」とアピール。やり場のないファンの怒りを代弁し、会場の空気を一変させた。

 その後も冴えわたるジェイクの舌鋒。1・2有明決戦でマイクをバトンタッチした清宮海斗にマイク合戦を仕掛けるなど、ジェイク率いるG.L.G(Good Looking Guys)は、ノアマットで存在感を増している。

 ノアのマイクといえば拳王だったが、拳王の“俺様節”とは一味違ったジェイクの“G.L.G節”は、今や日本マット界の名物となりつつある。謎かけをし、相手の解答に即座に的確な答えを返す。冷静だが熱い。

 かつて猪木さんが北海道・札幌のリングで、新日本プロレスの精鋭たちと問答を展開したシーンが思い出される。

 つい最近、酒席ながら「トレーニングプランで今日は飲まない」とノンアルコールのジェイクと、プロレスについて語り合った。

「こう考えたら、どうですか」「違う角度から見たら、どうでしょう」……様々な角度から多方面に渡って切り込んでくる。客観的であり冷静だが、熱い。こちらはビールとワインを飲み過ぎていたこともあり聞き役に徹した。

 同時に昨今のG.L.G節の充実ぶりの秘密がわかった気がした。ジェイクは24時間、プロレスを考えている。

拳王の俺様マイクも切れ味鋭い【写真:柴田惣一】
拳王の俺様マイクも切れ味鋭い【写真:柴田惣一】

かつてと様変わりした試合後のマイク

 プロレス少年ではなかったが、プロレスラーになり、プロレスの魅力にハマってしまった。「いや、汗を流すのと同じように、ファイトのこと、トレーニングのことを、あれやこれやと考えるのは楽しい」と目を輝かせる。

 最近のプロレスラーはマイクも重要な要素を占めている。大会をマイクで締めることもメインイベンターの大切な仕事だ。ファンもマイクアピールを聞くまでは席を立とうとしない。棚橋弘至の「愛してま~す」、宮原健斗の「最高」、拳王の「俺についてこい」など決め台詞を待っているのだ。

 かつてはテレビ局のアナウンサーが試合後のリングに上がり、試合直後の選手に問いかけるぐらいで、TVマッチに限られていた「マイク」も様変わりした。

 そのきっかけの一つがラッシャー木村さんだろう。「こんばんは事件」を逆手にとり、馬場さんや渕正信にユーモアを交えて問いかけた。独身を貫く渕に「いつ、結婚するんだ」「彼女、紹介してやろうか」……ご当地ネタも巧みに織り交ぜた名セリフのオンパレードだった。

 大仁田厚の同じ言葉を繰り返すマイクも根強い人気を誇っている。内藤哲也の「~デ・ハ・ポン」の大合唱も、今年の1・4東京ドーム決戦でついに実現した。

 令和のプロレスでは欠かせないマイク。名勝負の総仕上げとして、プラスアルファの魅力で締める重要なもの。そのひと言で試合が格上げされることもある。

 貴方の好きなマイクは何だろうか?

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