TOBE滝沢社長は「やり手の経営者」 クリエーターの手腕も一流「両面を持っている人はなかなかいない」

昨年3月に立ち上がった芸能事務所『TOBE』(トゥービー)の新たな挑戦が反響を呼んでいる。ABEMAの番組『TOBEの夏休み。~ハワイ独占密着!新たな決意~』が昨年末から放送されており、今月10日に第5回の“最終回”を迎える。TOBE社長の滝沢秀明氏は番組制作において黒子に徹して、なんとカメラマンの役割を買って出たという。三宅健ら所属アーティスト12人が絆を深めていく人間関係の機微や変化を捉えており、滝沢氏はクリエーターとしての手腕を発揮。当初コンテンツ放送の予定がないままハワイ旅を撮り始めた狙いとは。番組プロデューサーを務めた、元テレビ東京で映像ディレクターの高橋弘樹氏に制作の舞台裏を聞いた。

ABEMAの番組『TOBEの夏休み。~ハワイ独占密着!新たな決意~』が話題だ【写真:(C)AbemaTV, Inc.】
ABEMAの番組『TOBEの夏休み。~ハワイ独占密着!新たな決意~』が話題だ【写真:(C)AbemaTV, Inc.】

所属アーティスト12人のハワイ旅ドキュメンタリー 元テレビ東京・高橋弘樹氏に制作舞台裏を聞いた

 昨年3月に立ち上がった芸能事務所『TOBE』(トゥービー)の新たな挑戦が反響を呼んでいる。ABEMAの番組『TOBEの夏休み。~ハワイ独占密着!新たな決意~』が昨年末から放送されており、今月10日に第5回の“最終回”を迎える。TOBE社長の滝沢秀明氏は番組制作において黒子に徹して、なんとカメラマンの役割を買って出たという。三宅健ら所属アーティスト12人が絆を深めていく人間関係の機微や変化を捉えており、滝沢氏はクリエーターとしての手腕を発揮。当初コンテンツ放送の予定がないままハワイ旅を撮り始めた狙いとは。番組プロデューサーを務めた、元テレビ東京で映像ディレクターの高橋弘樹氏に制作の舞台裏を聞いた。(取材・文=吉原知也)

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 同番組は、三宅をはじめ、北山宏光、Number_i(3人)、IMP.(7人)の所属アーティスト12人がハワイ旅行した際のドキュメンタリーで、オアフ島で過ごした5日間の様子を収めている。昨年秋に撮影を敢行。プールで遊んだりサーフィンを満喫したりするなど、プライベート感満載の映像がファンの間で評判を呼んでいるが、そこにはある仕掛けが。実は、プロデューサーの高橋氏はロケの企画立案と撮影には携わっていないというのだ。

「この映像はTOBEのスタッフが撮影しているんです。どこで番組にするといったことなど何も決めずに撮影を始めたそうです。メンバーとスタッフだけの空間で撮っているので、プライベートそのままを撮れているのだと思います」と高橋氏は語る。

 5日間で合計120時間の映像素材を、高橋氏が編集しドキュメンタリーに仕上げた。業界歴20年目の高橋氏はテレ東の人気番組『家、ついて行ってイイですか?』を生み出したことで知られ、昨春の独立後はYouTubeのビジネス動画メディア『ReHacQ(リハック)』を展開している。

 高橋氏はテレ東時代にAKB48の番組制作を行ったことはあるものの、アイドルを取り扱う仕事とはほぼ無縁のテレビマン生活を送ってきた。今回、縁あってプロデューサーとしてTOBEの映像制作に関わったことで、新発見の連続だったという。

「新たな芸能チームの誕生の瞬間、その出発点を見ることができる。芸能史に残るターニングポイントになるのではないか。まずそこに面白さを感じました。僕としては、アイドルというより、スタートアップ企業のドキュメンタリーを作っている。そんな気持ちになりました」。まさに心を躍らせた。

 滝沢氏を中心に構成されたカメラマンが収めた映像をつぶさに見ていると、ある気づきがあったという。

「それは人間関係の変化です。例えば、三宅さんと北山さんは以前に同じ事務所に所属していましたが、そこまで面識は深くなかったそうなんです。正直、ハワイで最初はぎくしゃくしていました(笑)。ペアになって彼氏彼女ごっこをやるのですが、北山さんがボケても三宅さんが乗ってこない。それが最終日には、2人でボケ合っていい感じになったんです。それにIMP.の佐藤新さんはNumber_iの平野紫耀さんと仲良くなりたくて、それでも初日はうまく話せなかったけど、最後はBBQのときに自分から話しかけて親しくなって。そんな変化がありありと感じ取れて、面白いなぁと」

 人間模様を徹底的に観察して、視聴者に訴えかける場面を抽出し、名番組を作ってきた高橋氏。そんな名うての映像職人も今回ばかりは驚きの連続だった。

 裏方に回った滝沢氏が撮影した映像の採用率は高かったといい、高橋氏は「IMP.の基俊介さんのシーンが印象的でした。基さんが何か話そうとすると、絶妙なタイミングでカメラを外すんです。そうやってうまくいじって、いい画を撮るんです」と実感を込める。

ABEMA『TOBEの夏休み。~ハワイ独占密着!新たな決意~』【写真:(C)AbemaTV, Inc.】
ABEMA『TOBEの夏休み。~ハワイ独占密着!新たな決意~』【写真:(C)AbemaTV, Inc.】

所属アーティストの“持っている”スター性 「ウミガメが北山さんの足にキスしたんです」

 さらに、腕利きの演出家としての滝沢氏だけでなく、ビジネスマンとしての才覚も目の当たりにしたという。「ひと言でいうと、やり手の経営者だなと。これだけのいい形の人間関係の変化を記録しながらも、ビジネスの側面で新しい組織作りをしっかりやっていたんです」。所属アーティストたちのファンが喜ぶ“素の姿”を捉えつつ、うまく番組として作り上げ、さらにはローンチしたばかりの新組織の結束力を高めていく。そこには滝沢氏のしたたかな戦略があったのかもしれない。

 所属アーティストの「持っている」スター性にも、高橋氏は目を丸くした。「皆さんを好きになっちゃいました(笑)。平野さんは大事なところで男気じゃんけんに勝ち続けて、イケメンなのに天然発言が面白くて。IMP.の椿泰我さんは昭和のコントみたいな古き良き笑いを作り出す逸材で、編集スタッフも大ウケでした。それに、北山さんのスキューバダイビングで奇跡が起きて。ウミガメがいたらいいねなんて言っていて実際に潜ったらウミガメがいて、沈没船のようなものが沈んでいる場所まで来たら、ウミガメが北山さんの足、フィンの部分にキスしたんです。これには鳥肌が立ちました」。

 TOBEの今後について、高橋氏はちょっと違った視点で期待していることがある。それは、新たなスタイルの芸能集団の行く末。今後の滝沢氏の手腕の“真価”にもつながることだ。

 高橋氏は「僕は、クリエーターと経営者は本来は真逆の立場であると考えています。番組制作を例にとると、演出家の作り手側はどこまでも時間をかけてお金を使いたい。一方の経営者はいかに効率的にできるかを追求します。滝沢さんは経営者でありながらクリエーターであり、その両面を持っている人はなかなかいないですよね。TOBEのMVはほとんど初めて見たのですが、めちゃくちゃかっこよく作られていて、クリエーティブな可能性を感じます。これから、TOBEが成功するかどうか、滝沢さんはクリエーターと経営者の両面をさらにどうやって両立させていくのか。すごく興味深いです」と話している。

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