市民権を得た「推し活」の現状 “オタク文化”が徐々に変化…8割が月1万円以下で活動
“推し”という言葉や概念が、Z世代を中心に浸透し、日常生活の一部と化している。決済サービスを提供するPaidyが実施した調査によると、全体の約4割、Z世代の約半数が推し活をしていることが分かった。
推し活の調査から判明したよりどころ
“推し”という言葉や概念が、Z世代を中心に浸透し、日常生活の一部と化している。決済サービスを提供するPaidyが実施した調査によると、全体の約4割、Z世代の約半数が推し活をしていることが分かった。
もともと「推し」とは、複数のメンバーが存在するアイドルグループにおいて、自分の一押しのメンバーを「推しメン」と称することから始まった言葉。一般的には、2000年代後半から10年代中盤にかけてAKB48グループの台頭とともに身近な存在になったと言われている。
当初は、アイドル界隈で使われるスラング的な意味合いが強かったが、今では“推す”対象も広がりを見せ、インフルエンサーやVTuberのほか、建築物に作家といったバラエティーに富んだものにまで多様化が進んでいる。
Paidyが調査した「推し活」に関する調査。「人気の推しジャンルのランキング」では、「アニメ」(46.8%)「J-POPアイドル」(36.5%)に次いで、昨年比で3倍超の得票数で「スポーツ」(35.5%)がランクインした。
今年はWBCやバスケットボールW杯などの世界的スポーツ大会も多く開催されたが、調査対象の半数以上の人が、推しの活躍を見に現地へ足を運んでいることが明らかとなった。現地で試合を観戦する理由としては「生で見る試合は二度と体験できないから」(46.7%)「推しの選手を見たいから」(44.5%)が多い結果に。その背景には、コロナの規制緩和とスポーツ大会の爆発的な応援ブームがあると思われる。
では、推し活する人はひと月にいったいいくら使用するのか。調査によると、全てのジャンルにおいて8割以上の人が1万円以下で推し活しているという。しかも、その内の約8割以上は、お金を使うためのマイルールを設けていたり、ひと月の予算限度額を決めたりと工夫を凝らしているとのこと。
今年は、電気料金の値上げや、改正消費税法の施行によるインボイス制度導入など、生活を圧迫する場面も多かった。各所から悲鳴が聞こえてくる話題であり、推し活する人たちも少なからずその影響は受けているだろう。しかし、そういった財政状況の中でも人々はなぜ推すのだろうか。
その答えは「推し活を通して得られたもの」というアンケートの答えで確認できた。結果は、1位「癒し」(48.3%)、2位「満足感」(47.8%)、3位「ストレス発散」(40.8%)と、メンタルヘルス部分で充足感を得ている人が多数を占めていたからだった。
世の中には十分すぎるくらいに物やサービスがあふれ、強い意思を持たなくても、受動的に楽しい経験ができてしまう便利な時代。しかしながら、「私は何のために生きているんだろう」「誰が私を必要としているんだろう」という空虚感が胸をつまらせることも多い。
人がこれほどまでに何かを“推し”たがる理由は、自分が生きる価値や理由を認識させてくれる存在を必要としているからではないか。能動的に意思をもって推すことで、自身の存在意義を確認しているとも言える。
以上の結果から、現代人は自分が無理なく割ける程度の予算で「癒やし」を享受しているということだろう。
推し活では「生きてて良かった」と感じる出来事がふとしたタイミングで得てして起こりうる。社会人でいう飲み会2回ほどの金額で、人生にときめきやワクワクのスパイスを加えることができ、結果充実感や癒やしを得られるのだから、推し活に投資する人が増えるのには納得だ。