【DDT】赤井沙希、10年間のレスラー人生に終止符 最後まで体現した「強く、気高く、美しく」

DDTが12日、秋のビッグマッチ『Ultimate Party 2023』を開催した。今年2回目となる両国国技館大会には豪華メンバーが集い、白熱した戦いを見せた。第8試合では、2013年8月に同所でデビューした赤井沙希が引退試合を行い、自身が所属するユニットで、KO-D6人タッグ王座のパートナーでもあるEruptionの坂口征夫、岡谷英樹とともに最後のリングに上がり、丸藤正道(プロレスリング・ノア)、樋口和貞、山下実優(東京女子プロレス)と対戦。10年間の凝縮されたプロレスキャリアに終止符を打った。

引退セレモニーでファンに感謝を伝える【写真:DDTプロレスリング提供】
引退セレモニーでファンに感謝を伝える【写真:DDTプロレスリング提供】

赤井沙希のDDT10年愛、両国国技館がラストゲーム

 DDTが12日、秋のビッグマッチ『Ultimate Party 2023』を開催した。今年2回目となる両国国技館大会には豪華メンバーが集い、白熱した戦いを見せた。第8試合では、2013年8月に同所でデビューした赤井沙希が引退試合を行い、自身が所属するユニットで、KO-D6人タッグ王座のパートナーでもあるEruptionの坂口征夫、岡谷英樹とともに最後のリングに上がり、丸藤正道(プロレスリング・ノア)、樋口和貞、山下実優(東京女子プロレス)と対戦。10年間の凝縮されたプロレスキャリアに終止符を打った。

 13年8月18日、DDTの両国国技館大会『両国ピーターパン2013~プロレスの傾向と対策~』で正式なプロレスデビューを果たした赤井(カードは赤井&高梨将弘&チェリーvs福田洋&世IV虎&志田光)。すでにタレント、モデルとして活動していた赤井は、スリムな体型をそのままに、体重を増やさず筋肉を増やすというこれまでにないプロレスラー像を作り上げ、ジェンダーレスな戦いに身を投じてきた。DDTに所属している上で避けられない、路上プロレスやフェロモンズ(今年10月に2年の活動を経て解散したセクシー極まりないユニット)との対戦にも果敢に挑み、いくつもの「ここまでやるのか」を実現してきた10年間だった。

 そして今年5月24日に引退表明をしてからの半年間には、DDTはもちろん東京女子やガンバレ☆プロレス、さらには全日本プロレスなどにも参戦。全日本では、史上初めて女子選手としてベルト(全日本プロレスTV認定6人タッグ王座)を巻いた。

 DDTにおいては、引退表明後に坂口、岡谷とともにKO-D6人タッグ王座を戴冠し、王者のまま引退することに。その他にも、クリス・ブルックスが持つKO-D無差別級王座への”最初で最後の挑戦”、赤井への感謝の気持ちを選手が述べるサプライズがあったDDT EXTREME王者・平田一喜とのシングル、東京女子における1vs23の変則マッチなど多くの話題を提供してきた。

 その赤井の引退試合には「強く、気高く、美しく」というサブタイトルがついた。これは赤井のプロレス人生を示す言葉で、常々赤井が口にしているもの。11月21日に発売予定の自伝本のタイトルにもなっている。そのサブタイトルの通り、赤井はリング上で強く、気高く、美しく散ってみせた。

KO-D6人タッグ王者のまま引退試合を迎えた赤井沙希【写真:DDTプロレスリング提供】
KO-D6人タッグ王者のまま引退試合を迎えた赤井沙希【写真:DDTプロレスリング提供】

最後は山下のスカルキックに沈むも…プロレスラーとして駆け抜ける

 まずは丸藤組が3人そろって入場。赤井組はまず露払いのように坂口、岡谷が2人で入場し、最後に赤井が自身の入場曲『What You Waiting For?』の特別イントロありバージョンで入場。午後4時18分、運命のゴングは鳴った。

 先発は赤井と山下だったが、ここでは軽く触れた程度で岡谷と樋口にチェンジ。そこからはそれぞれの選手が得意の打撃で相手を追い込んでいく。赤井と丸藤のファーストコンタクトでも、赤井が鋭いエルボーを打ち込むも、丸藤が強烈な逆水平チョップでお返し。引退試合のカードが発表されたときの「恐怖を植え付けて卒業させる」という丸藤の言葉通りに、容赦ないチョップと顔面ステップキックを赤井に浴びせていく。続く山下も背中へ強烈なサッカーボールキック一閃。その後もミドルキック、スクリューキックで赤井の体力を消耗させていく。

 そして元々はEruptionの盟友だった樋口とのマッチアップでは、オクラホマ・スタンピートで叩きつけられるも、ヘッドシザーズ・ホイップでローンバトルを脱出し、坂口にタッチ。坂口と丸藤はキックとチョップを打ち合い、お互いの胸板が真っ赤に変色していく。坂口の後を受けた岡谷が、キャリアの差を感じさせない動きで丸藤に得意技を連発し、丸藤をダウンさせるシーンを作り出す。

 そして再び赤井の出番が回ってくると、山下相手にサッカーボールキック、ダイビングボディプレスを繰り出し、試合を優位に進め、顔面へのミドルキックから必殺技ケツァル・コアトルを発射。ここは樋口がカットに入り、山下は窮地を脱し丸藤と樋口のフォローを得て蘇生すると、孤立した赤井に丸藤が後頭部へトラースキック。そして樋口が、強烈すぎる頭突き。ここを勝機と見た山下はアティチュード・アジャストメントからクラッシュ・ラビットヒートを繰り出すも、なんとかカウント2で返す赤井。ここで坂口と丸藤、岡谷と樋口がお互い目で合図し「これ以上カットに入るのはやめよう」とリング下へ。山下が、赤井に介錯となるスカルキックを発射し、20分3秒、片エビ固めで赤井から勝利を奪った。

 試合後、Eruptionの3人は四方に礼。その後、新日本プロレスの棚橋弘至、真壁刀義、そしてタッグ結成および対戦経験もあるレジェンド・天龍源一郎からのVTRレターが流され引退セレモニーへ。白いドレスに身を包んだ赤井に、坂口、岡谷のほか同期の彩羽匠と山下りな、赤井をスカウトした高木三四郎から花束が贈られた。高木はマイクを持ち「赤井さん、いや赤井沙希選手! 10年間、DDTを愛し続けてくれてありがとうございます」と感謝を伝えると、続けて高木は赤井にスタッフとしてDDTに残ってほしいと懇願。赤井は涙ながらに快諾した。その後、VTRレターでWWEのSHINSUKE NAKAMURAが登場し、10年間のプロレス生活を労った。

 赤井は、手紙にしたためてきた引退への思いを朗読。DDTファンへの「うわべではないリアルな愛」への感謝を述べた後に、10カウントゴングが鳴らされ最後のコールを受けると、会場からは赤井のイメージカラーである赤と白の紙テープが投げ込まれた。

 赤井のプロレスラーとしての通算戦績は「662戦414勝239敗3引き分け6無効試合」。最後の最後まで、強く、気高い、美しいプロレスラーとして、10年間のリング生活に終止符を打った。

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