【週末は女子プロレス♯125】メーガン・ベイン「未知の強豪」がいない時代に現れた「未知の強豪」

スターダムの「5★STAR GP」開幕戦、7・23大田区に突如現れた身長180センチの大型レスラー。彼女の狙いはシングルリーグ戦ではなく、いきなり最高峰王座のワールド・オブ・スターダムだった。メーガン・ベインを名乗るこの選手は、王者・中野たむを襲撃し宣戦布告。8・13大阪でのタイトルマッチではベルト奪取こそならなかったものの、底知れぬパワーで日本人選手を圧倒、現在は「ゴッデス・オブ・スターダムタッグリーグ戦」に舞華とのパワフルコンビで参戦中だ。

大迫力のメーガン【写真:スターダム提供】
大迫力のメーガン【写真:スターダム提供】

メーガン・ベイン、アメリカ出身 ニックネームは「メガサス」「グリーク・ゴッデス」

 スターダムの「5★STAR GP」開幕戦、7・23大田区に突如現れた身長180センチの大型レスラー。彼女の狙いはシングルリーグ戦ではなく、いきなり最高峰王座のワールド・オブ・スターダムだった。メーガン・ベインを名乗るこの選手は、王者・中野たむを襲撃し宣戦布告。8・13大阪でのタイトルマッチではベルト奪取こそならなかったものの、底知れぬパワーで日本人選手を圧倒、現在は「ゴッデス・オブ・スターダムタッグリーグ戦」に舞華とのパワフルコンビで参戦中だ。

「未知の強豪」がもはや死語と化したマット界において、メーガンはいまどき珍しいほどその名の通りの「未知の強豪」だった。その姿はまるで、「未知の強豪」がひしめいていた80年代のアメリカンプロレスからタイムスリップしたかのよう。ギリシャ神話をモチーフにしたコスチュームは、そのまま彼女のプロレス観を示している。そんな彼女についたニックネームは「メガサス」、「グリーク・ゴッデス」。

「メガサス」のメガには“巨大な”という意味があり、“巨大なペガサス”に自身の名前メーガンを被せたダブルミーニングとなっている。「グリーク・ゴッデス」とはギリシャ神話の女神であり、北欧神話の闘いの女神ワルキューレや、「ワンダーウーマン」でのアマゾン族のイメージも入っているとのことだ。

 もともと彼女は大家族の出身だった。彼女を筆頭にきょうだいは6人。家族だけではなく、親戚や近所の人と自宅で一緒にプロレスを見る機会が多かった。自然とプロレスに興味を持ち、ブロック・レスナー、アンダーテイカー、チャイナら、身体の大きいレスラーが醸し出す雰囲気に魅了された。

 大柄でもあった彼女は、次第に自分もリングに上がりたいと思うようになった。ミドルスクール、ハイスクールでアマレスを学んでいたこともあり、19歳で本格的にレスラーを目指すようになる。地元コネティカット州ニューヘブンを飛び出し、車で13時間かけてケンタッキー州ルイビルに向かった。かつてWWEのディベロップメント団体として多数のスーパースターを輩出したOVW(オハイオ・バレー・レスリング)のレスリングスクールでトレーニングするためだ。マット・カポテリ、アル・スノーがコーチに就き、日本ではオカマレスラーとして1988年から92年の全日本プロレス、W★INGで人気を博したリップ・ロジャースからの指導も受けた。

メーガンの衣装はギリシャ神話がモチーフ【写真:スターダム提供】
メーガンの衣装はギリシャ神話がモチーフ【写真:スターダム提供】

今年7月、スターダムに初来日 アメリカ以外で試合は初めて

 デビューは2017年10月末。ケビン・ギザという男子レスラーとのシングルマッチだった。それまでの練習が女子同士で、言い渡された最初の試合がいきなりのインタージェンダーマッチ。さすがに戸惑ったというメーガンだが、その後もOVWで試合をすることが認められた。デビュー戦というよりも、トライアルマッチの意味合いが大きい初マットだったという。

 同年11月8日、ルームメイトでもあったカリと組み、「バーシティベイブズ」を名乗るベビーフェースのタッグチームとして売り出された。最初のリングネームは「メグ」。彼女は大柄だったが、パートナーのカリは決して大きなレスラーではなかったとのことだ。

 同年12月27日にOVW女子王座に初挑戦。バーシティベイブズは18年5月まで続き、9月にはリングネームを「メグ・モンロー」としてOVW女子王座に再びチャレンジした。同王座奪取は「メーガン・ベイン」に改名後の19年6月1日。2週間後には前王者を返り討ちにし、10月29日にマックス・ジ・インペイラーに敗れるまで5度の防衛に成功した。インペイラーとは金網マッチを含め、同王座を巡り何度も闘っている。

 2021年になるとECWA女子スーパー8トーナメントに優勝、4月にAEWに初参戦し、サンダー・ロサやナイラ・ローズと対戦した。同年9月にはICW(イモータル・チャンピオンシップ・レスリング)女子王座を奪取している。

 そして今年7月、スターダムに初来日。アメリカ以外で試合をするのはこれが初めて。7・23大田区で赤いベルトの王者をターゲットにすると、7・29佐久での6人タッグで日本デビュー。以後、タッグマッチなどにおいて相手をちぎっては投げ、ちぎっては投げの圧巻パワーを披露しまくった。

 が、時はちょうどシングルリーグ戦の真っ最中。メーガン自身の大一番は8・13大阪でのタイトルマッチであり、5★STAR GPは自動的に静観する立場になってしまった。タイトル戦後はテーマなき闘いを強いられたのだ。この状況をメーガンはどう受け止めていたのだろうか。

「ほかの選手たちの試合を見ていて、『5★STAR GP』とは一年でもっとも大事なシリーズだということが伝わってきた。確かにタイトル戦では不覚を取ったけど、正直、このなかに入って闘えば自分が優勝できたはずとの思いはある。それをいまさら言ってもしょうがないから、来年は最初からエントリーされているようになりたいわね。そのためにもジャパンの、スターダムのリングでアピールしていきたいわ」

圧巻のパフォ―マンスをみせるメーガン【写真:スターダム提供】
圧巻のパフォ―マンスをみせるメーガン【写真:スターダム提供】

舞華とのコンビで「ゴッデス・オブ・スターダムタッグリーグ戦」にエントリー

 実際、多くの試合でメーガンは持てる力を持て余しているようにも見受けられた。が、ここへきてようやく本領発揮のチャンスがやってきたと言えるだろう。舞華とのコンビで「ゴッデス・オブ・スターダムタッグリーグ戦」にエントリー。星来芽依との凸凹コンビも魅力的だが、自身のスタイルを最大限に生かすには、おなじパワーファイターの舞華の方がベターではないか。舞華とのチーム名は「ディバイン・キングダム」。“女帝”舞華と“闘いの女神”メーガンの合体で、神の王国(ディバイン・キングダム)が建国される。

 タッグとしての実績こそないものの、個々の力からしてもディバイン・キングダムは優勝候補の一角とみていいだろう。盟友ひめかが引退し、5★STAR GPでは優勝目前で初栄冠を逃した舞華。試合後には「プロレス界から離れたい」と号泣するほどの傷心ぶりだったが、タッグリーグ開幕前の会見でメーガンからもらった言葉に感銘を受けた。トップを目指すための光が差し込んだのだ。

「5★STAR GPはスターダムのエリートだけが参戦できるリーグ戦でしょ。最高のなかの最高の選手だけが勝ち上がれる。優勝できずに残念なのはわかる。それでもアナタはできる限りのことをしたし、すごく印象的な闘いを見せた。これって誇りに思えることでしょ。アナタにはもっと先がある。それを乗り越えれば、この結果だって覆せる。先に進もうよ。私たちで別のことにフォーカスしよう。それが今回のタッグリーグ戦。私たち2人とも疑いなくパワフルでアグレッシブでしょ。アナタはエンプレス(女帝)で私はゴッデス(闘いの女神)。この2人が一緒に闘えばタッグリーグを占拠できる。優勝しよう」(メーガン)

 考えてみれば、タッグ王座、タッグリーグ戦とも名称は「ゴッデス・オブ・スターダム」。ゴッデスを自称するメーガンにとってこれほどピッタリなタイトル、シリーズはないだろう。

「偶然としても、これって私たちが優勝しなさいって神から言われているようなものでしょう(笑)」(メーガン)

 10・19後楽園までリーグ戦は2試合消化し1勝1敗。2戦目の岩谷麻優&羽南組との公式戦ではまさかのリングアウト負けを喫してしまった。これまで日本ではやったことのないような闘いで、メーガンはあっけにとられるしかなかったのだ。が、こういった闘いもありとインプットすることで、かえって同じ間違いを起こすとは考えにくくなったのではなかろうか。これからあたる中野たむ&水森由菜組(11・4高崎)、AZM&天咲光由組(11・10仙台)、MIRAI&桜井まい組(11・11宇都宮)、葉月&コグマ組(11・12長岡)には要注意だ。

 来日初戦から10・22大阪まで32試合をこなしたメーガン。そのうちチーム戦が29試合で24勝5敗。シングルが王座奪取ならずの赤いベルト戦のみで、3WAYマッチでは勝利。またバトルロイヤルでも1試合闘っている。全試合のなかで自身での勝利は20試合と圧巻の勝率を誇る。これからも、ブロック・レスナーばりのF5がピンフォールの山を築くか!?

次のページへ (2/2) 【写真】相手を踏みつけ、手を広げるメーガン。日本で圧巻のパフォーマンスを見せている
1 2
あなたの“気になる”を教えてください