フジテレビがジャニーズ検証番組 忖度認め「特別視が性加害を見逃す」「要請断って出禁にされた」

フジテレビは21日午後2時から特別番組『週刊フジテレビ批評特別版~旧ジャニーズ事務所創業者による性加害問題と”メディアの沈黙”』を放送し、旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)に関しての社内調査結果を報告した。調査対象は、大手芸能プロダクションと対峙する役割も担う編成制作局、ニュースを扱う報道局、情報制作局に携わった経験のある社員、元社員の計77人を調査したとしている。

フジテレビ【写真:ENCOUNT編集部】
フジテレビ【写真:ENCOUNT編集部】

旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)に関しての社内調査結果を報告

 フジテレビは21日午後2時から特別番組『週刊フジテレビ批評特別版~旧ジャニーズ事務所創業者による性加害問題と”メディアの沈黙”』を放送し、旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)に関しての社内調査結果を報告した。調査対象は、大手芸能プロダクションと対峙する役割も担う編成制作局、ニュースを扱う報道局、情報制作局に携わった経験のある社員、元社員の計77人を調査したとしている。

 まず、週刊文春による「ジャニー喜多川氏セクハラキャンペーン報道」の訴訟で、2004年2月、最高裁がジャニー氏の性加害については「真実性を認める」とした東京高裁の判決を維持。この事実をフジテレビが報道しなかったことに関しての証言を紹介した。

「このネタを正面からニュースで扱う認識が全く無く、芸能ゴシップ、スキャンダル的な受け止め方をした」(元報道番組幹部)

「ニュースとして取り上げる重みがある感じがしなかった。それだけ男性の性被害という問題への感度が低かったと思う」(元報道番組幹部)

 また、今年に3月、英国のBBCがジャニー氏の性加害問題を特集し、4月に元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトが被害を告白する記者会見した際にニュースにせず、同月23日、旧ジャニーズ事務所が所属タレントなどへの聞き取り調査を始めた段階から報道を始めたことも伝え、渡邉奈都子報道局長が「男性に対する性加害について、私たち報道担当者の意識が著しく低かったことが、今回の調査であらためて分かりました」「感度の鈍さを考えますと、報道に携わるものとして深く反省しています」などとコメントした。

 続けて「報道局に旧ジャニーズ事務所への配慮があったのか」を検証。同局は旧ジャニーズ事務所の所属タレントの逮捕情報について他社に先駆けて報道する準備をしていたものの、報道と編成との協議と調整で報道が他社よりも遅くなったことを明かした。その上で、元報道局幹部の「事務所への遠慮や忖度はあったと思う。慎重にしなかればいけない雰囲気はあった」「ドラマやバラエティーのキャスティングなどに大きく影響するかもしれないと思い、消極的になることがあった」とする証言を紹介。渡邉報道局長は「明らかに旧ジャニーズ事務所対する気遣いや配慮が、報道にもあったことは認めざるを得えません。報道が遅れてしまった案件があったことは本当にじくじたる思いです。今後、しっかり襟を正していきたいと思います」とした。

「旧ジャニーズ事務所と接する機会があった社員、元社員は性被害の実態の認知にしていたのか」については、「ウワサとして聞いたことがある」(元編成幹部)、「個人差はあれど、認識していたと思う」(編成幹部)などの証言の他に、「ジャニーズJr.出身の仕事仲間が飲み会で酔っぱらった際に、自分の被害に遭った話を笑い話にしていて、深刻な性被害とは受け止めることができなかった」「刑事事件になっていない性犯罪を取材・報道することは、今でもハードルが高い」との声も紹介した。

 この社内調査については、同局の大野貢情報制作局長が「組織全体として性加害に対する認識が著しく低かったと受け止めています。サインを見過ごすことのないよう意識を高めて参りたい」。立松嗣章編成制作局長は「ジャニー氏にまつわるうわさは多くの社員が耳にしていたが、それが深刻な性被害とは想像ができませんでした。改めて人権問題として認識が不足していました」と話し、謝罪した。

 続けて「旧ジャニーズ事務所への忖度はあったのか」も検証。大手芸能プロとの交渉が一筋縄ではいかないことなどの証言を紹介した上で、さまざまな証言を並べた。

「ジャニーズ事務所所属のタレントに関する発表についてかなり細かく使用範囲や使用可能映像の指定があった」「それを万が一逸脱してしまったりすると、ペナルティーとして一定期間その番組だけジャニーズ事務所関連のエンタメニュースなどで、映像が使えなくなったりしていた」(編成番組担当)

「ジャニーズ主役のドラマでは、他社のイケメングループのキャスティングを避けたり、また事務所を辞めた人はキャスティングしない方がいいのではないかという考えがあった」(元制作幹部)

「情報番組において、ジャニーズのタレントが事件を起こしたり結婚したりしても、それを取り扱っていいかどうかは会社全体の判断が必要だ、と割り切っていた」(情報制作局幹部)

「直接圧力を受けたケースは稀だが、ジャニーズ所属タレントの結婚報道の際に取材した映像を放送しないでほしいという執拗な要請があったが断った。それ以降は一定期間、ジャニーズの取材現場から当該番組が出入り禁止にされたが、気にしなかった」(元情報制作局幹部)

 これらの証言に関連し、立松編成制作局長はヒット番組を作るために事務所との駆け引き、交渉があることを認め、「魅力あるタレントが多く所属する旧ジャニーズ事務所に対して、徐々に特別視する空気ができあがっていたことは否めません。そうしたことが、性加害を見逃したことにつながったのだと思います」などと話した。

 そして、「フジテレビはどう変わっていくべきか」については、「テレビ局は、免許事業として娯楽性と共に『報道機関』であることが本分であることを認識し、事務所側にも認識してもらうことが重要である」(情報制作局幹部)など証言を紹介。渡邉報道局長は「どんな対象であれ、取材すべきは取材し、報道すべきことは報道していく。この当たり前の基本をあらため徹底して参りたいと思います」などとコメント。

 最後に立松編成制作局長が「自分達に問わなければならないのは、視聴者のみなさまに伝えるべきものを伝えてきたのか、見たいものを作ってかという点です。事務所への忖度により、自らそういった点を制限したのではないかという思いが今、あります。(今後は)何よりも視聴者ファーストでありたいと思います。今回のご指摘を真摯に受け止め、放送局としての役割を果たしていきたいと思います」などと話した。

 テレビ局では、既に日本テレビ、TBS系『報道特集』が旧ジャニーズ事務所との関係性を社内調査し、「忖度があった」とする社員の証言などを伝えている。テレビ朝日もジャニー氏に関する性加害問題などを検証する特別番組の制作・放送する予定を発表している。

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