【映画とプロレス #16】「LOVE STORY2050」ZERO1のハートリー・ジャクソンはボリウッド映画に出演していた

ハートリー・ジャクソン【写真:新井宏】
ハートリー・ジャクソン【写真:新井宏】

ハートリー・ジャクソンは新日本のTシャツ姿でインド映画に出演

 さて、“プロレスラー”ジャクソンの出番だが、開始から20分ほどで現われるこのシーンは、地元アデレードで撮影された。ジャクソンは友人たちといたところ、カランと身体が接触。カランはバスに乗り込むサラを偶然見かけ、彼女に追いつくことに夢中でまわりが見えていなかったのだ。そんなこと知ったこっちゃない彼らは怒ってカランを追いかけまわすのである。

 ではなぜ、ジャクソンはボリウッド映画出演のチャンスを得たのだろうか。当時、ジャクソンはアデレードでプロレスラーとしてすでに活躍しており、CMやテレビ番組への出演経験も持っていた。ロケをおこなうにあたり、インドの映画会社がアデレードのエージェントにアクションシーンのこなせるタレントを要請。ここでお呼びがかかったのがジャクソンだった。プロレスラーは彼ひとりで、ほかの4人はナイトクラブのセキュリティー。ジャクソンにもバウンサーの経験があり、当初は制服姿での出演を打診されていたのだが、監督が「カジュアルな服装で」と変更した。ここでジャクソンは新日本のTシャツで撮影地に出かけ、監督の許可が下りた。ジャクソンは05年にアメリカにある新日本のロス道場で学び、06年7月に新日本プロレスへ初来日。後楽園ホールで同郷のマイキー・ニコルスと組み、後藤洋央紀&稔(田中稔)組と対戦した。そのとき持ち帰った新日本のTシャツを映画で着用。これは、タフガイ役を求められたジャクソンによる、「自分はプロレスラーだ」いう密かなアピールだったのだろう。

 5人組のなかでもジャクソンは大将格だ。カランと肩がぶつかったジャクソンにはセリフがある。「Oh shit…You just dropped my chips, Mate. Get him!」。彼の号令でスタートする1対5のチェイスシーンでは、ジャクソンもスタントのアドバイスをおこなったという。

 カランを演じたハーマン・バヴェアはこれがデビュー作。アクションやダンスなど、映画初出演とは思えないボリウッド適応力で、インドの映画賞で新人賞にノミネートされた。相手方のプリヤンカー・チョープラーは、今作公開の08年だけでも7本の映画に出演。このときすでにボリウッドを代表する売れっ子女優となっていた。ジャクソンとの共演場面こそなかったものの、撮影時には現場に居合わせ、休憩中には彼らと一緒にランチもとった。しかもテイクの合間には顔を出し、手すりを飛び越えてみせるなどアクションシーンの動きを真似てジャクソンたちをリラックスさせてくれたという。彼女はその後、ハリウッドに進出、ロック様と映画で“対戦”することとなる!(次週につづく)

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