「なんと酷いことを」 絶滅危惧の鳥の卵3個が踏みつぶされ、無残な姿に…保護従事者の無念

千葉市の市の鳥として親しまれている希少な渡り鳥「コアジサシ」の保護区で、痛ましい事案が発生した。3つの卵がつぶされていたところが発見されたのだ。人によって踏みつぶされたことが推定されるといい、「二度と悲しい事故が起きないように」。コアジサシ保護活動の従事者は悲痛な思いを訴えている。

コアジサシは希少な渡り鳥として知られている(写真はイメージ)【写真:写真AC】
コアジサシは希少な渡り鳥として知られている(写真はイメージ)【写真:写真AC】

千葉市「検見川の浜」保護区で発生 レッドリストで絶滅危惧II類「コアジサシ」

 千葉市の市の鳥として親しまれている希少な渡り鳥「コアジサシ」の保護区で、痛ましい事案が発生した。3つの卵がつぶされていたところが発見されたのだ。人によって踏みつぶされたことが推定されるといい、「二度と悲しい事故が起きないように」。コアジサシ保護活動の従事者は悲痛な思いを訴えている。(取材・文=吉原知也)

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 ツイッターに投稿された1枚の写真。貝殻の破片などが入り混じる砂浜をよく見ると、無残な姿になってしまった3つの卵が確認できる。

 投稿主は、NPO法人「リトルターン・プロジェクト」の理事を務める松村雅行さん。千葉市にある検見川の浜に設置された保護区内で撮影されたものだといい、自身のツイッターアカウント「髭面燕鴎(@higeduraajisas1)」を通して今月3日に被害を報告した。

「産まれ来るはずの小さな命が三つ奪われました。検見川浜ではコアジサシが安心して子育てできる場所として、ロープ柵を張り巡らして保護しています。自分には一切理解出来ないのですが、何故か保護区の中に立ち入る人がいます。あなたの足が小さな命を奪ったことをお分かりですか?入ってはダメです!」。

 怒りの投稿には多くの反響が集まっており、「すごく悲しいです」「一つの種がこの世から居なくなるという事の重大さを理解できないのでしょうか…」「なんと酷いことを」「営巣中は有刺鉄線付きの鉄柵立てるしかないかもですね…」「やはり一番の天敵は人間なんですね」などのコメントが寄せられている。

 千葉市の公式ホームページによると、コアジサシは環境省のレッドリストで絶滅危惧II類に位置付けられており、「繁殖のために飛来する4月から9月にかけて、繁殖状況などの生息実態調査を実施するとともに、市民と協働で繁殖地を保護しています」と説明。2003年に検見川の浜で初めて営巣が確認されて以降、立入禁止のロープ柵や注意看板を設置するなどの対策を講じており、「保護区域内(ロープ内)は立入禁止です。ヒナが卵からかえり、健やかに巣立つまでの間、ご理解とご協力をお願いします」と注意事項を記載している。

 コアジサシ保護活動を20年続けている松村さん。今回の発見時の詳細を教えてくれた。

「検見川浜コアジサシ保護区でのコアジサシの営巣状況確認のために毎週月曜日に保護区内に入り、営巣調査を行っています。巣の位置や卵やヒナの数をチェックしながら保護区の中を歩いて調査しています。今回の踏みつぶされた卵は営巣調査の時に発見しました」。

 何者かが保護区内に侵入したとの見立てがあるといい、「立入禁止になっているので、ついているのは営巣調査に入った自分たちの足跡だけのはずなのですが、残念ながら保護区を横切る足跡をよく見つけます。今回の事故は、足跡を追っていくうちに踏みつぶされた卵を見つけるに至りました。誰かが波打ち際から入って来て、もうすぐヒナが産まれるはずの巣の卵を3個踏みつぶして反対側に抜ける形になったと考えられます。あってはならない事故なので、足跡がよく分かるように真上から写真を撮りツイートしたわけです」と話す。

コアジサシの魅力 「ヒナのかわいさは鳥界で一番だと思っています」

 痛ましい結果になったが、松村さんは事故の遠因となった背景についても冷静に分析する。

 まず、保護に取り組む現状について、「砂浜は千葉県の管理下にあり、千葉市が毎年検見川浜の一部をコアジサシ保護区として占有許可を得て保護区を設定しています。使える面積は県との取り決めで決まっています」と解説。そのうえでロープ柵や注意看板などを通して「絶滅危惧種のコアジサシが子育てしていることを伝えて、立ち入り禁止の理解を得るようにしています」と強調する。

 また、検見川の浜では千葉市とボランティアと協力して、毎年営巣地整備作業を行い、コアジサシの保護区として保護柵を設置。グーグルマップ上に「検見川浜コアジサシ保護区」として地点登録しており、「コアジサシが千葉市の人工海浜の検見川浜で営巣していることを多くの方に知っていただきたく、自分で地点登録してクチコミと写真を投稿しています」と普及活動に尽力している。

 一方で、「残念ながらまだコアジサシについて、生態などを含めて多くの方に知られていないので、今回のような残念な事故が起きています。今回のツイートでより多くの方に、砂浜に簡単な浅い穴を掘って卵を産む鳥がいることを伝えられたのではないかと思っています」。周知がなかなか届きづらい難しさがあることを明かす。

 松村さん自身は、東京・大田区昭和島にある森ヶ崎水再生センター屋上人工営巣地で長年コアジサシ保護活動を続けており、東京湾内ではほかにも葛西海浜公園西なぎさや東京港野鳥公園でのコアジサシ保護にも関わっている。

「コアジサシのありとあらゆるシーンを目撃してきました。一番の魅力はやはりスタイルのよさと、産まれてくるヒナのかわいさだと思います。ヒナのかわいさは鳥界で一番だと思っています」。関われば関わるほど魅了される鳥だという。

 行き場のない悲しさが残る今回の出来事。松村さんは改めて、「つぶされた卵はそのまま残してありますが、小さな生き物や、カラスが見つければ食べていると思います。起きてしまったことは悲しいけど仕方ないですが、今後二度と悲しい事故が起きないようにという思いでいます」と話している。

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