武尊が見せたプライド 「大谷翔平のように」を否定した理由「自分なりの成功例を作りたい」

キックボクシング界を引っ張ってきた“カリスマ”武尊がついにリングに帰還する。格闘技イベント「Impact in Paris」(24日、フランス・パリ、ゼニスアリーナ、ABEMA PPV ONLINE LIVEで独占生中継)でISKA世界61キロ級タイトルを懸けてISKA世界スーパー・ライト級(63.5キロ)王者ベイリー・サグデン(25=英国)と対戦。370日ぶりの復活を前に昨年公表した精神障害との闘いについて話を聞いた。

インタビューに応じた武尊【写真:山口比佐夫】
インタビューに応じた武尊【写真:山口比佐夫】

昨年6月に精神障害を公表

 キックボクシング界を引っ張ってきた“カリスマ”武尊がついにリングに帰還する。格闘技イベント「Impact in Paris」(24日、フランス・パリ、ゼニスアリーナ、ABEMA PPV ONLINE LIVEで独占生中継)でISKA世界61キロ級タイトルを懸けてISKA世界スーパー・ライト級(63.5キロ)王者ベイリー・サグデン(25=英国)と対戦。370日ぶりの復活を前に昨年公表した精神障害との闘いについて話を聞いた。(取材・文=島田将斗)

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 間違いなく世紀の一戦と呼べる興行だった「THE MATCH 2022」。武尊は“神童”那須川天心と激闘を繰り広げ、惜敗した。試合直後の会見で言葉に詰まり、うつむいてしまう。会見は途中で終わっていた。

 約1週間後、都内のホテルで会見を開いた武尊はうつ病、パニック障害であることを公表し、もともとあったケガもあり休養を発表。笑顔は全くなかった。

 あれから370日ぶりの試合。武尊は生まれ変わった姿を公開練習で披露した。軽めな見せるための公開練習を行う選手が多いなか、シャドー、ミット打ち、スパーリングを各2分ずつ行った。シャドーから気合い十分。これまでSNSに投稿していたどのトレーニング映像よりもキレが増している。この1年、どのように病と接し過ごしてきたのか。終始、リラックスした表情で明かす。

「(精神障害を)発症したのは6、7年くらい前でした。この病気には完治というのがないので、いつまたなるかも分からない。ずっと付き合っていくものなので、同じような悩みを抱えている人ってたくさんいるし、それで仕事ができなくなった人もいる。でも、自分は病気と闘いながら試合をして勝つ姿を見せていけば、そういう人たちの勇気になるかなと思ってあのタイミングで公表しました」

 環境を変えることが自身にとって大きなことだったという。何年も前から行ってきている米国修行も心にとって良いことだったとうなずく。

「環境を変えて良くなったというのが、僕の場合はある。それこそアメリカに行くようになったのもそれがきっかけでした。自分の置かれている環境を変えて、生活や関わる人を変えることでうまく病気と付き合っていけるようになっていきましたね」

 いったい何が合っていたのか。「あまり国で人を表現するのは良くないかもしれない」と前置きしつつ、説明した。

「我慢の文化じゃないですけど、日本って面と向かって言いたいことを言えない文化があるように思えていました。そういう美学ももちろんあると思うけど、アメリカってすごくオープンだし、言いたいことを何でも言ってくれる。こっちも言いたいことを言えるんです」

 文字通りの環境、つまり天候も肌に合っていた。「ロサンゼルスにいつも行くんですけど、年間で20日間ぐらいしか雨が降らなくて常に晴れなんですよ。それが僕にとっては、すごく良くて。太陽を浴びるっていうのは自律神経も整うし、睡眠も良く取れるようになりました」と明かした。

 あの敗戦から自分を見つめ直した。天心に敗れるまで35連勝していた武尊はこれまでは「負けることへの恐怖」で練習していたというが今回は違う。公開練習後の囲み取材では「格闘技を楽しいと思ってやっているし、負けたくないじゃなくて勝ちたい。同じような意味ですけど、僕のなかでは違う。プラスのパワーで動けていますね」と前向きなコメントを残していた。

 5月にはシンガポールの団体「ONE」への参戦も発表された。チャトリ・シットヨートン氏はその会見で武尊獲得にハイテンション。格闘技界の「大谷翔平のようになれる」と何度も口にした。武尊はその後あえて「大谷翔平のようにではなく」と発言し話題になった。世界初進出直前に発言の真意を口にした。

「(チャトリ氏の発言が)1、2回だったら言ってなかったと思うんですけど(笑)。大谷翔平選手ってアスリート界でも成功例ではあるし、すごい選手なのはもちろん知っているんですけど、誰かのようになりたいじゃなくて、僕は“武尊”として世界のスーパースターになりたいし、スポーツ界の成功例になりたい。『大谷翔平のように』だったら大谷選手のところまでしかできないと思うので、自分は自分なりの成功例を作っていきたいという気持ちです」

 完治は難しいと言われる精神障害。それでも武尊は自分と闘い、世界の強豪と戦っていく。本物のカリスマがつむいでいくキックボクシング界の第2章はこれから始まっていく。

次のページへ (2/2) 【写真】武尊が公開練習で披露したローリングソバット
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