日雇いバイトにホームレス生活も 五輪金メダリスト破った異色の現役柔道家・川端龍が「BreakingDown」で目指したもの

かつて柔道の東京五輪金メダリスト・高藤直寿を破った男が話題の格闘技エンターテインメント「BreakingDown」に出場した。ドンマイ川端名義でYouTube活動をしながら、現役生活を続けている柔道家の川端龍(33)だ。なぜ賛否あるイベントに参加したのか。「飯と家と柔道があれば幸せ」が信念。他の参加者とは違う意気込みが川端にはあった。

「BreakingDown」出場直後の川端龍【写真:山口比佐夫】
「BreakingDown」出場直後の川端龍【写真:山口比佐夫】

柔道界から賛否も「BreakingDown」に出場

 かつて柔道の東京五輪金メダリスト・高藤直寿を破った男が話題の格闘技エンターテインメント「BreakingDown」に出場した。ドンマイ川端名義でYouTube活動をしながら、現役生活を続けている柔道家の川端龍(33)だ。なぜ賛否あるイベントに参加したのか。「飯と家と柔道があれば幸せ」が信念。他の参加者とは違う意気込みが川端にはあった。(取材・文=島田将斗)

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 大学4年時に出場した講道館杯では高藤直寿(東京五輪男子60キロ級金メダリスト)を破り優勝。国内外の大会で実績を積んできた。「ベスト16みたいな顔なんで、柔道だけは何としても優勝したかった」と答え、ファンを爆笑の渦に巻き込んだ講道館杯優勝時のインタビューは今も色あせない。異色の柔道家として知られている。

 現役柔道家の「BreakingDown」出場。さまざまな意見が耳に届いていた。「柔道界の方からは賛否ありました。否定的な意見も正直とても届いています。でも、自分の中で出たいと思って」と振り返る。

「BreakingDown」は格闘技界のみならず、世間的にも知名度のあるコンテンツだ。出場すれば多くの人の目に留まる。初めての格闘技挑戦へ「怖さ」と「ためらい」があったというが、試合に出たのは「BreakingDownファンを柔道に引っ張ってくる」という使命からだった。

 柔道は日本の国技とも言われているが、4年に1度の五輪でしか盛り上がらないのが現状だ。川端は「そこが1番課題」と口にする。

「ウルフ(アロン)とか高藤からは『頑張って』という言葉いただきました。“今”の柔道家からしたら僕(川端)っぽいなと思っていると思います(笑)。ただ柔道界の大御所たちは否定的な人もいるって聞きました。でもそれは世代間の考え方の違いで、なくなっていけばいいのかなと思います。

 昔からプロ格闘家になると柔道に3年間戻ってこられない(全日本柔道連盟登録規定)とかいろいろあるんですけど、そういうのもレスリングみたいになくなっていけばいいと思いますね。プロの試合に出ても柔道の試合出ていいよってなれば、柔道をもう少しカジュアルに見ていただけると思います」

 今回の試合で川端は朝倉未来の弟子・ヒロヤと対戦。分がある寝技に引き込むが惜しくも判定負けを喫した。負けで否定的な意見が増えると苦笑いするが、全く芯はぶれていない。今回の挑戦で得たものは「度胸」だった。

「試合当日も朝起きて、試合会場に入って、アップしてステージの裏に行くまで腹くくれてなかったんですよ……。でも最後スイッチを入れられたのはすごい良かったな。ビビらずにできたなって思います」

 さらに「自分が柔道で貢献したり、有名になって柔道普及に役立った時に、『あれ(BreakingDown)に出たおかげで広まったよね』と言えるようにしていきたいです」とうなずいた。

格闘技に初挑戦したドンマイ川端(左)【写真:山口比佐夫】
格闘技に初挑戦したドンマイ川端(左)【写真:山口比佐夫】

柔道を続けるために始めたYouTube「毎月4万円くらいしか稼げなかった時代も」

 YouTuber・ドンマイ川端としての一面も川端にはある。登録者は約20万人。現役柔道家の人脈を生かし、野村忠宏、大野将平などさまざまなレジェンド柔道家とのやり取りも撮影し、女子52キロ級最強の阿部詩との映像は200万回再生を超え。ウルフとの仲むつまじいやり取りにも定評がある。

 なぜ始めたのか。

「柔道家というのは大体実業団に所属して、柔道をする。そのなかでほとんどの人は30歳目前に引退するんです。僕も会社の人と相談して、『そろそろ引退』となったときに、僕はまだ柔道をやりたかった」

 当然、柔道だけでは食べていけない。川端は社長の運転手などをしながら練習していたという。しかし、そのどれもに「自分に合っていないな」という違和感があった。「自分を表現する場所が欲しい」の思いでYouTubeをスタートする。

「飯もろくに食えてなかった。毎月4万円くらいしか稼げなかった時代もありますね。日雇いバイトをして、住むところもなかったときにはホームレスを4か月くらいしました。先輩の家に居候したりもありました」

 YouTubeでは先輩柔道家に対しても臆することなくコミカルやり取りをする。それでいてリスペクトも忘れていない。そんな姿も評価され、YouTube活動は1年ほどで軌道に乗った。

「最初は柔道の練習時間を確保するのが難しかったのですが、売れ出してきて、収入が上がることによって柔道も出来る時間が増えましたね。現在は東京を拠点にし、筑波大で練習をさせてもらっています。両立できています」

 終始にこやかだった表情がぐっと引き締まる。

「本当に無謀と言われるかもしれないけど、もう1度日本代表、全日本の強化指定選手になって、柔道界で活躍することで自分のやってきたことを正解にしていきたいと思いますね」

 賛否のあった「BreakingDown」への挑戦。試合前には「最初で最後」と話していたが試合後には「不完全燃焼だからもう1度やりたい」と唇をかむ。柔道界を新たな方法で盛り上げるため、険しい道を選んだ川端の表情はどこかスッキリとしていた。

※高藤直寿の「高」ははしごだか

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