ロールス・ロイスは「1台で孫の代まで乗れる」 華麗な愛車遍歴を持つ教師が惚れ込んだ“職人技”

世界の高級車の代名詞的存在であるロールス・ロイス。オープンカー仕様で圧倒的オーラを放つ1台を愛車にしている学校の先生がいる。「Rolls-Royce and Bentley Owners' Club of Japan」の事務局長を務める山崎政彦さんに、「長く乗り継ぐ」信念について聞いた。

88年式のロールス・ロイス コーニッシュIIはラグジュアリー感にあふれている【写真:ENCOUNT編集部】
88年式のロールス・ロイス コーニッシュIIはラグジュアリー感にあふれている【写真:ENCOUNT編集部】

左右対称の木目に職人技が光るコーニッシュII ロールス・ロイス&ベントレーのオーナーズクラブとして活動

 世界の高級車の代名詞的存在であるロールス・ロイス。オープンカー仕様で圧倒的オーラを放つ1台を愛車にしている学校の先生がいる。「Rolls-Royce and Bentley Owners’ Club of Japan」の事務局長を務める山崎政彦さんに、「長く乗り継ぐ」信念について聞いた。(取材・文=吉原知也)

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 1988年式のロールス・ロイス コーニッシュII。黒光りする重厚感、皮シートとウッド調の内装はセレブ感を漂わせている。屋根はオープンで、運転する姿は本当に心地よさそうだ。全長は515~520センチというから驚きだ。

「ドロップヘッド・クーペという名称なんですよ。17年乗って、今年で18年目に入りました。英国ではまず4ドアのモデルを作って、次に後部座席を長くして、今度はオーナーのためにクーペを作るんです。屋根が閉まっているタイプと、最後に屋根が開いているタイプ。乗り心地は抜群ですよ」。山崎さんは誇らしげに語る。現在の一般的な価格は1200万円ぐらいだという。

 もともと94年式のベントレー・ターボRに乗っていた。ベントレーに乗って1年たったところで、専門店から「いいのが入ったよ」と、コーニッシュIIに値段が付く前に連絡をもらった。一発で気に入った。

 あらゆる面における安定感がお気に入り。走りについては「こうして屋根を開けてエンジンをかけても、エンジン音がほとんどしません。周りの車の音の方が聞こえてくるぐらいです。ハンドルもしっかり切れて、この静けさ、揺れを感じない乗り心地は他にありません」。ウッド調の内装は「木目を左右対称に仕上げていて、細かいところに職人技が施されています」。運転席のパネルなど、ところどころに見受けられる美しいシンメトリーの木目が芸術性を醸している。80~100年もののウォルナット材が使用されているといい、「この車は一部だけを変えるということができないんですよ。内装1つとっても、木目がずれてしまうんです」と熱く語る。ロールス・ロイスのポイントは数多くあるが、「1台で孫の代まで乗れる」というその丈夫な作り、安定性にほれ込んでいる。

 ロールス・ロイスに魅了されたカーライフ。もともと大型セダンが好きで、「ゆったり乗れて、ゆっくり走れる。それでいて、直線番長で、踏めば速度が出せる。速度に関してストレスなく、思うようにスピードを出せて、しっかり止まることができる」。そんな車を理想としてきた。

 ベンツ560を振り出しに、ホンダ・レジェンド、ベントレー・ターボRなどに乗ってきた。知り合いのオーナーがロールス・ロイスを買ったのを契機に、英国車の頑丈さに注目。「いいものに長く乗りたいということを大事に思っています。買い替え、転売というより、長く乗ることを考えた時に、部品が安定してずっと供給される。生産中止・販売中止の可能性が少ない。いろいろな要素の中で行きついたのが、ロールス・ロイスだったんですよ」。普段使い、雨の日ドライブのために、96年式のベントレー・ターボR L(ロングボディー)の2台持ちだ。この普段使いの車についても「デカい車がよくて」、クラウンマジェスタ、アウディA8といろいろ乗った中で、しっくりくるベントレーに落ち着いたという。

「エンジンをモーターに入れ替える、その選択をした仲間がいても、『楽しいよね』」

 オーナーズクラブは全国約70人の会員を抱える。伝統のブランドを愛するオーナーが集まり、親睦を深めている。「1度乗るとあまり買い替えることがないので、どうしても同じ車が集まっちゃいますね(笑)」。それだけ、長く乗れることの証しだ。

 由緒ある、正統派の1台。「手放す予定はないです」ときっぱり。「8気筒のOHV、クラシカルで古典的なエンジンなので、この正しい内燃機関を、できる限り乗り続けていきたいです。内外装についても、分厚い皮シートや木目、ボディーの厚さ、伝統工芸と言えます。パーツや素材自体にも価値がある。歴史と伝統を残すことが大事だと考えています」と強調する。文化的な視点を持って、継承への思いを強くしている。

 一方で、自動車業界は転換点を迎えている。電気自動車(EV)の本格到来、ガソリンエンジンは存続の議論も出てきている。時代の大きな変化が訪れている中で、ガソリンエンジンの今後、旧車のこれからをどう考えているのか。

「我々の会員の中には、内外装を生かしてそのまま残して、エンジンをモーターとバッテリーにコンバートする挑戦をしているメンバーがいます。『純正品のエンジンじゃないとダメですか?』という問い合わせを受けたこともありましたが、その選択肢を受け入れています。エンジンをモーターに入れ替える、その選択をした仲間がいても、『楽しいよね』。そういう思いで受け止めています。仲間に入ってもらっています」と語る。柔軟性を持った考え方だ。

 もちろん、ガソリンエンジンへのこだわり、情熱を捨てるわけではない。山崎さんはこう続ける。「エンジンをモーターに変えたからと言って、すぐに廃車というのは違うのかなと思っています。その車の価値はなくならないと思っています。歴史と伝統を持つ車が存在しているということが大事です。もしガソリンエンジンで走ることができなくなった時、いつか限界が訪れた時、走れる車を後世に残すための手法として、『あり』なんじゃないかな。そう考えています」。

 普段、教師として若い生徒たちと接することで、“若者の車離れ”について思うこともある。「いい時代のいい車について、車自体について、知らなければ、何もないですよね。将来、車を買うという選択肢すらなくなってしまう。車のよさについて少しでも知ってほしいですし、オーナーズクラブも含めて発信を続けていきたいです」。英国車の魅力をもっともっと伝えていく覚悟だ。

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