「靴下と下着の白色指定」ブラック校則なくした元教師 「学校は変えられる」課題は年功序列の壁

元公立中学校教師で、教育に関するさまざまな課題について、自身の経験や見解を発信しているインフルエンサーがいる。「学校のモヤモヤ代弁者」としてツイッターのフォロワー4万人を超えるのぶ(@talk_Nobu)さんだ。いじめ、ブラック校則、ブラック部活といった諸問題を抱える教育現場。このほど、初めての書籍を刊行したのぶさんは「理不尽に悩む先生、子どもが減ってほしい」との強い思いで活動を続けている。

今の教育現場は、いじめ、ブラック校則、ブラック部活といった諸問題を抱えている(写真はイメージ)【写真:写真AC】
今の教育現場は、いじめ、ブラック校則、ブラック部活といった諸問題を抱えている(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「学校のモヤモヤ代弁者」ツイッター発信・のぶさん 教育課題を取り上げた著書が完成

 元公立中学校教師で、教育に関するさまざまな課題について、自身の経験や見解を発信しているインフルエンサーがいる。「学校のモヤモヤ代弁者」としてツイッターのフォロワー4万人を超えるのぶ(@talk_Nobu)さんだ。いじめ、ブラック校則、ブラック部活といった諸問題を抱える教育現場。このほど、初めての書籍を刊行したのぶさんは「理不尽に悩む先生、子どもが減ってほしい」との強い思いで活動を続けている。(取材・文=吉原知也)

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 のぶさんは公立中学校で10年教べんを取った経歴を持つ。先生・生徒双方の環境改善につなげようと、労働時間削減を目的とした学校行事の簡略化や、無駄な校則の廃止などに尽力。過去に生徒がいじめで自殺した学校に勤務した際は、一律で厳格な対処をする「ゼロトレランス(寛容度ゼロ指導)」を含めた学校全体でのいじめ対応・指導を経験した。現在は民間のIT企業に勤務し、主に教育委員会を相手にDX(デジタルトランスフォーメーション)化を提案するなど、教育現場をよりよくするための取り組みを行っている。

 今回、著書『学校というブラック企業 元公立中学教師の本音』(創元社刊)を上梓した。「世の中にもっと伝えたいと思っていたところに、出版社の方からご連絡をいただきました。これまでの自分の発信が形にまとまることにありがたさを感じています」と充実感がにじむ。

「黒髪の強要はなぜなくならないのか?」「『みんな仲良し』は幻想」「熱血顧問による洗脳」「いじめは穏便に済ませない」「『例年通り』は思考停止と同じ」「教師の質は下がっているのか?」……。同書で取り上げられたテーマは、考えさせられる内容ばかり。のぶさんは的確に指摘したり、ズバッと斬り込んだり、独自のポイントで解説し、解決策を提示している。

 のぶさん自身、部活動顧問を担当した際は、毎月の超過勤務時間が100時間を超えていたこともあり、妻の妊娠・出産時は相当な苦労をしたという。家族の時間を確保することや休むことといった教師の労働環境改善の重要性についても強く訴えている。

『学校というブラック企業 元公立中学教師の本音』(創元社刊)を上梓したのぶさんのプロフィール画像【写真:本人提供】
『学校というブラック企業 元公立中学教師の本音』(創元社刊)を上梓したのぶさんのプロフィール画像【写真:本人提供】

「もしまた次、現場に戻れるなら、校長レベルで戻りたいなと思っています」

 ある学校に勤務していた際に生徒指導担当として「靴下と下着の白色指定」の校則をなくしたことが契機となり、「学校は変えられるんだ」と確信した。「いい先生方に恵まれて、みんなで校則を変えていったんです」。その一方で、学校改革に取り組むにあたり、年功序列の壁にも直面した。「ベテランの先生たちが共感してくれないと変わらないような環境があることを実感しました。このまま30代をもんもんと過ごすより、一度、外に出てみることもいいのかなと思いました」。

 教師を退職。民間企業に転職してからは教育委員会の担当者と接することで、より広い情報に触れ、俯瞰して教育の課題や改善策を捉えることができるようになった。SNS発信を通じて、“考える力”にも磨きがかかっている。のぶさんは将来的な目標の1つとして、「もしまた次、現場に戻れるなら、校長レベルで戻りたいなと思っています。自分が今まで見てきたもの、やってきたことの経験を駆使して、学校を変えたいです。学校をよりいい形に変える立場になれれば。そんなことも考えています」と明かす。

 価値観や考え方を誰かに伝え続ける。「そこに教育の面白さがあると思います」とのぶさん。来年、自身の子どもが小学校に上がることもあり、現場で日々奮闘する先生たちに伝えたいことがあるという。「親として子どもを集団生活の場に預ける以上は、いじめに遭ってしまうことは避けてほしいです。それに、もしまだ若手で授業がうまくできない先生が担任になっても、勉強はどうにかなるかなと思っているんです。先生にも技量の差はあるものです。ある意味、しょうがないです。とにかく子どもには、楽しく学校で友達と遊んでほしい。その遊びの中で、人と関わり合っていろいろ学んでいくものです。先生方にはその面においても教育の面白さを感じてほしいと思っています」と話している。

次のページへ (2/2) 【画像】元公立中学校教師が切なる願いを込めた著者の書影
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