Netflix「全裸監督」の総監督に聞く…日本映画界のプロデューサー“不在”問題

撮影を振り返る安藤サクラ
撮影を振り返る安藤サクラ

安藤サクラ主演「百円の恋」はプロデューサーの“力”で乗り越えた

 武監督は「(佐藤)現さんに拾ってもらいました。僕と足立さんは(撮影に入る前)文無しで、喫茶店で生きていくためにどうすればいいのか、と道を探っていたんです。『百円の恋』の撮影をやっている時も本当にお金がなかった。家に帰るための1000円を、会う人から借りていた。今、生きているのは現さんのおかげです。現さんは会社の“抵抗勢力”からも拒み続けてくれました」と振り返る。

 主演したサクラはトレーナーの松浦慎一郎氏とともに、約3か月間、ボクシングスキル獲得と肉体改造にも臨んだ。「もっと(役作りの)時間があると思っていたら、ありませんでした。(トレーニングは)命にかかわる危険を感じながら、やっていました。現さんに『詐欺師か!』と叫んだこともありました。でも、現さんは人として深いところまで寄り添ってくれる方だったので、その声と笑顔にだまされているのか、クソー!と思いながらも、やることができました」とサクラは振り返る。

湯布院映画祭で上映された「百円の恋」
湯布院映画祭で上映された「百円の恋」

 低予算映画の成功は映画界に“副作用”をもたらした。サクラは「(この映画が)成功したことによって、低予算でもできるんだという現場が増えているので、逃げたくなる。アカデミー賞受賞式の席でも、ある偉い方は『低予算でもいい映画が作れることが分かった』と話されていて、とんでもないと思いました」と明かす。

 昨今、「カメラを止めるな!」「岬の兄妹」「僕はイエス様が嫌い」「メランコリック」などインディーズ発の低予算映画がヒットを飛ばしている。それらは低予算を逆手に取った作家たちの知恵の賜物といえる。しかし、そこには大手プロデューサーは介在していない。

 どうして優秀なプロデューサーはいなくなってしまったのか。その理由について、武監督は「金がないことじゃないですか」とズバリと言った。「金がないと、発想が小さくなってしまう。ハッタリをカマしながら、ワクワクするような映画を作るんだ、という人が減ってしまった。ビルの中にいる人(会社の上層部)の顔を見ながら、なんとか作ろうとしている。僕たちはビタ一文金を持っていませんから、人の金で作るしかない。その金の匂いを嗅ぎ分けているんですけども、そういう人が減りました。だから、よその国に行くしかない」。

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