柄本佑&安藤サクラ夫妻が子連れで“凱旋”した「湯布院映画祭」の魅力とは
人気の秘密は映画人とファンの距離の近さ…名物となった「シンポジウム」
その人気の秘密は、映画人とファンの距離の近さにある。名物は上映後、監督と出演者が1時間以上に渡って、ファンとディスカッションする「シンポジウム」。映画祭のファンたちは率直な感想や辛辣な意見を述べることも辞さないシニアのシネフィルが多く、時に白熱した議論となる。さらには、映画人と交流できるパーティーも毎夜、3つの会場で開催。映画人も「○○県から来た○○さん」といった具合に、顔と名前を知っている人もいるのだ。
「シンポジウム」でコテンパンにやられた映画人の中には、「もう湯布院は懲り懲り」という人もいるが、柄本明、奥田瑛二、脚本家・映画監督の荒井晴彦氏らは常連で、「心の故郷」「映画祭の故郷」と呼んでいる。最多参加は7本を出品した故・若松孝二監督。それを確実に上回るのが柄本明、角替和枝夫妻の長男、柄本佑だろう。
佑は3歳の時から、父・明に連れられ、湯布院へ。高校生の時には実行委員会のボランティアスタッフとして参加した。その後、黒木和雄監督の「美しい夏キリシマ」(2003年)の主演に抜てきされ、同映画のゲストとして初参加。以降も、作品のあるなしに関係なく訪れている。一方、妻の安藤サクラは佐藤現プロデューサー特集の一本「百円の恋」の主演女優として参加。こちらも10代の頃から父・奥田瑛二に連れられ、湯布院に親しんでいる。結婚後には夫婦共演した「今日子と修一の場合」(奥田瑛二監督、2013年)でもそろって参加した。
「火口のふたり」(荒井晴彦監督)のゲスト俳優の佑は東京での初日舞台あいさつを終えて、その日のうちに湯布院入り。同映画は直木賞作家、白石一文の同名小説を原作に、かつて愛し合ったいとこ同士(柄本佑、瀧内公美)が女の結婚を前に、もう一度、セックスに耽溺する5日間を描く。手厳しい湯布院の映画ファンにも好評で、シンポジウムでも絶賛の声が聞かれた。