“アイアムノア”は誰なのか 外敵王者ジェイク・リーの首を狙うノア戦士の熱い想い

ノアの“柱”たちが非常事態に立ち上がった。

2011年のALL TOGETHERで棚橋弘至(右)諏訪魔(中)とドロップキックを放つノア代表・潮崎豪【写真:柴田惣一】
2011年のALL TOGETHERで棚橋弘至(右)諏訪魔(中)とドロップキックを放つノア代表・潮崎豪【写真:柴田惣一】

毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.142】

 ノアの“柱”たちが非常事態に立ち上がった。

 若きエース・清宮海斗が、全日本プロレスから乗り込んできたジェイク・リーにGHCヘビー級王座を奪われ、中嶋勝彦が奪回に失敗。「いつまでも、ここにはいない」と公言するジェイクに「ノアの舵取りは俺に任せろ」と胸を張られている。以前からノアを応援してきたファンにしてみれば、切歯扼腕(せっしやくわん)そのもの。悔しさが募っているはず。

 そこで、声を上げたのが丸藤正道だった。全日本プロレスからノアの立ち上げに参加。ジュニアで活躍後にヘビー級に転身。GHCのタイトルを総なめにするなど、文字通りノアを支えてきた。

 プロレス界に限らずその人脈は幅広く、さまざまな業界とパイプをつないでいる。ノアが団体存続の危機に陥った2018年暮れには、リデットエンターテインメント(LIDET)との提携を実現させた。

 現在はGLEATを運営するLIDETの鈴木裕之代表は、当時「1年間、お預かりして丸藤さんにお返しする」と明かしていた。「丸藤さんに」お返しするというのだから、丸藤の人望の厚さが見て取れる。

 この間に、今後のノアの道を模索した丸藤は、将来を見据えサイバーエージェント・グループ入りしたDDTの高木三四郎大社長と接触。用意周到の上、20年1月にはノアの合流が発表された。CyberFightのノアとして再出発することになったが、ノアの存続のために丸藤の果たした役割は大きかった。

 GHCヘビー級王座には4回、君臨しているが、35代王者として21年に戴冠して以来、遠ざかっている。タイトル戦線の最前線からは一歩、退いているが、ノアの顔としての存在感はいまだ大きい。熱心なファンも多い。

 ジェイクにノアの至宝を奪われ「舵取り云々」と言われては、黙っていられない。「腐っても丸藤だ。お前が舵を取っている船に乗っていると船酔いしてしまう。俺が本当の『舵取り』を教えてやる」と挑戦の名乗り。5月4日、東京・両国国技館大会でのGHC挑戦となった。

 丸藤の挑戦表明をジェイクは「それなら船酔いに慣れてくれ。その船酔いは、心地よくなるはずだ。なぜなら、その船酔いに人が集まって、どんな船なのかなと気になって見に来るわけだ。そしたら、あっという間に虜だ。なぜ、俺がそこまで断言できるか。それは今、俺がノアの舵を取っているからだ」と受け止めている。

 GHC王者の貫禄を日に日に身に着けていくジェイクだが、GHCベルトへの愛着は、丸藤の方がはるかに大きい。丸藤のノア愛がジェイクから「ノアの舵」を取り戻してくれるはず。

 そしてもう一人「アイアムノア」とノアへの熱い想いを訴える男がいる。潮崎豪だ。

 ノアの二期生である潮崎。いったんは全日本プロレスに移籍したが、再入団。三沢光晴、小橋建太のノアのレジェンド2人を彷彿させるファイトスタイルで、丸藤と並ぶノアの顔となっている。

 昨年9月から欠場していたが、5・4両国決戦での復帰が決定した。早速「外敵にベルトが渡っている。俺がベルトを取り戻しにいかないといけない」と決意表明。愛する「ノアの中心に戻りたい」と拳を握りしめる。

 丸藤に潮崎。ノアの土台を支えてきた2人が“外敵王者”ジェイクのノド元に匕首(ひしゅ)を突きつけたが、ノア愛を訴えるのは2人だけではない。

「アイアムノア」「俺がノア」「ノアが好きだ」「ノアに人生かけているんだよ」など、各自の熱い思いでノア愛を叫ぶ緑の戦士たち。これだけ団体への愛を口にするのは、それだけ強い思い入れがあるのだろう。譲れないノア愛。

 新緑がまぶしい季節。一番の「アイアムノア」は一体誰なのか、その行方に注目だ。

次のページへ (2/2) 【写真】丸藤正道のノアと高木三四郎のDDTがCyberFighで合流
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