女性が20代でやっておくべきことは出産なの? ネット賛否 “今は仕事”の実情…医師の見解は

女性が「20代でやっておくべきこと」は何?――。ミーティングの場で、発信者の女性が20代女性からの質問に対して「出産」と答えたらミーティングの会場が激震したと報告するツイートが、反響を呼んでいる。ネット上では「正論でしかない」「アカンこと言いましたね」と賛否両論。若い時に子を産むことのメリット、高齢出産の注意点、20代は仕事を優先する生き方、経済的事情からの諦め……。さまざまな観点から議論を呼んでいる。出産は人生設計に大きく関わることだけに、多くの女性が悩むポイントだろう。よりよい社会実現のため、何が必要なのか。外科医・免疫学者・漢方医として活躍し、積極的なメディア発信を行っている新見正則医師に聞いた。

20代での出産を巡る議論が飛び交っている(写真はイメージ)【写真:写真AC】
20代での出産を巡る議論が飛び交っている(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「子育て費用を限りなくゼロにすること」 問われる社会の在り方 新見正則医師に聞いた

 女性が「20代でやっておくべきこと」は何?――。ミーティングの場で、発信者の女性が20代女性からの質問に対して「出産」と答えたらミーティングの会場が激震したと報告するツイートが、反響を呼んでいる。ネット上では「正論でしかない」「アカンこと言いましたね」と賛否両論。若い時に子を産むことのメリット、高齢出産の注意点、20代は仕事を優先する生き方、経済的事情からの諦め……。さまざまな観点から議論を呼んでいる。出産は人生設計に大きく関わることだけに、多くの女性が悩むポイントだろう。よりよい社会実現のため、何が必要なのか。外科医・免疫学者・漢方医として活躍し、積極的なメディア発信を行っている新見正則医師に聞いた。

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「子育ての20代を過ごし、30歳からの就職でもやっていけるような社会になるよう制度設計をし直してはどうでしょうか。女性の生き方にもっと選択肢を」

 新見医師はこう提言する。

 まず知りたいのは、女性の体の仕組みについてだ。生物学的な知見から、「卵巣は卵子の貯蔵庫ですが、新しく精子をつくる男性のこうがんとは異なって、貯蔵しかできません。20代から30歳までは卵子はあまり老化しませんが、どうしても経年劣化をしてしまいます。37歳ぐらいになると、疲れてきてしまい、妊娠をする能力が減っていってしまいます」と解説する。一方で、35~40歳の出産については「高齢出産は、障がい(ダウン症)を持って生まれる可能性が高くなることが指摘されています。母体のリスクは医療の進歩によってそこまで不安はありません」と話す。

 そのうえで、総合的な視野から、「例えば45歳で子どもを生むと、元気の盛りの10歳の時に、自分は55歳。子育ての体力はありますか? という課題が出てくると思います。20代のうちはお母さんの体力はたくさんあります。10代はまだ体ができていないので、20代は最良の選択肢。なるべく早く出産した方がいいと思います」との見解を示した。

 社会人になる20代は仕事が忙しかったり、習熟するための期間も必要で、“結婚より出産より、今は仕事”と考える女性も多いだろう。その選択は決して簡単ではない。

 ここで、新見医師は医学の最新技術を駆使した選択肢を提示する。それは、「卵子の凍結」という。「20代前半の卵子を、後のためにとっておくという意味で、卵子凍結の方法もあります。パートナーがいる場合は、受精卵の凍結保存。パートナーがいない、または、いても今後どうなるか分からない場合は、未受精卵の凍結保存です。ただ、お金はかかります。自由診療で初期費用や維持費などが必要です。年間5~10万円の維持費で、総額100万円ぐらいはかかるかもしれないですね」と説明する。卵子を凍結しても35歳以上だと着床が難しくなると一般的に言われており、よく考えての判断が求められるだろう。

「子どもを生むのはマイナスになっている社会」の現状に懸念

 今回のネット上の議論は、出産という人生の大きなライフステージの変化に関することだけに、年齢幅によってそれぞれの立場・経験から数多くの意見が寄せられている。「やっておくべき。というと引っかかるけど、でも20代で済ませておくと遥かに楽なのは当たり前のこと」「急に走りだす子供を追っかける。これが大変なんですよ、40代…」「20代でもキツかったです。ホントに体力持っていかれました笑」「ギリギリ20代で産んだけど、仕事との両立なんて無理無理」といった声が集まっている。

 新見医師は「子どもを生むのはマイナスになっている社会」の現状に懸念を示す。「子どもを生むとお金がかかります。不景気の世の中で夫の収入だけでやっていけるのか、不安は多いです。どんどん高くなる学費・教育費を考えると、怖くて作れない、そう考えてしまうのではないでしょうか。夫の育児参加、育休・時短勤務など働きやすい企業側の環境づくりが大事です。それに加えて、子どもを生んだ後は、子育て費用を限りなくゼロにすること。税制度も含めて社会制度を変えていかなければなりません」と強く訴える。

 人生100年時代。長期的な視野での人生設計において、64歳の新見医師が強調するのは、選択肢を増やすという提案だ。

「人生100年ともなると老後が長くなります。女性の場合は50歳ぐらいで閉経するとして、子どもを作ることができない期間の方が長くなっているのではないでしょうか。子どもが欲しい女性が、その願いを早くかなえられるよう、20代を出産・子育ての時間に充て、30代から就活をして働き始める。そんな選択肢があってもいいと思います。社会がそう変わっていかないと」。それには、日本の就職制度、社会制度、既成の価値観の抜本的な変革が必要だ。「『いい大学を出て、いい会社に入る、それが幸せな人生』。日本は、まだ僕ら世代にも残っている呪縛から抜け出せていないように思えます。性別関係なく、何か就職のスタートが遅れるとそこでダメといった空気をなくしたいですよね。学歴主義を捨てること、雇う側も雇われる側も“辞めやすくなる”ような雇用の流動性も必要です。既得権益にしがみつく人が多い日本社会ですが、若い人にも声を上げてもらい、変化していってほしいです」と話している。

□新見正則(にいみ・まさのり)1959年、京都府生まれ。85年、慶応大医学部卒業。98年、移植免疫学で英オックスフォード大医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2002年から帝京大医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。13年、イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。現在、新見正則医院院長。自由診療のクリニックで世界初の抗がんエビデンスを得た生薬フアイアを用いて、がん、難病・難症の治療を行っている。最新著作は『フローチャートコロナ後遺症漢方薬』。

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