大学准教授、フェラーリ名車に感じた運命 ドライブから生まれる発想「その投資はそれ以上になって…」

クルマ愛好家の大学准教授が、フェラーリの名車テスタロッサの“共同所有”に夢中だ。歴史的価値のあるクラシックカーや希少性の高いスーパーカーを指す「コレクタブルカー」を共同所有できる新たなサービスが反響を呼んでいる。オーナー権利を8人で分け合い、メンテンナンスや保管の手間はかからず、年間12日間自由に乗れて、売却時にはその金額も分配される。「いつかは」と思ってはいたが踏み出せずにいた憧れのカーライフを実現するサービスだ。スタートアップ企業「RENDEZ-VOUS(ランデヴー)」が手がけ、栄えある納車1号となるのが、1989年式の真っ赤なテスタロッサだ。経営学を研究し、学生企業家を世に送り出している大学准教授の40代男性オーナー。グローバルな華麗なる愛車遍歴、そして、画期的サービスに魅了されたワケとは。

「RENDEZ-VOUS」社の新サービスが話題に。89年式の真っ赤なテスタロッサが納車となった【写真:RENDEZ-VOUS提供】
「RENDEZ-VOUS」社の新サービスが話題に。89年式の真っ赤なテスタロッサが納車となった【写真:RENDEZ-VOUS提供】

「V12気筒エンジンに乗りたかった」 1989年式テスタロッサの権利を8人で分け合う新サービス

 クルマ愛好家の大学准教授が、フェラーリの名車テスタロッサの“共同所有”に夢中だ。歴史的価値のあるクラシックカーや希少性の高いスーパーカーを指す「コレクタブルカー」を共同所有できる新たなサービスが反響を呼んでいる。オーナー権利を8人で分け合い、メンテンナンスや保管の手間はかからず、年間12日間自由に乗れて、売却時にはその金額も分配される。「いつかは」と思ってはいたが踏み出せずにいた憧れのカーライフを実現するサービスだ。スタートアップ企業「RENDEZ-VOUS(ランデヴー)」が手がけ、栄えある納車1号となるのが、1989年式の真っ赤なテスタロッサだ。経営学を研究し、学生企業家を世に送り出している大学准教授の40代男性オーナー。グローバルな華麗なる愛車遍歴、そして、画期的サービスに魅了されたワケとは。(取材・文=吉原知也)

 とにかく、エンジンが大好き、生粋の内燃機マニアだ。原点は、小学6年のときに訪れたバイク屋だった。50CCのスクーターのピストンを初めて見て、店の人に思わず、聞いた。「これで走っているんですか?」。「そうだよ、すごいだろ」。この会話をきっかけに、エンジンに興味を持ち始めた。「どうしてこんなに小さなものがあんなに大きな力を出せるのか、感動と共に、自分もこんなものを作りたいと心から思いました」と振り返る。

 学生時代はバイクに傾倒。内燃機に関する本やバイクや車のチューニング雑誌を読み漁り、高校生の時には友人や知人のバイクを整備したり直すことが趣味になっていた。「フレームとエンジンだけが残されていた1972年式のCB50を再生したり、多くのスクーターのプーリーやキャブのセッティングで青春時代を過ごしました。学校に行かなかったような時期もありました。好きすぎて、いろいろな方々に多大なご迷惑をおかけしました。心から反省してます」と話す。

 自動車免許は20歳で取得。初めて買ったマイカーは、トヨタ・セラ。しかも、当時黎明期だったヤフーオークションで見つけた代物だった。「ガルウイングで扉が上に開くのに、エンジンは同社の小型車スターレットがベースというツッコミどころ満載のクルマです。トヨタで最大の意欲作、かつ失敗作と言われているのではないでしょうか(笑)」。20万円ぐらいで手に入れたという。

 大学卒業後に民間企業に就職してから研究者に転身した。企業に就職後は7年間を海外で過ごした。ここで、クルマの楽しさを知っていく。

「海外の行く先々でいろいろなクルマをレンタルしたんです。アイスランドでランクル、ドイツでメルセデス、イギリスでBMW、カリフォルニアでカマロのコンバーチブル。それに、ドイツのアウトバーンの経験は印象的で、ターボ車で時速250キロで走っていると、目に見えて燃料計がどんどん減るのが分かるんですよ。一方で、圧倒的な安定感。ドイツ車はこの速度域のためにしっかり作られていることを実感しました」。

 日本に帰国後は、「楽しく乗れるクルマを」と、マツダ・NBロードスターを愛車に。子どもが生まれてからも「FR(後輪駆動)、マニュアル車」を志向してBMW 320iを購入、「ECU(エンジン・コントロール・ユニット)や吸排気、内装やオーディオなど一通りは自分好みにいじった」。

 研究者になってから仕事が多忙で自動車に触れることができなかった時期もあった。しかし、「電気自動車の普及が急速に進む中で、自分の人生の中で、本当に乗りたいと思っていた車には後悔しないように乗るべきであろうと考え、自分の欲しいクルマに乗るようになりました」。現在の愛車は、メルセデス・ベンツのCLS450 4マティックと、ポルシェ992世代の911GTSのマニュアル仕様だ。「内燃機が好きだったので、『完全バランス』を信仰しており、現在はメルセデスの、恐らく最後の直列6気筒を積むクルマ、また水平対向6気筒の代名詞といえるだろうポルシェを持っています」。深いこだわりがある。

超高級フェラーリについて年間12日間の走行権が獲得できる【写真:RENDEZ-VOUS提供】
超高級フェラーリについて年間12日間の走行権が獲得できる【写真:RENDEZ-VOUS提供】

RENDEZ-VOUSのトップ・浅岡亮太CEOの行動力に感銘

 ここで、運命の出会いを果たす。今回の89年式フェラーリ・テスタロッサだ。

 180度V型12気筒エンジンを搭載。排気量は4943CCで、走行距離1万5875キロの一級品だ。今回の新サービスは、1台の車を最大8人で共同所有することが可能で、購入資金だけでなく、RENDEZ-VOUS社が維持管理を受け持つことで金銭面のハードルを下げられる。また、車両は一定期間で売却され、オーナー側には権利分の売却額が分配される。今回のテスタロッサの売却時期は来年2024年2月を予定。“価格高騰の続くコレクタブルカーをより多くの愛好家が楽しめるように”という理念を掲げている。

 男性オーナーは「V12を積むクルマは、最新式は大きすぎ、またクラシックカーはとてもメンテナンスができないだろうと半ばあきらめていました。そんな折に8分の1オーナーの情報がSNSから流れてきて、ほぼ反射神経で、これなら『夢がかなう』と購入を決意しました」。憧れに憧れたV12気筒エンジンだけに、「フェラーリやテスタロッサと言うか、V12気筒エンジンに乗りたかった、その代表とも言えるようなクルマであったことが購入の動機かなと思います。もちろん、テスタロッサは小学生時代にいろいろな本で読んでいたので、それで強烈な印象に残っていたのは事実です」。思いがほとばしる。

 それだけではない。貴重な1台を次の世代に残していくことにもつながる「共同所有」の新たな取り組み、その情熱に心を動かされた。RENDEZ-VOUSのトップ・浅岡亮太CEO(最高経営責任者)の行動力もそうだ。浅岡CEOは学生時代にカーメディアを創設し、新卒入社したDeNAでカーシェアリングサービスを運営。メルカリでは自動車事業部を率いた経験を持つ。生粋のクルマファンが独立して新規に立ち上げたのが、今回の8分の1オーナーサービスだ。男性オーナーは「これだけの情熱を持って行動している浅岡さんなのだから、信じようと思ったんです」と語る。

 晴れて、テスタロッサの所有者に。年間12日間をどう活用するのか、夢プランはあるのか。

「まず、1日や2日は、じっくり眺めてもいいのではないかなと思っています。きっと、予約しても天気の悪い日はあるでしょうから、そんな日はガレージで1日中、細部まで眺めてみたいなと思っています」。マニアならではの楽しみ方だろう。

 運転の際は「慈しむ」がテーマになるといい、「次世代につないでいかなければならない大切なクルマです。ただ、馬力・トルク・エンジンはすごいクルマですが、フレームなどはとてもきゃしゃで、芸術品ではあるのですが、現代のクルマのようには乗れないクルマだと理解しています。なので、残りの一部は、RENDEZ-VOUSの皆さんなどのアドバイスもいただきながら、無理のない範囲で、平日のほかのクルマのいない天気のいい日に、ゆったりとドライブできればと思っています」。心から満喫するつもりだ。

 金銭面では、8分の1オーナー権利で、車両購入・維持管理の総額は「342万5000円」。高いと見るか安いと見るか。そんなことより大事な、クルマからもたらされる人生の活力を重視している。

「私は仕事柄かなりクルマで移動しますので、CLSは4年足らずで7.5万キロも乗ってしまいました。911もそれなりに乗る予定です。つまり、私は、自分の起きている時間のかなりの時間をクルマで過ごします。クルマを運転する時間はスマートフォンからも解放され、ひたすら考え事をすることで、たくさんのアイデアが出てきます。私にとって貴重な時間なのです。過去を振り返れば、バイクに乗っていたとき時に『研究者になろう』、中東でクルマに乗っているときに『オックスフォードに学びに行こう』と思い付きました。人生の転機になる発想はドライブから生まれてきました」。

経営学博士としてさらなる情熱「私も100年残る知識を見つけ、世界に伝えられれば」

 そのうえで、「クルマは危険性もありますので、クルマの安全性は自分自身の身体生命に関わります。そう考えると、クルマに対する資金は、消費というか、投資かなと思っています。自分自身の心を解放して、仕事のパフォーマンスを上げる。クルマの時間で新たな発想を生み出すことで、その投資はそれ以上になって返ってくるのではないかと思っています。CLS(デザインがサメをもとにしているので、シャーク君と呼んでいます)と911(色が青いのでブルちゃんという名前になっています)は期待以上のリターンを生んでくれているので、テスタ君と命名したこのテスタロッサにはより多くを期待しています。つまり、この大きな投資に意味を見いだせるかは、きっとテスタ君に乗っている自分が何を考えて、何を発想して、それをどんなアウトプットにかかっているのかなと思っています」と熱く語る。

 テスタ君を新たな相棒に迎える中で、グローバルな視野を持つ経営学博士として、社会人として、ある思いが芽生えているという。

「会社や組織は、人類を前進させる手段であると考えています。先が見通せない社会で、会社や組織がより多くの人を幸せにしていくために必要なことは何か。これが出発点です。私自身、40代を過ごす中で、時を超えて世界に残る知識を残したい、そう強く思うようになりました。このテスタ君は30年以上生き残っていて、次の70年も生き残ってほしいし、残さなければならないと思っています。私も100年残る知識を見つけ、世界に伝えられれば」と力を込める。

 これから思い描くカーライフ。少なくとも、「マニュアル車」「内燃機車」「スポーツカー」の3要素は手元に置いておきたいという。最新技術の自動運転や電気自動車といった新しい革新にも積極的に触れていきたいそうで、「両方の技術を備えた日産アリアは興味深いです。私は乗ってみてそのクルマがいいかという感覚を重視していて、どのメーカーでもいいのですが、国産車に頑張ってほしいなと思っています。日本のエンジニアと話す機会もあるのですが、非常にいい技術を持っています。エンジニアの魂が込められたクルマに乗って、エンジニアが完成時に感じた心が震えるような思いを、私も共有したいです」。

 そして、最後にテスタロッサの意義深さだ。「テスタ君を、次世代につなげていきたいと思っています。また、この共同所有という枠組みがより広く普及することで、未来に残すべき芸術品のようなより多くの内燃機が、より適切にメンテナンスされ、何より多くの人に実際に乗ってもらう流れで出来上がってくることを心から期待しています。そのために、テスタ君は大切に乗らせていただき、自分の人生の大切な数ページにさせていただきたいと思っています」。この上ない喜びの物語をぜひ読んでみたい。

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