愛車セルシオはカスタム総額1000万円 “元祖”車系女性YouTuberみっちゃんとは何者なのか

トヨタの高級セダン「セルシオ」を16年間大事にし続け、こだわり抜いたカスタムで一躍有名になった女性がいる。みっちゃんだ。過去3度のオールペン(全塗装)&フルリメークは総額1000万円超。東京オートサロンにも出展し、車好きの間ではすっかり「みっちゃんセルシオ」として名物に。自身のYouTubeチャンネルでは、同じ女性カーオーナーとのコラボ企画などを通して、「自慢のクルマを披露する場を提供したい」と、盛り上げへのアツい思いを持っている。そんな先駆者YouTuberの愛車物語とは。

VIPカー界隈で話題を集めるみっちゃんセルシオはオーラを放っている【写真:ENCOUNT編集部】
VIPカー界隈で話題を集めるみっちゃんセルシオはオーラを放っている【写真:ENCOUNT編集部】

芸能プロに就職して4年間頑張って貯金して購入 「自慢のクルマを披露する場を提供したい」と盛り上げに尽力

 トヨタの高級セダン「セルシオ」を16年間大事にし続け、こだわり抜いたカスタムで一躍有名になった女性がいる。みっちゃんだ。過去3度のオールペン(全塗装)&フルリメークは総額1000万円超。東京オートサロンにも出展し、車好きの間ではすっかり「みっちゃんセルシオ」として名物に。自身のYouTubeチャンネルでは、同じ女性カーオーナーとのコラボ企画などを通して、「自慢のクルマを披露する場を提供したい」と、盛り上げへのアツい思いを持っている。そんな先駆者YouTuberの愛車物語とは。(取材・文=吉原知也)

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 今年1月に開催された東京オートサロン2023の会場で、ギャラリーの熱視線を集めていたのが、みっちゃんセルシオだ。2007年に手に入れた04年式のUCF31、いわゆる“31セルシオ後期”だ。

 今回、最新のフルカスタムがお披露目。「外装はかっこよく、内装は女性らしいキュートな空間」がテーマのスポーティーなスタイルで、次々と写真に収める来場者の姿が見られた。

 みっちゃんが“セルシオ愛”に目覚めたのは、大学生の時だ。「父がクラウンに乗っていて、子どもの頃からいいなと思っていました。大学の時に街中を走るセルシオを見て、“ひと目ぼれ”をしたんです。そこから、かっこいいなと思うようになり、自分で買えたらいいなと、将来を思い描くようになりました」。

 18歳で免許を取り、19歳で人生初のマイカーを買った。通学のため便利な軽自動車を選択した。その後、セルシオが欲しいと思うように。「車検まで3年間乗ろうと。次はお金を貯めてセルシオを、と考えました」。その後に、芸能プロダクションに就職し、4年間頑張って貯金をした。20代前半で、念願をかなえた。最初に手を入れたのは、パールホワイトで市販仕様そのままの車体。これが、みっちゃんセルシオの言わば“原型”だ。

 セルシオ購入前から『VIP STYLE』などの雑誌を愛読していて、ドレスアップには興味はあった。ただ、自分でそこまでガッツリやろうとは思っていなかったという。

「周囲に車好きの友達がいなくて、土日の洗車も家の前で1人でやっていました。セルシオを買ったこと自体に満足していました。簡単にできる範囲ではカスタムしようと思っていたので、せっかく自分の車を持てたのだから、ホイールと車高だけ少し調整しようかなと、ちょっとやり始めたんです」

 半年後にホイールを交換。ここが始まりだった。同じセルシオやアリスト、クラウンといった高級セダン好き仲間の集まりに参加するようになり、「仲間から刺激をもらって、どんどんハマりました」。ワンオフ(オーダーメード)の特注品にこだわるようになり、エアロ、フェンダーと次々にカスタムを施すようになった。

“カスタム遍歴”はオリジナリティーにあふれ、豪華そのもの。

 1度目のオールペンは、外装をオリジナルゴールド、内装をピンク×ブラウン。2度目のオールペンは、“レクサスの赤”と呼ばれるラディアントレッドコントラストレイヤリングの外装、内装はホワイト×ピンクに模様替え。真っ赤な車体で2017年の東京オートサロンに出展し、雑誌『VIP STYLE』の表紙を飾り、“VIPカー好き界隈”の人気者になった。

 そして今回が3度目。ルックスが一新された。「ボディーカラーはソニックチタニウムで、街中で色を探していて『これだ!』と思った色がたまたまレクサスでした。外観はイカつく、男性が乗っているようなイメージで、内装は女の子らしく。そんなコンセプトで、内装はグレー(ガンメタル)の色味に合う私の好きなピンク色にしました。ハンドルやドアの内側、センターコンソールは部分的にウッディーになっています。居心地がよくなるような内装を意識して、外は渋く、中は明るいといった印象になっていると思います。パッと見で、『内装もこだわっているんだな』と分かってもらえるように仕上げました」。

 それだけではない。「機能面では、インタークーラーやチタンマフラーを搭載して、スポーティーなスタイルをアピールしています」。こだわりは尽きない。これまでのカスタム総額は「塗装やパーツ類を含めて1000万円オーバーです」。ちなみに、セルシオ購入時の価格は「500~600万円」という。

 数々のカーイベントやコンテストに参加。その抜群のセンスやクールな仕上がりが評価され、表彰は50~60回を記録、ただ、けっして表彰されるためにカスタムを重ねているのではない。

「私の場合はひとことで言うと、自己満なんです。カスタムをされる方の中には、表彰台を目指して、勝つために4000万円、5000万円とお金をかけて、それでも念願かなわず、やめる方もいます。お金をかければいい、というものではないんです。私は『好きなこと、自分がやりたいこと』を大事にしていて、自己表現の一部、ファッションの一部としてカスタムに取り組んでいます。自分の好きな形を示して、それが多くの方に見てもらえて、もし評価していただくのであれば、よりうれしい。そう思いながら今までやってきました」。好きなものをとことん追求する、その無欲が、多くの人たちの心をつかんできたと言える。

 こんなエピソードも教えてくれた。

「以前に100系マークIIにも乗っていたことがあります。マークIIやセルシオでちょっとコンビニに寄った際に、『どうせ彼氏の車だろ』とつぶやくように言われることが多くて。私は好きで自分の車を自分で運転しているだけなのに。『これは私のクルマです!』とアピールしたい、そんな思いが芽生えるようになりました。とにかく、単純に車が好きで、趣味を追求してきただけなんですよ」。

みっちゃんはカスタム・車業界の盛り上げに使命感を持っている【写真:ENCOUNT編集部】
みっちゃんはカスタム・車業界の盛り上げに使命感を持っている【写真:ENCOUNT編集部】

「実は最近、アルファードを買いまして…」新たな“カスタム欲”も

 6年前に憧れの雑誌『VIP STYLE』表紙という目標を達成した。それを越えるような新たな目標について次に何をやろうと前向きに考えていた中で、「この業界を盛り上げたいという気持ちと、お世話になった方への恩返しができるように」と始めたのが、YouTubeだった。

 一般的に、セダン系高級車のカスタム文化を指す「VIPカー」をメインに、オールジャンルのカスタムカー・ドレスアップカーを、女性の視点で紹介していくYouTubeチャンネル「みっちゃんネル Cars Micchannel」を18年10月に立ち上げた。「女性の車系YouTuberは当時いなかったと思います」。新たな表現の場を見つけ出した。

 そこには、カスタム文化やカーライフ環境を取り巻く切実な事情が背景にある。

「VIPカーはどうしてもやんちゃなイメージが付きまとい、『マナーが悪い、イコール暴走族、運転が荒い』みたいな見られ方をしてしまいますが、そこを覆したいという気持ちをずっと持っていました。私が参加してきたイベントは、ごみを捨てたり、マナーが悪い人には注意をするような仲間ばかりです。純粋に車が好きでカスタムが好き。好きだからこそマナーもよくしているということを多くの人に知ってもらいたかったんです」

 それに、カー雑誌が少なくなってきている現状で、カーオーナーが自慢の愛車を披露する場の減少にも危機感を抱いていた。カスタム業界に元気をもたらしたい――。真摯(しんし)な思いも原動力だ。

「女性オーナーの方を取り上げるコーナーでは、女性同士が語り合う中で、共感の思いを紹介できているのかなと思っています。それに、男女関係なくクルマ好きは個性の強い方が多くて、その個性を表現できるのはやっぱりクルマなんですよ。カスタムに憧れて頑張ってきたのに披露する場がなくては寂しいので、『みっちゃんネルに出たい』と思ってもらえるようになれば。共有する場を提供したいです」と言葉に力を込める。

 多くの注目を集めるみっちゃんセルシオの今後が気になる。少し寂しいが、一種の区切りを付けるといい、「カスタムとしてはこれ以上いじるつもりはありません。完成形かな、と思っています。私自身はイベントには今後も遊びに行きますよ。私がYouTube撮影をしている時に、視聴者さんの車がチラッと見切れていると、視聴者さんが『自分の車が映った!』と大喜びされているようです(笑)。イベントでの交流をメインに活動していく予定です」。

 一方で、新たな“カスタム欲”が沸き出したというのだ。

「実は最近、アルファードを買いまして。少し何か手を加えたいなと思い始めています。少し車高を下げて乗りやすくして。そんな“街乗りカスタム”をしてみたい。今までのようにがっつりやるつもりはないのですが、これまでやったことのないジャンルの違ったカスタムは勉強になりますし、楽しみですね」。新たに生まれ変わったセンス抜群の“みっちゃんアルファード”を見ることができるかもしれない。

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