【週末は女子プロレス♯87】「打倒アイスリボン」が合言葉 女子高生レスラーとして一世風靡した千春が設立した新団体は年齢も性別も不問

1990年代後半に現役女子高生レスラーとして一世を風靡した千春が昨年末、スタッフとして携わっていたアイスリボンを退団。1月25日におこなわれた会見において新団体「hotシュシュ」(ほっとしゅしゅ)の旗揚げをアナウンスするとともに、4月12日に埼玉・蕨アイスリボン道場にてプレ旗揚げ戦を開催、5月の旗揚げを予定していると発表した。千春が代表を務めるこの団体には、全日本女子プロレスやNEOで活躍したタムラ様こと田村欣子とタニー・マウスがスーパーバイザーとして入閣。NEOでともに闘い、NEOで引退した3人が女子プロレスの枠にとどまらず、オールジェンダーで後進を育てていくという。ではなぜ、千春はここへきて団体を設立することにしたのだろうか。

タニー・マウスと千春と田村欣子(左から)【写真:hotシュシュ】
タニー・マウスと千春と田村欣子(左から)【写真:hotシュシュ】

新団体「hotシュシュ」は4月12日にプレ旗揚げ戦を開催

 1990年代後半に現役女子高生レスラーとして一世を風靡した千春が昨年末、スタッフとして携わっていたアイスリボンを退団。1月25日におこなわれた会見において新団体「hotシュシュ」(ほっとしゅしゅ)の旗揚げをアナウンスするとともに、4月12日に埼玉・蕨アイスリボン道場にてプレ旗揚げ戦を開催、5月の旗揚げを予定していると発表した。千春が代表を務めるこの団体には、全日本女子プロレスやNEOで活躍したタムラ様こと田村欣子とタニー・マウスがスーパーバイザーとして入閣。NEOでともに闘い、NEOで引退した3人が女子プロレスの枠にとどまらず、オールジェンダーで後進を育てていくという。ではなぜ、千春はここへきて団体を設立することにしたのだろうか。

「最初は退団して業界から去るつもりでいました。ただ、(アイスリボンを運営する)ネオプラスの佐藤肇社長から会社に残ってほしいと言われまして、約10年間、リングアナやコーチなど裏方でやってきたことを評価してくれたのかなと思ったんですね。それで、残るのなら昔から抱いていた夢、目標をダメ元で言ってみようと思って」

 それが、彼女が代表を務めるプロレス団体の構想だった。実は女子高生レスラーの頃から、いずれは団体を持ちたいと考えていたのだという。

「ダメ元で言ってみたら、『おもしろいじゃない』『やろうよ』と言ってもらえました。ただ、私はアイスリボンの別ブランドとかそういうのにはしたくないんですよ。そこも佐藤社長には認めていただいて、ネオプラス傘下での新団体を作ることに決めました」

 団体名は「hotシュシュ」。アイスに対してのホット、リボンに対してのシュシュとは、アイスリボンと対をなすような名称だ。

「何年か前のエイプリルフールのだまし合いから出てきたワードなんです。それが頭に残ってて、いいかなって。hotがアルファベットでシュシュをカタカナにしたのは画数がいいからです。いろいろ試してみて、このパターンの画数がよかったので(笑)」

 団体名からは女子プロ団体のように聞こえるものの、フランス語のシュシュには「素敵な」との意味合いが含まれているとのことで、「情熱的」かつ「セクシー」の意味を含むホットとの組み合わせで「hotシュシュ」になったのだ。

「女子プロが好きなので、最初はやっぱり女子プロを考えていました。でも、いまってオールジェンダーの時代じゃないですか。やる気さえあれば性別は問わないという方向性に変わっていきましたね。他団体で一度デビューして、なんらかの事情でやめた方もOKです。私の師匠である谷津嘉章選手が障がい者レスリング連盟を設立したので、そことも交流できたらと考えていますね」

 1期生となる選手の募集はすでにスタートしており、千春のスカウトからすでに練習生第1号が入団した。とはいえ、今後何人の応募が来るかはまったくの未知数であり、旗揚げまでの時間も限られている。一定のレベルに達しなければデビューさせない方針で、旗揚げに間に合わない可能性もあるのだ。

「そうなんですよ。そこは焦らせずにやっていこうと思ってます」

 選手の育成にあたるのは、アイスリボンのプロレスサークルで実績のある千春と、スーパーバイザーの田村とタニーだ。両者は94年に全女でデビュー、2010年末にNEOの解散とともに引退した。現役を退いてからは田村はアロマセラピスト、タニーは鍼灸師の仕事をしており、プロレスと直接関わることは一切なかったのだが、12年ぶりの現場復帰。2人は現在YouTubeチャンネル「田村様とタニー。」やTikTokなどで元女子プロレスラーならではの活動を展開しているが、団体側の立場になるとはまったく予想していなかった。打診されたとき、2人はどのように感じたのだろうか。

「団体に関わるとはホントに想像してませんでした。でも、千春に『手伝ってもらえませんか?』と言われたとき、5秒も考えずにいいよって返事したんですよ。それが自分でもビックリで(笑)」(タニー)

「私は10年後くらいだったらやってもいいかなって思ってたんです。小さい子どもがいるので、子育てが落ち着いたらプロレス団体に関わってもいいかなって。それがいま来たのでビックリしたんですけど、可愛い後輩の頼みですからね。千春は私が守るって勝手に決めてるのもあるので(笑)」

 心強い援軍を得た千春。田村&タニーには全女とNEOで培った経験を新人に注入してほしいと考えている。たとえば当たりの強さや一発の重さというプロレスの説得力。それに加え、新しいやり方も取り入れていくつもりでいる。その一環がYouTubeの活用。これを通じて、練習生が歩むデビューへの道を追っていこうというのだ。

「デビュー前から練習生の苦悩や頑張りを伝えようと思っています。やめたらやめたで物語はあるし、デビューを目指す子に思い入れを持ってもらったり感情移入してもらえたらなって。その成果を興行で実際に見てほしいと思いますね」(タニー)

 4月12日のプレ旗揚げ戦はhotシュシュのイントロダクションで、前夜祭的なものになるという。

「その日は私の誕生日でもあるのでパーティー的なものにしようかなと思っています。そこでいきなり新人をデビューさせようとは考えていません。試合は私にゆかりある選手を呼んでの2試合で、あとはトークショーとかで、まずはhotシュシュの世界観を伝えられたらなって思いますね」(千春)

3人が試合する可能性は?

 では、千春、田村、タニーが試合をする可能性はないのだろうか。

「まったく考えてないです(笑)。ただ、タムラ様は『誰もデビューできなかったら責任を取るしかない』という意味ありげなことは言ってましたね。それが何を意味するのかは分からないですけど…」(タニー)

「すでに練習は始めているんですが、おふたりとも全然動けるんですよ! 全然できるんですけど、人材が揃えばやっぱりスーパーバイザーに徹してほしいです。でもそれって状況次第ですよね。もしも誰もデビューできないとなったら、もしかしたら(試合を)お願いするかもしれないし(苦笑)」(千春)

「私たちが見本を見せないといけないじゃないですか。久しぶりに受け身を取ったら筋肉痛で(笑)。ただ、練習すると痩せますよ! 実際に痩せたし身体が引き締まった。旗揚げの頃にはもっと痩せてる。やつれてるかもしれないけど(笑)」(タニー)

 果たして、5月に予定されている旗揚げ戦では何人がデビューできるのか。たとえ間に合わない場合でも、hotシュシュの興行は開催される。

「所属選手がいない場合は他団体の選手に出ていただいたり、hotシュシュの自主興行的なものになるかもしれません。でもそこは焦らずにいきたいですね。やっぱり闘いを見せたいので、選手はちゃんと闘えるように(なるまでデビューさせない)。それでいて、興行はまったく新しいものをやっていきたいなと思っています。アイスリボンとの関係ですか? アイスリボンの選手がhotシュシュに上がることはないですし、打倒アイスリボンです! アイスリボンの年間収益を越えられるくらいになったら対抗戦とかやってもいいと思うんですけど、それまでは関わらないですし、まったくの別興行としてやっていくつもりです。アイスリボンのビッグマッチでhotシュシュが試合を提供する可能性はあるかもしれないですが、基本的には交流しないですね」(千春)

 交流が生まれるのは、アイスリボンと互角に近い勝負ができるようになってからか。そのときは“アイスリボンvs全女&NEOの遺伝子”という図式になるのだろうか。その場合、男子(hotシュシュ)vs女子(アイスリボン)というマッチメークも想定されるが、それはまだまだ気が早いだろう。まずは女子高生時代からの夢実現に動き始めた千春、それをサポートする田村&タニーの育成に注目したい。募集資格は「やる気と根性さえあれば年齢、身長、体重、国籍、性別問わず、オールジェンダー、スポーツ経験不問」。新団体でのプロレスを夢見る方、一度諦めるも諦めきれない方は問い合わせてみてはいかがだろうか。

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