愛車は幻の伊米合作スーパーカー 友人との約束守るオーナーの心意気「だからノーマルが少ない」

この車はイタリアと米国の共同制作のスーパーカーで“幻の車”だ。1974年式のデ・トマソ、パンテーラGTS。オーナーの神奈川県の沼上芳徳さんは、2010年に友人を通じて貴重な車を入手した。昨年4月善光寺の表参道で行われたイベントでは、“キング・オブ・スキー”荻原健司長野市長も絶賛した1台。そのあふれる魅力に迫った。

1974年式デ・トマソ、パンテーラGTS【写真:ENCOUNT編集部】
1974年式デ・トマソ、パンテーラGTS【写真:ENCOUNT編集部】

とにかくレアな車 「どこ行ってもまずいないから」

 この車はイタリアと米国の共同制作のスーパーカーで“幻の車”だ。1974年式のデ・トマソ、パンテーラGTS。オーナーの神奈川県の沼上芳徳さんは、2010年に友人を通じて貴重な車を入手した。昨年4月善光寺の表参道で行われたイベントでは、“キング・オブ・スキー”荻原健司長野市長も絶賛した1台。そのあふれる魅力に迫った。(取材・文=水沼一夫)

 パンテーラGTSはイタリアの車メーカー、デ・トマソのスーパーカーだ。エンジンは米国フォードのV8エンジンを載せており、「伊米合作スーパーカー」「伊米混血の車」などと言われている。

「販売はアメリカで、フォードがやったんですよね。フォードがデ・トマソに依頼して作ったような感じです。友達がアメリカから持ってきてショールームで車検取らないで10年間、そのまま飾っていたんですね。そのお店を閉じるというので車を売り出したから、じゃあ買うよって。もう全然動かなかったから全部直しました」

 価格は、「女房にばれるから」と口をつぐんだが、友人は当時800万円で売りに出したそうだ。沼上さんは引き換えに、自身の車も差し出した。「この前に乗っていたのが昭和39年の古いクラウン。それとスズキのアルトワークス。それを2台、自分の好きな値段で売んなよって渡して、これを買ったんです」

 同タイプの車は日本にある。「ただみんなオーバーフェンダー付けたりなんかして結構いたずらしている人が多いよね。僕はもう前のオーナーがそのまま乗ってくれというので、そのまま乗っているんですよ。それが約束なので。アメリカから持って来て、やっぱりそれなりの愛着あるみたいで」。パンテーラの後継のGT5が漫画「サーキットの狼」に登場。その影響もあり、オーバーフェンダーを付けたり、タイヤを太くするオーナーがいる。「だからノーマルが少ないんだよね」。友人との約束を実直に守り、ほとんどカスタムせずに乗り続けている。

 48年前の車とは思えない近未来的なデザインはどこに行っても目立つ。YouTubeやカーマニアの間も有名な1台だ。

「結構YouTubeで流れていますよ。知らない間に『あれ、俺の車だ』なんて(笑)。珍しいんだよね。名前は知っていても車を見たことないっていう人は結構いて」

 昨年4月に7年1回のご開帳に合わせて行われた善光寺のイベントでもひときわ目を引いた。招待車ではなかったが、車種を告げると、「ぜひお願いします」と参加を歓迎された。

「フェラーリとかランボルギーニとか20台以上並んでいたんですけど、僕のだけ74年型で古い。そしたら長野市の市長の荻原健司さんが『いや~僕初めて見ました』『感動しました』と言ってくれて、市長賞というのをもらったんです」

 実物で見られるのはめったにない幻の車で、「74はこの形しかない。どこ行ってもまずいないから。74年型のUS仕様と言ったら僕のしかないので」と胸を張った。

ETCのバーの下を通過…“開かないバー”のワケ

 実際の乗り心地は快適とは言えないという。むしろ苦労することのほうが多い。

「たまにETCが効かなかったりする。だからETCのバーの下をくぐってということが何度かありましたよ。入るときは開くんだけど、出るときは開かない」

 車高は1メートルほど。フォードGT40(車高が40インチ=101.6センチの意味)の後継として作られ、同じくらいの車高になっている。

「フロントガラスの傾斜があるから、どうしても電波が入り切らないで反射しちゃうのかな、なんて言われましたよね」。48年前にETCのことを考えて設計されていない。

 室内にはエンジン音が響き渡る。「本当に背中のところだから。女房とも2人で怒鳴って会話しています。音がうるさいですね」

 それでも、希少性は何ものにも代えがたい。車を通じて、友人の輪が広がり、イベントに一緒に行く機会も増えた。故障することもあるが、修理は米国から部品を取り寄せて自身で行う。車検も同じだ。車はシボレーコルベットC3、マツダAZ1、2004年式のトヨタアルファードなど計6台を所有。「6台もあったら人に頼んでたらいくらかかるか分からない」と笑った。

 湘南生まれで、桑田佳祐と同い歳。還暦を過ぎても、自分の趣味にエネルギッシュなまでに情熱を注ぐ姿はどこか似ているような気もする。

 運命的な巡り合わせで受け継いだパンテーラGTS。死ぬまで手放すつもりはない。「もう僕は車を買う気はないので。自分の好きな車は全部あるんで」と沼上さんは言い切った。

次のページへ (2/2) 【写真】パンテーラGTSの貴重な運転席、リアショット、タイヤ回り
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