【どうする家康】野村萬斎、舞への思い「野村萬斎でなければ演じられないシーンに」

野村萬斎が、今川義元役で出演するNHKの大河ドラマ『どうする家康』(8日スタート、日曜、午後8時)について取材に応じ、この日放送された出陣前の舞のシーンなど初回に込めた思いを語った。作品は徳川家康の生涯を描き、家康を松本潤が演じる。初回は人質の元康(家康)と接する義元の姿や桶狭間の戦いが描かれた。

今川義元を演じる野村萬斎【写真:(C)NHK】
今川義元を演じる野村萬斎【写真:(C)NHK】

家康役・松本潤の印象は「明るくてにこやかな人で、才能のある方」

 野村萬斎が、今川義元役で出演するNHKの大河ドラマ『どうする家康』(8日スタート、日曜午後8時)について取材に応じ、この日放送された出陣前の舞のシーンなど初回に込めた思いを語った。作品は徳川家康の生涯を描き、家康を松本潤が演じる。初回は人質の元康(家康)と接する義元の姿や桶狭間の戦いが描かれた。

 まずは桶狭間の戦いを前に、義元が軍の士気を高めるため、舞を披露したシーンについて。

「雅楽をもとに、私が日ごろ演じている能楽に引き寄せ、一つの謡(うたい)と舞にしました。どこか、呪術的にも見えるようなシーンになっているかと思います。士気を高めるための舞でもあるので、スケール感を出すことを意識しました。見る者に『我らには神が味方しているんだ』と感じさせるような、一つの理想郷を表現できたらいいなと。ただ、そういうシーンは大体せりふがなく、『舞を舞う』とだけあって役者にほぼ丸投げにされることが多いんです(笑)。時間をかけて撮りましたが、撮影も盛り上がり、監督たちも喜んでくれました。野村萬斎でなければ演じられないシーンになっていればと思います」

 役づくりで心掛けたことは「元康の父親代わりでもあるので器の大きさを見せること」と語ったが、舞のシーンに込めた思いから、もう一つうかがうことができる。力によらない理想的な国造りを目指す義元を表現する上で大事なことに感じる。

「姿泰然自若として信念を持つカリスマ。武力とは違うカリスマ性を見せないといけない」

 その上で舞のシーンについてあらためて言及した。

「今川義元が背負っている物は何かというのが見えるシーンになったらいいと思います。天と地をつなぐような神ではないですが、神になり代わるような何か大きな物を背負っている存在として見えたらいい」

 元康と義元の息子・今川氏真(うじざね=溝端淳平)の剣の試合で、元康が氏真を気遣い、手を抜いたことに対して、義元が元康を叱るシーンがあった。

「芸を相伝するときもそうなのですが、間違ったことを野放しにしていると芸に表れてしまうんです。ですから、たとえ我が子にとって不利であろうとも、間違ったことをそのままにせず、正そうという姿勢には共感できました。剣の試合で不正をするな、それは相手にとって最大の非礼であると、厳しいけれども人の道として説く。間違ったことがまかり通っていけば、そのまま曲がった道になるということを言っていたのだと思います」

 元康に対して義元の感情は父なのか師なのか。

「父子関係より師弟関係に重きがあるのかなと。そうでないと我が子にもあんなに厳しくできないと思います。国を治める人間として、嫡男の氏真をどう育てるか。氏真に今川の家を継がせたいけれど、まだ心もとないので、元康には、我が子を支えられるような存在になってほしい。それが、義元の願いだったのでしょう。残念ながら歴史的にはそうはならなかったというのがドラマチックですよね」

 義元は元康にとって父のような存在として描かれるようだが、松本とはどう撮影に臨んだのか。

「元康を導く役であることは確かです。松本さんは演出家としての才能も含めて、尊敬できる方。物語では、悲しいかな自分の息子には強くあたりつつ、義元は人質の元康の方に、きらめくものを見出している。そこが悲劇的なところですし、そういう意味では息子の氏真を演じる溝端淳平さんは、悲劇のヒーローになる。かわいそうなぐらいでした。松本さんは明るくてにこやかな人で、才能のある方。義元も同様に元康の隠れた才能を信じていますので、そこはやりやすかったなと思います」

 初回では義元が元康に黄金の甲冑(金陀美具足)を与えるシーンがあった。

「私のファーストシーンでした。戦場で目立たせるために着せていたことに、元康も後で気が付くのですよね。そういう意味では、義元は二枚舌と言えば二枚舌。試練を与え、それをかいくぐらせて、後々まで生き残れる人物に育てようとした、というのはいい解釈かもしれませんが(笑)。あとでオチがつくように、さもすごそうに紹介したことを覚えています」

 1話を見てもう退場かと思っている視聴者に向けてメッセージ。

「見てくださった方からすると『もう退場? 早い!』みたいな反応でしょうか(笑)。ただ私は、義元は元康に理念を授ける人物と捉えていました。その意味では、義元の死にざまよりも、彼が理想として掲げた『覇道は王道に及ばない』という理念にスポットが当たると良いなという思いでした。また、作品全体を通して戦を描くこと以上に、平和な国家にどう推移していくかにも注目していただきたいと思います。もちろん戦国物ですから、戦のシーンや群雄割拠するそれぞれのキャラクターが立たないといけません。でも、家康が幕府を作っていくプロセスを見ながら、ああ、江戸幕府の樹立の裏には今川義元の教えがあったのだなと、思い出してもらえるとうれしいです。いよいよ開府というときに、もう1回ぐらい出てくるといいですね(笑)」

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