【週末は女子プロレス♯82】ミュージシャンで大阪・港区の広報大使…デルフィンの女子プロ団体でデビューした34歳の素顔

大阪プロレスや沖縄プロレスといったローカルプロレスを立ち上げ、大阪府和泉市議でもあるスペル・デルフィンが、大阪を拠点に女子プロレスを世界に発信する。当初、デルフィンプロデュースの2Point5女子プロレスはYouTubeをプラットフォームにスタートしたが、新人選手たちの熱い要望から有観客での大会が実現。11月6日に大阪・大阪沖縄会館にて旗揚げ戦を開催した。第2弾は、4月2日の昼を予定しているとのことだ。では、なぜいま、ジュニアのレジェンドであるデルフィンが女子プロをプロデュースしたのだろうか。

スペル・デルフィン(右)が大阪を拠点に女子プロレスを世界に発信する【写真:ENCOUNT編集部】
スペル・デルフィン(右)が大阪を拠点に女子プロレスを世界に発信する【写真:ENCOUNT編集部】

11月6日に旗揚げ戦

 大阪プロレスや沖縄プロレスといったローカルプロレスを立ち上げ、大阪府和泉市議でもあるスペル・デルフィンが、大阪を拠点に女子プロレスを世界に発信する。当初、デルフィンプロデュースの2Point5女子プロレスはYouTubeをプラットフォームにスタートしたが、新人選手たちの熱い要望から有観客での大会が実現。11月6日に大阪・大阪沖縄会館にて旗揚げ戦を開催した。第2弾は、4月2日の昼を予定しているとのことだ。では、なぜいま、ジュニアのレジェンドであるデルフィンが女子プロをプロデュースしたのだろうか。

「まず第一に、女子プロレスがいまきているというのがありますね。やっぱり女子がやると華やかだし楽しそうじゃないですか。それをYouTubeでやったらおもしろいかなと思ったんですね。言ってみれば、女の子がやる戦隊もののような闘いをやりたかったんです」

 デルフィンがイメージしたのは、プロレスのスタイルを借りた映像作品。動画だからできる演出や特殊効果を取り入れようと考えたのだ。そういえば大阪プロレス旗揚げ当時、「映画のようなプロレスをやりたい」と、場内スクリーンでの映像を試合と絡めていたのがデルフィンだった。そこに大阪らしい笑いを織り交ぜ独自の世界を構築していったのだ。これによりキャラクター性をいっそう高めたのが、くいしんぼう仮面、えべっさんをはじめ、ミラクルマンや対戦相手の怪獣レスラー。そして今回、女子に特化したYouTube内でのプロレスというわけである。

「いま、プロレスを知らない子どもが多いじゃないですか。とくに女の子なんかまったく興味ないと思うんですよ。それじゃあプロレス界の未来はない。だったらYouTubeで流して、これはなんなんだろうと思ってほしいんですよね。いまの子ってテレビじゃなくてYouTubeなんですよ」

 大阪プロ時代はテレビ放送を重視し、地上波でのレギュラー放送も手に入れた。しかし現在、映像としてきっかけになるのはテレビ以上にYouTubeが主流だ。

「このアイデアを松竹芸能に話したらメチャメチャおもしろい企画やないですかと。そこから話が進んで発表会見を松竹芸能の本社でおこない、オーディションを角座でやりました。基本、やる気があればどんな女の子でもOKなんです。ほかの仕事を持っている子ばかりですよ。むしろセカンドキャリアとして考えてもらっていい。たとえば、37歳で三児のママという子(りえまる)もおるんです。彼女は子育ての最中ですけど、このまま老け込んでいいのかと悩んでたし、表に出て活躍したいとずっと思ってたらしくて、いいきっかけということで(プロレスを)始めたんですね。そういう子たちが輝ける場所を提供してあげたいなと。ゆくゆくはプロレスラーを子どもたち、女の子たちが憧れる職業のひとつにしていきたい、それくらいの気持ちでやってるんですよ」

 主婦のほか、タレント、ミュージシャン、お笑い芸人、書道家ら、プロレスとは無縁のレスラー志望者が続々と集まった。そこに懸けたのは、「もしかしたらここで私は輝けるのかもしれない」との希望である。そんな可能性のある場所を見つけた練習生たち。するとしだいに、画面のみならず観客の前でも試合をしたいとの欲求が芽生えてきた。これはデルフィンにとって、ある意味で想定外かつうれしい誤算でもあった。観客の反応をダイレクトに感じられることがプロレスラーの醍醐味でもあるからだ。

「選手全員に聞いたらお客さんの前でもやりたいと。だったらよけいに下手なものは見せられませんからね。それで一年かけて仕上げていった感じです」

 そして迎えた11月の旗揚げ戦は大成功をおさめた。やはり観客の反応が直接伝わるリングだと選手たちのやりがいもアップするし、反省を次へとつなげられる。今後は道頓堀プロレスでの提供試合で経験を積ませ、YouTubeでの動画も継続して配信していく。バーチャルとリアルを大阪から発信し、日本全国、そして世界に2Point5女子を広めていくつもりだ。

フライング・ペンギンがリングに上がる理由を語る【写真:ENCOUNT編集部】
フライング・ペンギンがリングに上がる理由を語る【写真:ENCOUNT編集部】

覆面レスラーのフライング・ペンギンがリングに上がる理由

 さまざまな背景から集まってきた選手のなかに、フライング・ペンギンという覆面レスラーがいる。その正体は、「越野SYOKO.」。大阪市港区出身のミュージシャンで現在34歳、港区の広報大使もつとめているという。

「小さい頃から身体が大きい方で、『プロレスしいや』とまわりからよく言われてたんですよ。そのことがうっすら頭の中にあったんですよね」

 ドラゴンゲートのドラゴン・ダイヤの入場テーマ曲を書いたことで、プロレスとは縁があった。「ビッグマッチでは生歌で入場してもらったり。そこでプロレスってかっこいいなと思うようになりました」

 しかし、本業の歌でなかなか結果が出なかった。「もう34歳やし、これからは食べていける音楽に切り替えていかないとあかんなとか、いろいろ考えました。夢をあきらめかけてたんですよ。そんな頃に、『プロレスせえへんの?』って声をかけられたんです」。彼女をスカウトしたのは、先に入門していたカゲロウだった。

「私がたまたまカゲロウのバーに行って、『唄えるんだったら(プロレス)やりたいけど』と言うたら、カゲロウがデルフィンさんにそれを話してくれたんですね。そしたら全然歌わせてくれるみたいやでと。初めてデルフィンさんにお会いしたのが今年の4月。そこから交通事故にあってしまい練習に行けなくなってしまったんですけど、6月くらいに再開して11月6日に(フライング・ペンギンとして)デビューできました」

 覆面レスラー、リングネームとも彼女の希望によるもので、そこには彼女の思いが込められている。

「私の曲に『空翔ぶペンギン』というのがありまして、これって私の人生の歌なんです。飛べないと言われて育ったペンギン。ペンギンという鳥は飛ぶ必要がないんやけど、実は大海原を羽ばたくことができるんです。そんなペンギンと自分を被せて書きました。ステージではキラキラできる、エンターテインメントでキラキラできるんだっていうふうに。それをデルフィンさんに話して、空飛ぶペンギンのフライング・ペンギンでいいんじゃないかと。マスクを被ったのも私からの熱望です。子どもたちの人気者、ヒーローになりたくて。私って母子家庭の一人っ子で、街の人がものすごくかわいがってくれたからギリギリ悪いことせんと育ったんですよ。それで街の人たちになにか恩返しがしたいと思って広報大使もしてるんですけど、プロレスをキッズたち憧れの場所にできたらなって思いますね。そういうレスラーになりたいのでマスクを被りました。ふだんは歌手の越野SYOKO.やけど、ギター弾いて心が熱くなるとトップロープ上がってフライング・ペンギンに変身するのだ!みたいなイメージで(笑)」

 フライング・ペンギンのデビュー戦にもなった旗揚げ戦では、レスラーになる前から彼女を応援する人たちも駆けつけた。これがいいビジネスモデルにもなっていると、デルフィンは言う。

「ファンや知り合いの人がスポンサーになってくれるんですよ。ここから応援団ができるんです。それでひとりのキャラクターが成り立つ。YouTubeでバズれば、(プロレスの)営業しなくてもいいですしね。YouTubeが自然と営業になるんです。みんなが知ってくれてるわけだから、昔みたいな営業をせずに東京でも仙台でも試合ができるようになると思いますね」

 現在、「総監督」の花園桃花以外の所属7選手はすべて生え抜き。それだけにまったく新しい女子プロレスが誕生したと言っていいだろう。輝きたい女の子が、プロレスを通じて輝き羽ばたく。フライング・ペンギンは2Point5女子の象徴となるか。今後の成長と飛躍に期待したい。

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