愛車が20万→500万超に高騰 色あせない魅力にぞっこん 趣味で自宅に整備工場も建設

趣味が高じると、ここまでやるものなのか。栃木県の鈴木昇さん(73)は車8台、バイク4台を保有する。子どもの頃から機械好きで、おもちゃを分解しては父親にしかられていた。大人になると、車にのめり込み、趣味で整備士の資格も取得。自宅に“整備工場”まで作り上げてしまった。愛車は1973年式のサニークーペGX5というこれまた貴重な1台だ。旧車ブームで500万円以上に高騰しているものの、「一生乗るつもり」と話すワケとは?

1973年式のサニークーペGX5【写真:ENCOUNT編集部】
1973年式のサニークーペGX5【写真:ENCOUNT編集部】

価格が25倍に高騰も「俺は売らないね」とキッパリ

 趣味が高じると、ここまでやるものなのか。栃木県の鈴木昇さん(73)は車8台、バイク4台を保有する。子どもの頃から機械好きで、おもちゃを分解しては父親にしかられていた。大人になると、車にのめり込み、趣味で整備士の資格も取得。自宅に“整備工場”まで作り上げてしまった。愛車は1973年式のサニークーペGX5というこれまた貴重な1台だ。旧車ブームで500万円以上に高騰しているものの、「一生乗るつもり」と話すワケとは?(取材・文=水沼一夫)

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 サニークーペGX5を中古で購入したのは1986年。価格は「20万ぐらい」とリーズナブルだった。先にオープンカーのダットサン・フェアレディを保有していた鈴木さんは、「とにかくツインキャブ、スポーツタイプが好きだった。それと後ろに流れるようなファストバック。スポーツタイプに憧れていたので購入したってことですね」と語る。

 レースでも有名な車で、「レースでみんなつぶしちゃっている」ため、現役で公道を走っている台数はほとんどないという。「追っかけられたり、見せてくださいってよく言われるもの」と、声をかけられることもしばしばある。

 約50年前の車だが、現在は旧車ブームの影響もあり、価格が高騰している。「今もう高くなっちゃっていますよ。ネットで見たら、525万で出ていたね」と25倍超にはね上がっているというから驚きだ。それでも、鈴木さんは「俺は売らないね」と明確に意思表示する。

「車は俺の彼女というかレディーだね」と愛着があることが理由だが、ほかにもある。

「自分でほら、車を持ち上げるリフトもあるし、板金から塗装から何でもやるんですよ。車検まで全て。道具は何でもあるんで」

 自宅に構えるのは30坪はあろうかという手製の“整備工場”。車2台が縦に楽々と入るスペースで、数えきれない工具がある。

「元々は車好きなので、自分で整備できるところが欲しいなと思ったんですよ。洗車場を作って、そこへリフトをつないだ。なんでもある。最高だよね。タイヤ交換だって、スタッドレス交換だってうちでできる」

 30歳のとき、整備士の資格も取得したが、完全に趣味の一環。もともとは農業に従事し、その後は建築の営業に転身した。

「整備士の資格は関係ないよ。だって俺は整備士の免許持つ前からエンジン全部分解してたから。オープンカーをバラバラにしてピストンからリングから、カムシャフト、何でもやっていた。資格は勤めるところが違うだけ。趣味はね、好きでやっている人のほうが免許証を持っていなくったって知っている。俺はそう思うよ」

 子どもの頃から修理が大好きだった。

「機械関係と電気関係が好きだったんですよ。小学校6年生のとき、卒業文集の『将来の希望』に『電気と機械関係の仕事をしたい』と書いてあんだから。60年前だね。よくおもちゃを買ってきてもらって、次の日に分解しておやじに怒られたよ」

 整備工場は自慢の城だ。ボール盤、旋盤、油圧プレス、溶接機、エアコンプレッサー、排ガス測定器……。「商売できるだけの倉庫がある。ホイールバランサーとかタイヤチェンジャーとか一通り全部そろってますね。だからみんな自分でやっちゃうんですね」

鈴木昇さんは筋金入りの車好きだ【写真:ENCOUNT編集部】
鈴木昇さんは筋金入りの車好きだ【写真:ENCOUNT編集部】

車の魅力は自分でいじれること 親族の車も担当

 趣味をこれほどまでに追求できるのは幸せだという。

「プロじゃないから。だから俺みたいに素人でそこまでやる人ってあんまりいないんじゃないの。自宅に修理工場ですからね」と笑う。

 アマチュア無線も趣味で、こちらは庭になんと鉄塔(クランクアップタワー)を作ってしまった。全高20メートルで、台風のときには伸縮できる。「アマチュア無線を始めて60年になりますけど、みんなびっくりする。初めて聞きましたって言われるんですよ。この鉄塔なんか、買ったら大変だよ。俺の知っている人なんかアンテナだけで650万だよ」

 旧車を乗り続けるのも、修理する楽しみがあるからにほからならない。流行の電気自動車(EV)には目もくれない。

「俺自分でいじれるでしょ。今の車は俺いじれないから。コンピュータ式じゃね。だから、そういった意味では魅力ないよね。それこそ修理屋に頼んで故障したらまた10万だ20万だ金払って直してもらわなくちゃいけない。自分じゃ金かけないでいじれるから魅力あるよね」

 定年後、これといった趣味が見つからずに漠然と日々を過ごす高齢者もいる。

 鈴木さんは真逆だ。孫だけで9人。ひ孫が4人。自身の車だけでなく、親族のあらゆる車の整備を依頼されている。

「うちはひ孫までいるんだもん。全部取り替えてやるんだもん。家で預かって取り替えてやって、またしまってさ。やんなっちゃう」と苦笑した。

 サニークーペGX5とダットサン・フェアレディの貴重な2台。そのときが来たら愛車を譲ることも考えているが、まだ検討中という。

「孫も乗りたいって言うんですけど、車をいじれないと乗れない。せがれ(長男)が車を整備できるので、2台ともせがれ夫婦が、一番妥当かな」と頭を巡らせている。

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