ポケモンカードの高騰なぜ? 「転売とは違う」マネーゲーム起こす“ポケカ投資”とは

人気ゲーム「ポケットモンスター」の3年ぶりとなるシリーズ完全新作「スカーレット・バイオレット」が18日に全世界同時発売された。テレビアニメシリーズも、放送25年目にして主人公のサトシが初の世界チャンピオンに輝くなど、大きな盛り上がりを見せている。そんななか、ゲーム、アニメに続き人気が過熱しているのが「ポケモンカードゲーム」だ。価格が高騰し、大量買いや投資行為も盛んとなっているが、なぜここまでのブームとなっているのだろうか。

異例の高騰が続いているポケモンカード【写真:ENCOUNT編集部】
異例の高騰が続いているポケモンカード【写真:ENCOUNT編集部】

個人サインの書かれたカードが転売され、カードショップが1598万円で販売

 人気ゲーム「ポケットモンスター」の3年ぶりとなるシリーズ完全新作「スカーレット・バイオレット」が18日に全世界同時発売された。テレビアニメシリーズも、放送25年目にして主人公のサトシが初の世界チャンピオンに輝くなど、大きな盛り上がりを見せている。そんななか、ゲーム、アニメに続き人気が過熱しているのが「ポケモンカードゲーム」だ。価格が高騰し、大量買いや投資行為も盛んとなっているが、なぜここまでのブームとなっているのだろうか。(取材・文=佐藤佑輔)

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「とうとう入荷してしまいました…!」「世界で1枚のカードでございます 是非当店に御来店頂き、ご覧下さいませ」。13日、東京・秋葉原のカードショップがイラストレーター・さいとうなおき氏のサイン入りカードの入荷をツイッターで報告。「1598万円」という驚きの値段がつけられた「リーリエ」のカードには、サインとともに宛名と日付がつづられており、個人のために書かれたサインカードであることがうかがえる。

 心無い個人サインの転売行為に、ネット上では「これはダメだろ」「失礼すぎる」と批判の声が殺到。さいとうなおき氏も自身のツイッターで「サインカード転売の件、ご本人のお名前入れの対策を徹底してたんですが予想外でした」と困惑しつつ、「自分の所有物ですから、僕がアレコレ言う権利ないですし、買う買わないもお店の判断ですけど、単純に僕がしばらく怖くて人前に出にくくなって困ります」と複雑な胸中を明かしている。

 ポケモンカードをめぐっては、今年7月に海外の有名コレクターが希少価値が極めて高い「ポケモンイラストレーター」のカードを約7億円で購入し、個人売買の最高額としてギネスに認定された。先月28日には、新作カードの発売抽選をめぐる真偽不明の情報がネット上に流れ、大阪・梅田の家電量販店で客同士や店員を巻き込んだトラブルが発生するなど、空前のブームとなっている。

 なぜここまでポケモンカードの価値が高騰しているのか。トレーディングカードなどのフリマアプリ「magi」やポケモンカード専門店「magipoke」を運営する株式会社ジラフの事業担当者は、「ここまでの高騰は2020年秋頃から何度か繰り返し起きているブーム的な現象では」と説明する。

「年に一度発売されるレアなカードが入った『ハイクラスパック』というものがあって、2020年のハイクラスパック『シャイニースターV』から人気に火がつき、21年にはポケモンカード25周年で記念商品が複数販売された。ちょうどそれまで高騰していた遊戯王カードの人気が落ち着いてきたタイミングと重なり、コロナ禍も相まってYouTubeでの開封動画もブームになりました。さまざまな要素が絡み合って人気が一気に集中したような格好です」

一部のレアカードだけでなく、流通している新品カードが投資対象として高騰

 トレーディングカードをめぐっては、以前から希少価値の高い一部のレアカードに数十万~数百万円の値がつくことなどはあったが、発売前の抽選に人が殺到したり、現在発売中のカードにまで高価な値がつくという事態は異例だ。いったい何が起こっているのだろうか。

「希少価値の高い中古のカードと、今現在流通している新品カードの高騰では事情がやや異なります。カードの価格も需要と供給の市場原理で成り立っており、古いカードは主としてその希少性で高値がついています。一方、流通している新しいカードは生産数、供給量に対して需要がものすごく大きく、買い手が多いがゆえに価値が高まっている。1箱約5000円のボックスに、運がよければ1枚10万円のカードが入っていることもあります。ニンテンドースイッチが出始めたころと同じような状況です」

 とはいえ、価格をつり上げているのは純粋にカードで遊ぶプレイヤーだけではない。規格外の高騰を受け、ポケモンカードを株や仮想通貨のような資産として保有し、価格変動によって売り買いする「ポケカ投資」を目的とした新規参入者が増えているという。

「よく転売ヤーと一緒くたにされますが、物を買占めて価格をつり上げる転売とは違い、まさに株や投資のように二次流通の相場変動を楽しむのがポケカ投資。500円で買ったカードが600円になればうれしいし、400円になったら悔しい。しかもそれが仮想通貨のような実体のないものではなく、分かりやすく慣れ親しんだカードゲームならハマるのもうなずけます。さらに、購入した金額より高い売値にならないと手放したくないという投資家心理が働き、その心理の連鎖が市場全体に広がって、底値がどんどん更新される。投資目的の新規参入者は古いカードの価値が分からず、また状態のいいものの出回りが少なく取り扱っている店舗も少ないため、綺麗なカードを手に入れることが異常に難しいので、発売から4~5年がたったカードはあまり価格が動かない。これが二極化の理由でもあります。今回話題となったカード『エクバリーリエ』は、最近のプロモカードの中でも人気キャラクターを採用したトップレアカードであり、ポケカブームの象徴的なみんなにとって憧れのカードでもあります」

 転売と異なるとはいえ、大人が大量購入しては、本当に欲しい子どもたちの手に行き届かないのではという批判もあるが、これは一概にそうとは言い切れないという。

「大量に箱買いしたうち、開封した後のカードのほとんどは、コレクション需要の少ない一般カード。そういったカードは二束三文でカードショップに出回り、非常に安価で入手できる。子どもが対戦で使うようなカードは、ある意味新品を買うよりも安い値段で手に入る状況にあります。ただ、カードショップのない地域では子どもが欲しいカードを買えなかったり、何よりパックを開けるときのワクワク感を味わえないという弊害はある。販売店側も小学生以下のみに限定したり、完全抽選販売にするなど、さまざまな取り組みは行っています」

箱買いせざるを得ない現状…販売方法の設計には見直しの余地も

 品薄を引き起こす原因には、カードの販売方法にもあるという。新品はカードが5~10枚程度入った200~500円前後のパックを買う「パック買い」と、そのパックが10個セットになった約5000円のボックスを買う「箱買い」の2つの購入方法があるが、高額の当たりカードを手に入れるためには箱買いせざるを得ないのが現状だ。

「一部例外はありますが、当たりカードは1箱あたり1~2枚と枚数が決まっています。バラしたパックの状態では、見る人がサーチすれば当たりカードの有無が分かってしまったり、当たりが出たところで買い止められれば残りは当たりが入っていないという事情もあって、箱買い一択となっているのが現状なんです。結局、1箱5000円でも1枚10万円の当たりカードが入っている可能性があれば、お金に余裕がある人はその1枚を求めて5箱10箱と買い、品薄が起こる。1箱あたりに当たりカードが1~2枚という、そこの設計は見直す必要があるかもしれません」

 今後、ポケモンカードの高騰はどこまで続いていくのだろうか。

「メーカーも生産量を増やしており、徐々にボックスの転売価格は上がりづらくなってはいます。また、一度販売が終了したカードが再販されると価格が暴落するという可能性もあります。ただ、メーカー視点で大切なのは需要と供給の適切なバランスで、供給が多ければ多いほどいいというものでもない。誰でもどこでも手に入れられる状態では人気も価値もなくなり、実際にポケモンカードでも量産しすぎたシリーズは人気がなく、どこの販売店でも売れ残っています。今はあまりにも過熱しすぎていますが、適切な需要と供給のバランスを整えていくことが大事なのかなと思います」

 投資や購入方法、コロナ禍といったさまざまな要因が複雑に絡まり合って起こっているポケモンカード空前の高騰。これも、大人も子どもも夢中にさせる「ポケモン」というコンテンツの力ゆえかもしれない。

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