どう喝や暴行も…太陽光発電の説明会で何が起きた? 告発団体が明かした問題の背景

山梨県北杜市で開催された営農型太陽光発電の住民説明会で、事業者側の男性が住民をどう喝する動画が拡散され、波紋が広がっている。太陽光パネル事業は何が問題で、なぜ事業者による一方的な設置が横行しているのか。動画を公開した「太陽光パネルの乱立から里山を守る北杜連絡会」の坂由花代表に経緯を聞いた。

太陽光パネルの下で作物を栽培する営農型太陽光発電(写真はイメージ)【写真:写真AC】
太陽光パネルの下で作物を栽培する営農型太陽光発電(写真はイメージ)【写真:写真AC】

営農型太陽光発電の住民説明会で、事業者側の男性が住民をどう喝する動画が拡散

 山梨県北杜市で開催された営農型太陽光発電の住民説明会で、事業者側の男性が住民をどう喝する動画が拡散され、波紋が広がっている。太陽光パネル事業は何が問題で、なぜ事業者による一方的な設置が横行しているのか。動画を公開した「太陽光パネルの乱立から里山を守る北杜連絡会」の坂由花代表に経緯を聞いた。

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「黙ってろ野次馬め!」「俺の話を邪魔するな!」「帰れー!」。SNSなどで拡散した動画では、事業者代表の男性が住民をどう喝、手を振り上げて威嚇したり、止めに入った男性に暴力を振るう様子が映されている。動画は今年5月と7月、それぞれ住民に向けた太陽光パネル設置の説明会で撮影されたもの。7月の説明会では北杜市の市議会議員が男性に腕をつかまれ負傷、警察を呼ぶ騒ぎとなった。全国で太陽光パネル設置をめぐる問題が噴出していることから、「太陽光パネルの乱立から里山を守る北杜連絡会」では今回、意を決して動画の公開に至ったという。

 なぜ事業者側が住民をどう喝する事態となったのか。太陽光発電には固定価格買取制度があり、事業者向けの場合、発電開始から20年間固定価格で売電収入を得ることが可能だ。一方で、国の設備認定を取得後、早期に発電を開始しなければ買取期間が月単位で短縮される「運転開始期限」が設定されており、また、2022年の再エネ特措法の改正によって、運転開始期限とは別に一定期間経過後に設備認定が失効するという制度も加わった。

「パネル等の設備コストを売電収入で回収し、余剰分がもうけとなる仕組みで、事業者にとっては投資物件として転売されることも多い。今回の事業者が認定を取得したのは3年前で固定価格は18円。既に買取期間の短縮に該当しているはずで、一刻も早く設置しないと、想定している売電収入が目減りするため、焦りもあってあのような説明会となってしまったのでしょう」

 八ケ岳と南アルプスの山々の間に位置する自然豊かな北杜市で太陽光開発が始まったのは、FIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)が施行された2012年頃のこと。当時は規制もなく、北杜市が日照時間日本一の市町村として有名になったこともあって、全国から太陽光事業者が押し寄せ無秩序な開発が進行した。当初は初期投資も高く大手の事業者が中心だったものの、廉価な中国産パネル等が増え、設備の価格が下落するにつれその他大勢の玉石混交の事業者が参入。現在では市内各所に太陽光パネルが乱立している。再生可能エネルギーとしてクリーンなイメージのある太陽光発電だが、自然災害のリスクや景観・住環境の破壊、パネル火災などのリスクもあり、設置を懸念する住民の声も多い。

「今回の事業者の説明はあまりにもひどいものですが、実際には資料の郵送や回覧のみなど、より簡単な説明で市の許可が下りたり、住民側への明確な説明がないまま開発が進んでいるのが実情です。目先の利益のために無責任でずさんな事業者が参入しており、それらの多くは最低限の強度計算や地盤調査もなく、災害警戒地域等の危険な場所でもパネル設置が許可され続けてきました。20年後、固定買取期間が終了すると売電価格は7円前後となり、これでは赤字になるだけと言われています。そんなパネルを誰が維持管理するでしょうか。権利売却が繰り返され、責任の所在が曖昧なまま放置されるのではないでしょうか」

 ENCOUNTでは今回問題となった事業所に電話とメールで事実関係を問い合わせたが、期日までに回答はなかった。センセーショナルな動画の裏に横たわる、太陽光事業をめぐる複雑な問題。今回の動画公開が太陽光パネル乱立に歯止めをかけるきっかけとなるか。

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