銭湯アイドル・湯島ちょこ氏が示す銭湯復活の羅針盤 キーワードは「世代交代」

これから銭湯はどうなってしまうのか。日本を代表する文化の一つも、最近は衰退の一途をたどっている。しかし、漫画家で銭湯アイドルの湯島ちょこ氏に悲壮感はない。その根拠とは……。

銭湯文化の存続を訴えた湯島ちょこ氏【撮影:hawk】
銭湯文化の存続を訴えた湯島ちょこ氏【撮影:hawk】

日本で唯一の銭湯アイドルが語る銭湯業界の課題と光

 これから銭湯はどうなってしまうのか。日本を代表する文化の一つも、最近は衰退の一途をたどっている。しかし、漫画家で銭湯アイドルの湯島ちょこ氏に悲壮感はない。その根拠とは……。

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 庶民文化の象徴だった銭湯が、苦境にあえいでいる。全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会によると、組合に加盟している銭湯の数は1968年の1万7999軒をピークに減少。昨年4月の調べでは、2351軒、今年は2204軒と下降線を描く。組合が解散してしまった県は岩手、秋田、宮城、山形など8県。沖縄も解散の手続きをしていないだけで、事実上、活動をしていない状況だ。

 そんな中、日本唯一の銭湯アイドルとして知られる湯島氏が取材に応じた。

 銭湯アイドルとは銭湯に精通するアイドルのこと。「銭湯に来るお客さんを増やすことを目的」に活動しており、湯島氏は年間300軒の銭湯に通い、ファンを招いてのオフ会「オフろう会」やイベントも定期開催している。また、銭湯の浴室の壁に絵を描く銭湯絵師としての顔を持ち、銭湯文化の盛り上げに一役買っている。

 湯島氏が銭湯の魅力にはまったのは7年前。ある体験がきっかけだった。

「人間関係に疲れてしまった時期があって、学校にも家にも居場所がなかった。『人生を辞めちゃおうか』っていう時に、偶然電車の中から銭湯の煙突が見えて知らない駅で途中下車をして生まれて初めて銭湯に行った。その時に、知らないおばあちゃんとかがいて、会ったばかりの私に戦争の話や最愛の旦那さんが亡くなった話をしてくれた。暗い話を笑いながらされていて。自分もつらいけど、生きていたらいつか笑い話に変えられるかもしれないと、すごく元気をもらったんです」

 当時は、自分が銭湯アイドルになるとは夢にも思わなかった。しかし、銭湯の魅力に取りつかれ、いつしか生活の中心になった。

 そんな銭湯業界を代表するインフルエンサーは、業界の現状をどう捉えているのか。湯島氏は銭湯の復活には「世代交代」がポイントになると指摘した。

「だいぶ世代交代してきて若い方がオーナーになって動いている銭湯もある。一方で、世代交代できていない銭湯もあるし、家の事情だから続けられないのも仕方ない。辞めたい人と、オーナーを担える人を引き付けるシステムができれば」

 湯島氏によれば、銭湯界は二極化が進行。成功しているのは、伝統ある銭湯とリニューアルされた銭湯で、前者は多くの銭湯ファンから重宝され、後者は新しさと利用しやすさの向上で集客を維持しているという。

 一方、課題はどちらにも当てはまらない“中間層”の銭湯の行方だ。リニューアルできないまま老朽化の波に逆らえず、後進もなかなか見つからない。湯島氏は組織的なサポートの必要性を説き「現状に対して動きが遅れている実感がある」と警鐘を鳴らした。

 同じ“お風呂”でも、温泉業界は活況を呈している。著名な温泉地には新しい温泉宿が続々と建設され、熱海のように一時期は低迷した老舗温泉地も復活した。

 全浴連関係者は温泉と比較して、銭湯の置かれた危機をこう解説した。

「温泉とだいぶ違うのは、銭湯は廃業はあるんですけど、新規はほとんどない。現状を減らさずに、ということが重要になっている。いったん廃業したところをリニューアルされることはある。でも、ゼロからというのは何年に1回しかない」

 だからこそ、銭湯が生き残っていくためには、世代交代、そしてリニューアルが欠かせなくなるというわけだ。湯島氏は「どの銭湯もいろんな工夫をしている。銭湯の接客も変わってきた。昔は待っていればお客さんが来るのが普通だった。愛想が悪いというか、ご年配の経営者の方がいて。今は感じのいい挨拶をするところが多い。当たり前のことを当たり前にやるようになった。掃除も頑張っている。この業界は『一に掃除、二に掃除、三に掃除』といわれている」と時代の変化を挙げつつ、若き経営者らによる改革の成果を強調した。

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