「HY」仲宗根泉、娘との親子ゲンカは「つかみ合い」 両親から受け継いだ“子育て論”

通算15枚目となるアルバム「Kafuu」をリリースした4人組バンド「HY」。その中で仲宗根泉が書いたラブソング「スイッチ」は彼女の娘との対話から生まれた曲だという。これまで代表曲「366日」をはじめ、数多くのラブソングを手掛けてきた彼女が新たな視点で描いた新曲について聞いた。

インタビューに応じた「HY」の仲宗根泉【写真:舛元清香】
インタビューに応じた「HY」の仲宗根泉【写真:舛元清香】

アニメ好きの娘のバーチャルな恋を描いた「スイッチ」

 通算15枚目となるアルバム「Kafuu」をリリースした4人組バンド「HY」。その中で仲宗根泉が書いたラブソング「スイッチ」は彼女の娘との対話から生まれた曲だという。これまで代表曲「366日」をはじめ、数多くのラブソングを手掛けてきた彼女が新たな視点で描いた新曲について聞いた。(取材・文=福嶋剛)

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――アルバムの1曲目「スイッチ」はとてもユニークな視点のラブソングだと感じました。バーチャルな人物に対する恋心といった今の時代が反映されていて、これは小学生のお嬢さんの日常がモチーフになっているそうですね。

「バラードに関してはいつもアイデアに悩むんですよ(笑)。1人のことについて深く書いて、また次に同じ人のことを深く書けるかと言ったら私はそういうタイプの人間じゃないので。それで今回はどうしようかなって思って娘に『誰か好きな人いるの?』って尋ねたら『いるよ』って(笑)。『誰??』って聞くと『好きなアニメのキャラクター』って。『おお、そっちか!』みたいな」

――私たち親世代もアイドルが好きとか、主人公のヒロインに恋していたとかいつの時代も変わらないものがありますね。

「そうですよね。同級生のお友達も同じような感覚なんですよ。『私の推しがもうなんか死んじゃってさ』って悲しんでいて。いろんな人がアニメの主人公やアイドルさん、ゲームの世界の人を好きになって、でも相手から『私を好きにならないで』って拒否されることなんてないですよね。かといって『じゃあ付き合いましょうか?』みたいなこともない」

――自分の気持ちを相手に伝えることもできなければ会うこともできない。

「そう。だから究極のカップルなんです。でも考えてみたらそれって究極の片思いですよね? だから二次元の世界に限った話じゃなくて本人からしてもバーチャルとかリアルとか関係のない1つの立派な恋ですからね。そんな娘や同じような気持ちを持った人たちのやり場のない気持ちをぶつけられるような歌を作ってあげられたらなと思って書いたのが『スイッチ』なんです」

――歌詞にはSNSといった今まであまり使ってこなかった若者言葉が入っています。

「個人的にはインスタとかSNSという言葉を歌詞の中に入れることに最初はすごく抵抗がありました。やっぱり手紙とか電話っていう言葉の方がしっくりくるんですよ。でも昔で言うとポケベルっていう言葉が歌詞に入っていても私たちは平気で歌っていたように若者言葉ってその時代を映していて、同じ世代の若者にとってはなんの抵抗感もないんですよ。この曲は娘やその世代にも聴いてもらいたいと思って書いた曲なので、あえてそこは伝わりやすい言葉を使いたいと思ったんです」

「HY」新里英之(左)と仲宗根泉【写真:舛元清香】
「HY」新里英之(左)と仲宗根泉【写真:舛元清香】

――ところで仲宗根さんは生まれ育った沖縄で子育てをされています。利便性を考えると都会で暮らす人も多い中であえて地元の沖縄を拠点に選んだ理由とは?

「やっぱり自然があることとそこに暮らす人に尽きます。海や山といったありのままの自然の中で生きることを学べる、いかに幼少期に自然にたくさん触れるかっていうのは私自身もそうやって親に育ててもらったので、大切にしているところなんです。子どもの頃は、週末になるとお父さんがキャンプに連れて行ってくれて自然を見て聞いて感じなさいみたいなタイプの人だったんです。だから自分がそこから離れて暮らすって思ったことも一度もないですし、子どもが生まれたときも都会で暮らすという選択肢はありませんでした」

――現在、お嬢さんは小学校4年生。

「はい。でも精神年齢はだいぶ上で、15歳ぐらい(笑)」

――もしかしたら母親に似ているんじゃないんですか?

「アハハ(笑)。よく友達親子とかって言うじゃないですか? うちは小学4年生が2人いるって感じです。だから私と娘がケンカするときは親子ゲンカじゃなくて同級生同士のつかみ合いのケンカですよ(笑)。でも、ケンカが終わったら握手して仲直りするみたいに、私たちも外国のスポーツ選手がやるようなポーズを決めて、引きずらないようにして、最後は必ず『ママはあなたのこと大好き』って言うようにしています。だからうちはケンカしたまま寝ないっていうのがルールですね。これは私の両親から受け継いだことなんです」

――お父さまは厳しかったとお聞きしましたが?

「父は音楽に対して厳しかったですね。それ以外はすごくユーモアがある人でいつも誰かを笑わすことが大好きでした」

――お父さまは音楽をやってらっしゃったんですね?

「音楽は趣味でやっていたんですが家には機材がいっぱいあって、小さい頃から『お前やってみろ』って感じで。だから音楽だけはすっごく厳しかったんですけど、それ以外は正反対でとても優しい人でした。大酒飲みで、みんなでいつもワッハッハって笑っていて、私の友達と友達になるぐらい垣根がなかったんです。父の生前、私が友達と飲んでいたら『なんで誘ってくれなかったんだ』ってしょんぼりするような(笑)。娘に対する愛情の深さは母親の影響ですね。いつも『愛してるよ』ってちゃんと言葉にしてハグしてくれたのは母親でした。それを娘にもしてあげるようにしています」

――「スイッチ」を聴いたお嬢さんの感想は?

「自分のことを書いた曲だと知っているからめっちゃ家で流してますよ。『私の気持ちがよく書かれているよね?』ですって(笑)」

□HY(エイチワイ)新里英之(Vo&Gt)、名嘉俊(Dr)、許田信介(Ba)、仲宗根泉(Key&Vo)2000年結成。沖縄県うるま市出身。グループ名の「HY」は、彼らの地元・東屋慶名の地名が由来。2008年、映画×ドラマ「赤い糸」の主題歌に「366日」が抜擢され配信で450万ダウンロードを誇る大ヒットに。現在も沖縄に在住し、インディーズにて全国・世界へと音楽を発信している。22年9月、通算15枚目のオリジナルアルバム「Kafuu」リリース。

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