復帰に向け日々大けがと闘う“熱き男”大谷晋二郎 「プロレスの教科書」の新たなページを皆が待っている

“熱き男”大谷晋二郎が、復活を目指して懸命に歩を進めている。ZERO1の4・10東京・両国国技館大会で「頸髄損傷」の重傷を負った大谷。救急搬送された後、しばらく病状が伝えられず、心配されていたが、8月中旬になってリハビリを開始した。

気迫みなぎる大谷晋二郎を待っている【写真:柴田惣一】
気迫みなぎる大谷晋二郎を待っている【写真:柴田惣一】

毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.116】

“熱き男”大谷晋二郎が、復活を目指して懸命に歩を進めている。

 ZERO1の4・10東京・両国国技館大会で「頸髄損傷」の重傷を負った大谷。救急搬送された後、しばらく病状が伝えられず、心配されていたが、8月中旬になってリハビリを開始した。

 都内のリハビリ専門病院に転院した大谷は「熱いプロレスファンの皆様、そしてプロレス業界の皆様。温かい励ましの言葉、そしてたくさんのご支援、本当に心の底からありがとうございます。日々リハビリに励んでいます。これを乗り越えれば、大好きなプロレスの世界に帰れるのだ、と信じて頑張っています。やっぱりプロレスは、僕に力を与えてくれるもの。プロレスは最高です!」とコメントを発表した。

 LINEでお見舞いのメッセージを送っていたが、なかなか既読にもならずヤキモキしていたところ、10月9日「柴田さん、ご心配をおかけして申し訳ありません!! 今やれることを毎日気合で頑張っています!!」と返信が届いた。

 いかにも大谷らしい言葉に一安心したものの、まだまだ首から下のマヒが続いているという。看護師ら周囲の方々の協力を得て、アゴなどを使って一文字一文字、入力してくれたのだ。大変だっただろう。時間がかかっただろう。その光景を思い浮かべると、涙で文字がにじんだ。

 気のせいか、手に持ったスマホが、熱くなった。大谷の熱い気持ちがスマホを通して伝わったに違いない。

 プロレス関係の知人にも、律義に返信があったという。「お見舞いメッセージ、ありがとうございます!! 必ず元気になります!!」いかにも礼儀正しい大谷らしい。

 そんな中、大谷がSNSで発信した。「僕は缶コーヒーが好きだ! そんな缶コーヒーを 先生から許可をいただき 半年振りに口にした…」と喜びを爆発させた。

 半年ぶりに口にした缶コーヒーは「美味い… 恐ろしく美味い」という。「美味さが感動に変わる」と大谷らしさを爆発させた。

「病院の外の世界にはこのような感動がたくさんあるに違いない 1本の缶コーヒーがそう教えてくれた」と続けた。病院の外の世界を想う大谷。その心中を想像すると、またまた涙を禁じ得なかった。

 この世は地獄だと説く仏教もある。その中でも美味しいものを食べたり、楽しく笑ったり、そのほんの一瞬が極楽だとも。地獄も極楽も、あの世ではなくこの世にあるのだという。

「旱天の慈雨(かんてんのじう)」という言葉がある。カラカラにひび割れて乾いた大地だからこそ、降り注ぐ一滴の雨水が甘露だと感じられるというのだ。大谷の缶コーヒーは、まさに旱天の慈雨だったのではないだろうか。

 私たちが日常的に当然のように口にしている缶コーヒーも、大谷にしてみればそれは当たり前ではないのだ。忘れていた健康への感謝をも思い起こさせてくれた。

 衝撃の4・10決戦前に、大谷とはYouTube番組でご一緒し、収録後にコロナ対策を取った上で杯を交わした。

「こんなこともしたい、あんなこともしたい」という将来の希望を、瞳を輝かせて熱く語る大谷は、まるで少年のようだった。

 この厳しい状況でも決してあきらめず、前を向く大谷。時間はかかるかも知れないが、いつかきっと実現させてほしい、いや実現するであろうと信じている。

「プロレスの教科書」の新たなページは?

 頑張れ! 大谷晋二郎!

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