伝説の寝台特急「北斗星」を愛車で徹底再現 本物車両の“聖地巡礼”は「最良のひと時」

多くの鉄道ファンに親しまれ、2015年夏に引退した寝台特急「北斗星」への熱い思いを胸に、同じカラーリングを施すなど“北斗星仕様”にカスタムした愛車に乗り続けるオーナーがいる。北海道十勝在住の会社員、坂田稔さん(54)だ。初代のトヨタ・ハイエースから、いすゞ・ファーゴに乗り継ぎ、カーイベントやSNSでも話題を集める愛車について聞いた。

坂田稔さんの北斗星ファーゴと本物の北斗星車両が並んだ貴重な1枚だ【写真:本人提供】
坂田稔さんの北斗星ファーゴと本物の北斗星車両が並んだ貴重な1枚だ【写真:本人提供】

初代ハイエースは走行距離52万キロで無念の廃車に…ファーゴは95年式

 多くの鉄道ファンに親しまれ、2015年夏に引退した寝台特急「北斗星」への熱い思いを胸に、同じカラーリングを施すなど“北斗星仕様”にカスタムした愛車に乗り続けるオーナーがいる。北海道十勝在住の会社員、坂田稔さん(54)だ。初代のトヨタ・ハイエースから、いすゞ・ファーゴに乗り継ぎ、カーイベントやSNSでも話題を集める愛車について聞いた。

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 青色で覆われた車体に、3本の金ラインが貫かれている。フロントとリアには「北斗星」のロゴマークが。列車の“顔”のようなデザインに仕上げている。車内は食堂車をモチーフにしており、赤いカーテンなどを取り付け、雰囲気を再現している。坂田さんのファーゴだ。

 物心がついたころから「大きくなったら電車の運転手になる」と言って、自転車に寝台特急のマークを付けて「ガタンゴトン」と遊んでいた。プラレールに始まり鉄道模型も収集。本物の寝台特急にもたくさん乗った。学生時代にはワゴン車とブルートレインを合体させたクルマのスケッチを描いていた。一方で、夢だった「北斗星に乗ること」はかなわず、一度も乗ることなく廃止になってしまった。大きな心残りになった。

 九州から北海道に移住した坂田さん一家。2004年、ボロボロのハイエースバンがやって来た。「平成7年(1995年)式のロングバン、グレードはDX。走行距離は27万キロ。ボディーにはあちこちにガムテープが貼ってあり、剥がすと、見るも無残に朽ち果てた車体があらわになりました」という状態。最初はパテで修理して白く塗装するも、2週間もたつと元のさびの色が浮き出てきた。目立なくするように青いペンキを選び、4人の子どもたちと一緒にはけで塗り、青いハイエースに。そして、ある日、バックの際に車体後部を壁にぶつけてしまう。部品代金を見て「それなら北斗星が作れるかも」と思い立ったのが、北斗星ハイエース誕生のきっかけだという。

 腐っては作り、腐っては改装工事して、北斗星ハイエースはどんどん進化。「思い返せば、いつもどこかの部分を改造していたように思います」。車検は通っていたが、ある日峠道で後ろからガンガンと音がするので見てみると、スペアタイヤの取り付け枠が根本から腐って大きな穴が。よく見るとフレームの部分も穴だらけで、向こう側が見えていた。燃料タンクも傾いていた。「北斗星ハイエースの死期を悟りました」。走行距離52万キロ。17年3月に廃車になってしまった。

前方から見た坂田稔さんの”北斗星仕様”いすゞ・ファーゴ【写真:本人提供】
前方から見た坂田稔さんの”北斗星仕様”いすゞ・ファーゴ【写真:本人提供】

国鉄青20号で“本物カラー”に 「僕にとっての聖地巡礼です」

 ラストランを行った後の北斗星ハイエースを、行きつけの中古車屋で引き取ってもらった時に偶然に店先にあったのが、95年式のいすゞ・ファーゴだった。17年4月に手に入れた。「葛藤はありました。すでに北斗星は廃止されていて、『いまさら北斗星を作ってなんになるんだ』と思いました」。ここでも偶然が重なった。白いファーゴがやってきた日、仕事場の出入りのペンキ業者から「国鉄青20号」の色が入手できることを聞いた。この国鉄青20号は寝台特急の北斗星に使用されていた色だ。半年後にペンキを購入。3日かけてはけでファーゴを塗装し、子どもの油粘土でシミュレーションを重ねて自身で板金加工した結果、北斗星ファーゴが誕生に至った。

 ここから、坂田さんの情熱が加速する。「子どもたちも大きくなって手を離れたので、思い切って北斗星に近づけることがコンセプトになって、内装の前部分を食堂車のグランシャリオに、後ろを解放B寝台仕様に仕上げました」。さらに、「函館方面の北斗市にある『北斗星スクエア』という宿泊施設で、本物の北斗星車両が保存してあって、そこに北斗星ファーゴで赴くことが、僕にとっての聖地巡礼です。スタッフの方に許可をいただいて北斗星車両と一緒に写真を撮った時が、最良のひと時になりました」としみじみ。

 北斗星ファーゴは、普段の生活の中で日常的に乗っている。「仕事に、買い物に。たまにふらっと旅に出る時には、北斗星ファーゴで車内泊したりします」。カーイベントや鉄道イベントでは人気者で、「いろいろな方が声をかけてくださいます。特に『ピー』という汽笛の音を聞くと、皆さん子どものように喜んでくださいます。この汽笛は、子どもが学校で使っていた笛を加工して作ったものなんですよ」。整備には腐心しているが、これからも大事に乗っていくつもりだという。

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