漫画家の脳内を“のぞき見”するフジ異色恋愛バラエティー 仕掛け人が語る狙いとは?

若手漫画家の男女6人が疑似恋愛シミュレーションを体験し、それをもとに漫画を執筆する一風変わった恋愛バラエティー「恋愛トキワ荘」(フジテレビ/毎週月曜、深夜24時25分※放送時間変更の場合あり/関東ローカル)がにわかに注目を集めている。これまでの恋愛番組とは一線を画した内容となっているがこの新たな試みはどこから生まれたのだろうか。編成担当のフジテレビ・安永英樹氏に話を聞いた。

MCを務めるシソンヌ・長谷川忍(左)と森川葵【写真:(C)フジテレビ】
MCを務めるシソンヌ・長谷川忍(左)と森川葵【写真:(C)フジテレビ】

番組内容に手応え「今はとにかく認知」

 若手漫画家の男女6人が疑似恋愛シミュレーションを体験し、それをもとに漫画を執筆する一風変わった恋愛バラエティー「恋愛トキワ荘」(フジテレビ/毎週月曜、深夜24時25分※放送時間変更の場合あり/関東ローカル)がにわかに注目を集めている。これまでの恋愛番組とは一線を画した内容となっているがこの新たな試みはどこから生まれたのだろうか。編成担当のフジテレビ・安永英樹氏に話を聞いた。(取材・文=中村彰洋)

 企画の発端は「恋愛と漫画でなにか面白いことができないか」というシンプルなもの。そこから、「恋愛漫画をやるんだったら、漫画家に恋愛させたら面白いんじゃないか」という結論に至った。

「リアリティーショーではなく『恋愛漫画を書く漫画家の頭の中ってどうなってるんだろう?』というところです。実際にそのシチュエーションを体験させて、どのように脳内変換されるのかを楽しむ恋愛バラエティーというのがスタートでしたね。漫画家って脚本も原作も作れる、カメラ割りも考えられる、なおかつ監督にもなれて、画力もあって、文才もあるという“ハイパーマルチプレイヤー”。そんな人たちの脳内を覗き見たら面白いと思いました。そこに恋愛というバイアスをかけて心が動いたらどういう脳内変換が起こるんだろうというのを見たくなりました」

 全13回の放送となるが単発のスペシャルではないことにも理由があった。「感情のグラデーションが出てくるので、それはワンショットじゃ表現できないんです。13回に分けることによって6人の関係性にも濃淡が生まれるんです」と説明する。

 男女6人の漫画家がさまざまな恋愛シチュエーションに挑戦していくこととなるが、1番苦労したのが出演する漫画家を探すことだった。「めちゃくちゃ苦労しました」と振り返る。

「企画自体を面白がってはくれるんですけど、やっぱり出演を躊躇される方が大半でした。また、物理的に執筆を優先したいから時間を作れない方も多かったですね。あとはなるべく事務所に所属していない、アシスタントをやっていないという若手を探しました」

 MCを務めるのは「シソンヌ」長谷川忍と女優の森川葵。恋愛好きなイメージが強い長谷川だが、「長谷川さんしかいない」とすぐに決まったという。また、森川についても「女性の本音の部分をきちんと語ってくれます」と絶賛。「お笑いへのアンテナが広い」と起用の理由を明かす。

 演者としては“素人”の漫画家6人。序盤は緊張する部分もあったというが撮影を通じて徐々に素の部分が出てくるようになったという。「自然にやってもらうために会話をとにかくする。個人個人連絡をきちんと取って、メンタルケアも含めてやりやすい環境作りを意識しています」と秘訣を明かす。

 当初の想像とは異なる展開に進むことも多々あるようだ。「6人の感情が揺さぶられて動いているのですが、それが漫画には違った形で反映されているんですよね。やっていること、思っていること、書いてあることが全部違っていて僕らもわけが分からなくなり驚きました」と予想外の展開に笑顔を見せる。「漫画家の人の脳内ってやっぱり不思議で面白いです」と番組の魅力でもあるとした。

異色恋愛バラエティーを手掛けたフジテレビ・安永英樹氏【写真:ENCOUNT編集部】
異色恋愛バラエティーを手掛けたフジテレビ・安永英樹氏【写真:ENCOUNT編集部】

“テレビ離れ”に直面も「ただ面白いものを作るしかない」

 同番組の1番のポイントはリアルな漫画と連動しているという点だろう。体験したシチュエーションをベースに毎週、番組終了後にFODやsmartnewsで漫画配信される。さらに1クール通じて、1番反響を得た漫画家には「連載」というご褒美が与えられる。

「漫画のテーマは恋愛漫画であればあとは自由です。ゴールは誰に告白するのか、付き合うのか、付き合わないのかという部分。ハッピーエンドでもバッドエンドでもいいので、相手とのすれ違いだったりを描いてほしいと伝えています」

 実際に6人で撮影している当時は互いの漫画は確認しておらず、現在のオンエアを見て、各々が“答え合わせ”をしているとのこと。「『こういう風に漫画にしたのか!』って感覚だと思います」。

 安永氏は同番組に新たな可能性を感じているという。「こういう番組を続けているうちに違う何かが生まれてくるかもしれません。漫画がもし当たってドラマや映画になれば面白いと思っています。この番組から漫画家のスターが生まれてほしいですね。その子たちがフジテレビと関係を持って、新しいコンテンツができるのが1番いいと思っています」と大きな目標を語る。

 シーズン2についても「やったほうがいい」と断言。「とにかく続けていくしかないかなと思っています。『あいのり』などもすぐにブレークしたわけではないですからね」と続ける。視聴者からの反響も上々のようで「今はとにかく認知」と口にする。

 現在は深夜24時25分という遅い時間だが、将来的には午後11時台を目指したいとも口にする。「若い子たちにテレビに戻ってきてほしい」と現在のテレビ業界が置かれている課題についても触れた。

「デバイスが変わっているだけだと思うんです。TVerの再生数はものすごいことになっている。それはニーズはあるということ。生活習慣が変わり、テレビはリアルタイムで見るものではなくなっている。しかし、何かしらの形でコンテンツは見られているんです。それを僕らが作っていくしかないと思っています。テレビが“王様”だと偉そうにする必要やプライドを持つ必要もないんです。ただリーチは広いし、ボタンを押すだけで見られるという気軽さはあるので、そこの強みは生かしたいとは思っています。今はとんでもない過渡期にいるなと思います。テレビ離れは確かにしているけど、コンテンツ自体からは離れてない。ただ面白いものを作るしかないですね」

□恋愛トキワ荘 フジテレビで毎週月曜、深夜24時25分から放送中(関東ローカル)。若手漫画家6人が疑似恋愛シミュレーションを体験し、それをもとに漫画を執筆。毎話放送終了後にはFODやsmartnewsで配信される。MCは「シソンヌ」長谷川忍と森川葵。

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