撮影2日前に監督から「30点」の辛口採点 16歳・中川翼が挑んだ実写「耳をすませば」

大人になった月島雫と天沢聖司を女優の清野菜名と俳優の松坂桃李が演じ、10年後のオリジナルストーリーが加わった実写映画「耳をすませば」が10月14日から全国公開されている。中学生の雫と聖司が美しいマジックアワーを背景に、将来を約束する姿は、作品のメインビジュアルにもなっている印象的な場面だ。限られた時間で行う撮影に向け、練習を繰り返したと語る俳優の中川翼(16)は、撮影の2日前に行ったリハーサルで、平川雄一朗監督から「それじゃ、30点」と言われたエピソードを告白。苦労の末にたどり着いた「魔法の時間」だったことを明かした。

中川翼が映画「耳をすませば」での撮影秘話を告白【写真:ENCOUNT編集部】
中川翼が映画「耳をすませば」での撮影秘話を告白【写真:ENCOUNT編集部】

恋愛観も明かす「大切な人には積極的にアプローチしたい」

 大人になった月島雫と天沢聖司を女優の清野菜名と俳優の松坂桃李が演じ、10年後のオリジナルストーリーが加わった実写映画「耳をすませば」が10月14日から全国公開されている。中学生の雫と聖司が美しいマジックアワーを背景に、将来を約束する姿は、作品のメインビジュアルにもなっている印象的な場面だ。限られた時間で行う撮影に向け、練習を繰り返したと語る俳優の中川翼(16)は、撮影の2日前に行ったリハーサルで、平川雄一朗監督から「それじゃ、30点」と言われたエピソードを告白。苦労の末にたどり着いた「魔法の時間」だったことを明かした。(取材・文=西村綾乃)

 物語は1989年に少女漫画誌「りぼん」に連載された柊あおいの同名作をもとに、それぞれの10年後を描いたオリジナル作品だ。本が好きな女の子・雫は編集者に。少女に思いを寄せる聖司はイタリアでチェリストになるため、奮闘している。

「撮影に入る2か月くらい前から、チェロの練習を始めました。クランクインの日に、松坂さんと僕が演奏する音に合わせて、清野さんと(中学時代の雫役の)安原琉那さんが『翼をください』を歌うシーンを撮影しました。僕もしっかり練習をして臨みましたが、松坂桃李さんは長年チェロを弾いて来られたような堂々とした演奏ぶりで、『全然違うな』と。その完璧な姿に驚きました」

 雫と聖司は同じ中学校に通う同級生。雫は図書館で本を借りる際に使う貸し出しカードで見かける聖司の名前が気になっていた。2人が出会うシーンは、スタジオジブリが95年にアニメ化した映画でも描かれた名場面だ。

「雫が『やなヤツ! やなヤツ!』と連呼するシーンですよね。聖司は『学校の王子さま』というような孤高の存在というイメージがありながら、あの場面では『変わった人』という言葉がしっくりくる。イヤなヤツに見えるけれど、やっと雫と話せた時間に素直になれなかった聖司は、『何やってんだ、オレ』と悔しさがあったと思います。撮影をしたときは、聖司と同じ中学生だったので、強がったり、気になる女の子に意地悪をしてしまう気持ちが分かりました」

“最悪の出会い”をした2人。しかし雫が電車の中で見つけたねこのムーンに導かれ、扉を開いたアンティークショップ「地球屋」での再会は、意地を張っていた互いの心を解していった。

「聖司が雫を思っていることは周囲にはバレバレだけど、聖司だけが周囲に知られていないと思っているところが中学生の男の子らしいなと思います。地球屋でお互いの夢について話したり、雫とやり取りを重ねる中で、聖司は段々素直になっていきます。松坂さん演じる聖司も、雫が『好きだ』という気持ちがあふれていますよね。僕も不器用なので、聖司のように最初は意地悪をしてしまうかもしれない。でも本当に大切だなと思う人に出会ったら、積極的にアプローチしたいです」

 物語の終盤。お互いの気持ちを確認し合った雫と聖司が、将来を約束し合う場面がある。

「明け方の一瞬にしか見ることができないマジックアワーを狙っての撮影でした。絶対に失敗できないので、事前に何度も練習を重ねて。横浜(神奈川県)の公園で本番の撮影をする2日前に再現をしたときは、平川監督から『それじゃ30点だよ。本番までに仕上げて』と言われました。厳しいなと思ったけれど、この一瞬を捉えるんだという強い気持ちを、スタッフ全員から感じました。うまくいくかなという緊張と、3月の寒さを乗り越えて。松坂さんたちが演じる10年後の世界につながる大切な見せ場を、無事に撮影できたときは感動しました」

 本番2日前に「30点」と言われた演技。気を引き締め直して臨んだ本番は、1回でOKをもらうことができたと語る。

「『カット!』と言われたときはホッとしました。カットをかけて2~3回撮影したのですが、主要な部分は1発OKでした。2020年に撮影がスタートしてすぐに、緊急事態宣言になり撮影が中断して。今年5月のクランクアップまで時間がかかりましたが、貴重な経験でした。原作やアニメファンも多い聖司を演じることはプレッシャーでしたが、聖司を演じるのではなく、聖司になることができた。たくさんの人に作品を楽しんでいただきたいです」

□中川翼(なかがわ・つばさ)2005年12月6日、神奈川県生まれ。4歳のときにモデルとしてデビュー。15年にドラマ「ORANGE」で俳優としての活動をスタートした。映画「ヒロイン失格」(15年)、映画「僕だけがいない街」(16年)などに出演。「光を追いかけて」(21年)では初主演を務めた。「おんな城主 直虎」(17年)でNHK大河ドラマに初出演。放送中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22年)では、北条政範を演じた。サッカー、バスケットボールなどが特技。170センチ、B型。

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