愛車はなんと英国装甲車 目撃情報が相次ぎ話題沸騰、軍用車コレクターの驚くべき素顔

世界にはさまざまな特殊車両の愛好家がいるが、軍用車でドライブする収集家は世にも珍しいだろう。コンサルティング会社を営む松井裕一朗さんは、軍用車コレクターでありながら、日本で唯一の英国の軍用車と装備品を常設展示する私設博物館「ミリタリーアンティークス大阪」の館長を務めている。装甲車や軍用トラックで走る姿が度々SNSで話題を集める松井さんの半生とは。

フェレット装甲車がコンビニに立ち寄るから驚きだ【写真:本人提供】
フェレット装甲車がコンビニに立ち寄るから驚きだ【写真:本人提供】

「軍用車は全て払い下げ品」 トラックやバイクも定期的にメンテナンスのため公道を走らせている

 世界にはさまざまな特殊車両の愛好家がいるが、軍用車でドライブする収集家は世にも珍しいだろう。コンサルティング会社を営む松井裕一朗さんは、軍用車コレクターでありながら、日本で唯一の英国の軍用車と装備品を常設展示する私設博物館「ミリタリーアンティークス大阪」の館長を務めている。装甲車や軍用トラックで走る姿が度々SNSで話題を集める松井さんの半生とは。

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「そりゃあ、走っている姿を見かけたら写真を撮りたくなりますよね」。ツイッターに度々“目撃情報”が上がるのが、「デイムラー フェレット装甲車」だ。1963年製造で、偵察用に設計され、英国陸軍が使用していた本物だ。公道を走らせるために車検を通し、ナンバープレートが交付されている。世界でも希少な1台で、「動態保存で、これからもずっと走らせ続けたいと思っています。私のコレクションは旧車が多いため、1か月に1度は定期的にエンジンをかけてしっかり走らせています。その際に、コンビニにもガソリンスタンドにも立ち寄りますし、買い物もします。そうしたら、たまたま居合わせた人たちで即席撮影会になるんです。妻を迎えに行く時に乗ることもあって、ツイッターのネタとして注目されたこともありますよ」。車両の状態を維持するためのドライブが結果的に目立ってしまうのだという。

 原点は、祖父の存在だ。戦前から警察官を務めており、戦時中は旧日本陸軍の軍人、戦後は警察官に復職した。「私には父親がいなかったので、祖父に父親代わりとして育てられたんです。祖父からは幼い頃から警察や日本軍のことについていろいろな話を聞いたり、当時の写真をたくさん見せてもらいました。小学校に入ると、その影響か軍用車のプラモデルがかっこいいと思うようになって。私は不器用で自分では作れなかったんですけどね。特にドイツ軍のキューベルワーゲンに憧れて。大人になったらいつか軍用車を買いたいなぁという思いがふつふつと沸いて、ずっと胸に抱えていました」。

 ITエンジニアの仕事に就くが、“おじいちゃん孝行”を考えるように。「祖父は私に警察官か皇宮護衛官になってほしかったようで、社会人になってからずっとそれが心残りだったんです。そこで意を決して自らのIT技術を生かすことができる航空自衛隊に入隊することにしました」。その後、防空システムに関する任務に従事し、退官後は予備自衛官ならびに自衛官募集相談員として自衛隊に関わりつつ、複数の企業の会社役員を務めるなどし、現在は自ら会社経営を行っている。

 念願がかなって30歳ぐらいの頃にキューベルワーゲンを購入。一方で、海外出張にあわせて世界中の軍事博物館巡りを始め、その後、年に1、2度は英国出張に行くようになり、次第に英国の軍用車両に引かれるように。英国文化にも魅了され、すっかり「英軍専門の軍用車コレクター」になった。そういった背景からキューベルワーゲンは譲ってしまい、今では装甲車や装軌車両、軍用トラックからバイクまで、さまざまな英軍の車両を収集している。

英国陸軍「デイムラー フェレット装甲車」は松井裕一朗さんの“愛車”でもある【写真:本人提供】
英国陸軍「デイムラー フェレット装甲車」は松井裕一朗さんの“愛車”でもある【写真:本人提供】

コレクションの数・金額は「軍事機密」 米国の軍事博物館から直接買い取った車両も

 収集したコレクションの数、金額は「軍事機密です」と明かしたことはないが、盗難や火事などの事件・事故リスクを回避する理由もあって、セキュリティー対策を万全に施した日本国内や英ロンドン郊外の複数の倉庫で大切に保管しているという。

 こうした中で、海外のコレクターからノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)の精神を学び、私設博物館の設立に情熱を傾けることになったという。「日本では持てる者の義務とも言われますが、私は幸いなことに家族や関係者からの多大な協力が得られ、運にも恵まれて、たまたま多くの軍用車両を手元に置くことができているだけですので、それを自分だけのものにせず、できるだけ多くの皆さんと共有したいと考えるようになりました」。準備を重ねて、2021年7月に大阪府松原市にオープン。「見て、触って、乗れる!?」をコンセプトに、予約制で月1回開館。6か月ごとに展示品の総入れ替えをしており、実際に軍用車両や装備品に触れることができる。「戦争が良いのか悪いのかなどについて当館から何かを発信することはなく、先入観を持たれないようフラットに運営しています。あくまで来館者が実物に触れて、どう感じるか、どう思うかを尊重しています」と強調する。将来的には、実際に荒地を走れるような乗車体験の拡充も構想にあるという。

 定期的にメンテナンスのため公道を走らせているのはフェレット装甲車の他に、英国陸軍の1940年製「モーリス・コマーシャル CS8汎用トラック」や1980年製の軍用バイク「カンナム・ボンバルディア 250」。そもそもどうやって手に入れているのか。「軍用車は全て払い下げ品で、限られた入手経路しかありません。国内のコレクターから購入、海外のコレクターから購入、海外の軍用車オークションで購入、海外の軍事博物館から購入。実はモーリスの軍用トラックは、米国バージニア州の軍事博物館から私が直接買い取ったもので、走行できる車両は世界に数両しか現存していません。フルレストアし、公道が走行できるように車検を通してナンバーを取得しています。現状でナンバーを取得していないのは海兵隊の装軌車両(カタピラ車)と空挺部隊用の折りたたみバイクぐらいです」と話す。

 あくまで「趣味」という軍用車両。そんな松井さんは普段はどんな車に乗っているのか。以前はクラシックカー収集家だったということもあり、「例えばフォルクスワーゲンのタイプ1、50年代後半から60年代のものが好きで。今でも妻が乗っています」。普段使いのマイカーは「寒い日も暑い日もちゃんと走れる普通の車に乗っていますよ(笑)」とのことだ。

 世界規模で博物館やコレクターとの交流を続け、広がる夢、そして、飽くなき収集欲。これからも軍用車両の台数は増えていきそうだ。「妻には毎回、事後報告で、『買いました』と報告して朝まで土下座をするのが恒例なんです(笑)。だって、『今度あの英軍の車両を買うから』と事前に伝えて、『いいよ』と言ってくれる奥様はいないでしょう(笑)」。

 これからも新たな“愛車”が、道行く人をアッと驚かせてくれるかもしれない。

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〇ツイッター
基地司令@軍用車コレクター https://twitter.com/Military_AFV
ミリタリーアンティークス大阪(MAO) https://twitter.com/MAO_BMVEM

〇ミリタリーアンティークス大阪
〒580-0041 大阪府松原市三宅東1丁目9-9
https://www.military-antiques.jp/

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