知る人ぞ知るビデオ界の大ヒット作「日本統一」が支持されるワケ 親友コンビが明かす舞台裏

52作続くオリジナルビデオシリーズ「日本統一」が初めて映画化された。「劇場版 山崎一門~日本統一~」(公開中、辻裕之監督)で、スピンオフの「山崎一門」をフューチャーしたもの。ダブル主演を務める氷室蓮司役の本宮泰風(50)と田村悠人役の山口祥行(51)が、誕生の舞台ウラ、ヒットの秘けつ、今後のビジョンを語った。

「劇場版 山崎一門~日本統一~」でW主演を務める本宮泰風(左)と山口祥行【写真:ENCOUNT編集部】
「劇場版 山崎一門~日本統一~」でW主演を務める本宮泰風(左)と山口祥行【写真:ENCOUNT編集部】

本宮泰風&山口祥行インタビュー オリジナルビデオシリーズ「日本統一」初の映画化

 52作続くオリジナルビデオシリーズ「日本統一」が初めて映画化された。「劇場版 山崎一門~日本統一~」(公開中、辻裕之監督)で、スピンオフの「山崎一門」をフューチャーしたもの。ダブル主演を務める氷室蓮司役の本宮泰風(50)と田村悠人役の山口祥行(51)が、誕生の舞台ウラ、ヒットの秘けつ、今後のビジョンを語った。(取材・文=平辻哲也)

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「日本統一」は横浜出身の氷室と田村の2人が日本最大の任侠組織「侠和会」の盃を受け、極道界の日本統一を目指す壮大なシリーズ。2013年8月にセルDVDがリリースされ、これまで本編52作、スピンオフ9本が製作されている。年間7~8本の新作が製作されており、ほかに例を見ない驚異的な数だ。

 劇場版は、氷室と田村の逮捕で不在の中、若手の「山崎一門」の個性あふれるメンバーが金塊密輸に絡む事件の解決に奮闘するというストーリー。スピンオフに見られるお祭り要素もあって、笑いあり、アクションありのエンタメ作になっている。

「もともと本編の映画化を考えていたんですが、コロナ禍もあって、時期を逃してしまったんです。スピンオフの方がフットワーク軽くいけるので、先に映画化したというのが実情です。山崎一門は泥臭く、汗かいて一生懸命やるっていうのがテーマ。それ以外には何でもありなんです」(本宮)。「山崎一門の方が、女性や子供が見やすい作りになっているんです。だからお笑い部分も多く、それがいい感じになっている」(山口)。

 そもそもシリーズはどうやって生まれたのか。本宮がこう話す。

「(三代目侠和会会長・川谷雄一役の)小沢仁志さんの発信の企画だったんです。次世代がシリーズ化を前提にした任侠ものを作ったらどうか、と。氷室と田村は関西の不良だったんですけど、関西弁が面倒くさかったんで、設定を変えろと言ったら、横浜出身になりました(笑)。5本の脚本を用意したんですが、シリーズは10本くらいかなと思っていましたね。その後も、(売り上げの)数字が落ち着いた時もあったんですが、メーカーサイドにお願いして、その後、配信がメインになったタイミングとうまく重なった。皆の努力もあるんですけど、それだけでは厳しい世界なので、運が良かった部分もあると思っています」

 2020年春からのコロナ禍によるステイホームも追い風になった。「日本統一」は大手配信サイトのほぼ全てで見ることができる。50作目からは本宮が総合プロデュースとしても名を連ねる。

任侠道は「ヤクザのものじゃなくてもいい」と考えを明かした本宮泰風【写真:ENCOUNT編集部】
任侠道は「ヤクザのものじゃなくてもいい」と考えを明かした本宮泰風【写真:ENCOUNT編集部】

本宮と山口は高校時代からの親友「役作りをする必要がないんです」

 山口がその経緯を代弁する。「長いシリーズで監督、脚本家も交代する中、一番作品を理解しているのが泰風。僕らのリーダーなので、みんなもついてくる」。

 本宮と山口は高校時代からの親友。役柄には重なる部分もあるのか。

 本宮は「それぞれの役は理想だったりするんですよ。僕がこの立場だったら、こうありたいんです」といえば、山口は「泰風は僕らの野球チームのキャプテンで、氷室みたいなところがあるんですよね。キャストのみんなとコミュニケーションを取っている泰風が本作りに関わっているので、私生活の性格に近い部分でキャラを作ってくれています。だから、役作りをする必要がないんですよね」と話す。

 量産の秘けつは、役作りなしで臨めるキャラ作りにもあるようだ。

 1992年の暴力団対策法施行以降、ヤクザ映画は作りにくくなっているはずだが、「日本統一」は巧みなキャラ設定と物語展開で現代に通じるエンタメに仕上がっている。

「そこは本当に悩みましたね。ある日、『これはファンタジーだから』と開き直ったら、意外と進むようになって、無視するところはおもいっきり無視して、その分、こだわれる部分はディテールにこだわったら、帳尻が合うんじゃないかと思ってから、少し楽になりました」(本宮)

「Vシネ時代は実録ものが多かったので、こだわってやっていましたが、『日本統一』はエンターテインメントとして作っているので、万人が見やすいものを目指しています。中には『ヤクザはこんなことしない』と言う人もいるけれど、そんなこと、いちいち聞いてらんねぇなという感じです(笑)」(山口)

 現代における任侠道をどう捉えているのか。

「任侠道はヤクザのものじゃなくてもいいんじゃないかと思っていますね。男として生きている以上、どんな職業でも自分の生きる道にこだわっている人はいます。それが任侠道じゃないか、と。じゃあ、どうしてヤクザを描くかというと、銃を撃ったり、刺したりと分かりやすいからです」(本宮)。「ヤクザものとして描いていますけど、会社勤めの人の縦社会や、企業愛、上司部下の愛情にリンクさせているところはありますね」(山口)。

『日本統一』は「万人が見やすいものを目指している」とこだわりを見せた山口祥行【写真:ENCOUNT編集部】
『日本統一』は「万人が見やすいものを目指している」とこだわりを見せた山口祥行【写真:ENCOUNT編集部】

ヤクザ世界に社会風刺も「何かやらかした政治家のニュースには敏感に」

 本宮は、ヤクザ世界に社会風刺も込めている。

「ヤクザ社会を投影して描くと、いろんなことがわかりやすくなるんです。給付金詐欺の話も取り上げていますし、何かやらかした政治家のニュースには敏感になるところもあります。特に、脚本家は、悪い連中を懲らしめたいという思いが強くて、『こいつを血祭りにしてやりましょう』みたいな感じで描いてくるんです(笑)。映画ではロシアでしたけど。最終的には2人(氷室と田村)が北朝鮮に潜り込んで……っていうのをやりたいんですけど、これはどうにもならないな」(本宮)

 時事ネタといえば、昨今、宗教問題が取りざたされたことで、「日本統一」が検索ワード上位にランクインしたこともあった。また、かつては、街で本職のヤクザから声をかけられたこともしばしば。思わぬ反響にはいつも驚かされている。

「本職の声かけは最近、減りました。街に行かなくなったということもあるんですけど、飲みに出ていた頃は『あちらのお客さんからです』と言って、料理や酒が運ばれてきたこともありました。断りにくいですが、全部断ってきました。そういう役割をやらされるのも、僕なんですよ(苦笑)」(本宮)

 日本統一ワールドはとどまることを知らない。「日本統一 北海道編」として初の地上波ドラマ化(10月17日UHB北海道放送、10月10日U-NEXT配信)も決定。本宮が出演する映画「向田理髪店」(10月14日公開)では、セルフパロディーも披露している。

 ところで、統一はいつなされて、いつ完結するのか。

「エグゼクティブ・プロデューサーは任侠のスターウォーズにしたいと言っていますね」(山口)。「僕らが死んでも、その下が続ければいいし、もう止め時がわからない(笑)。続けられるまではやりたいですね」(本宮)。そのワールドはこれからも広がりを見せそうだ。

□本宮泰風(もとみや・やすかぜ)1972年2月7日、東京都出身。1994年にデビュー。その後、映画・ドラマなど多数出演する中、大ヒットシリーズ「日本統一」では、主演・総合プロデュースの二刀流で活躍。また、ネオVシネ四天王の一人と呼ばれ、数々のビデオオリジナル作品にも出演している。主な出演作品に、映画「バイプレイヤーズ」(2021)、「ベイビーわるきゅーれ」(22)、ドラマ「麒麟がくる」「警視庁ゼロ係」、連続テレビ小説「ちむどんどん」等がある。

□山口祥行(やまぐち・よしゆき)1971年8月6日、東京都出身。ジャパンアクションクラブ出身。86年、ドラマ「十五少年漂流記 忘れられない夏休み」で俳優デビュー。2017年ジャパンアクションアワードベストアクション男優・最優秀賞受賞。本宮と共に、ネオVシネ四天王の一人に名を連ねる。主な出演作品に、映画「アウトレイジ 最終章」(17)、「罪の声」(20)、ドラマ「駐在刑事」シリーズ、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」などがある。

次のページへ (2/2) 【写真】山口祥行が公開した本宮泰風の激シブショット
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