高杉真宙、俳優業と社長業の二足の草鞋 「安定が欲しい」本音も「色々なことに挑戦したい」

家族の繋がりを描いた映画「いつか、いつも‥‥‥いつまでも。」が10月14日から全国公開される。昨年、個人事務所を設立して以降、初の主演作となった俳優の高杉真宙(26)に、作品を通して感じた家族の大切さ、俳優業と社長業をこなす日々などについて聞いた。

独立後初の主演映画で医師役を務める高杉真宙【写真:ENCOUNT編集部】
独立後初の主演映画で医師役を務める高杉真宙【写真:ENCOUNT編集部】

独立後初の主演作、感じた家族の大切さとは

 家族の繋がりを描いた映画「いつか、いつも‥‥‥いつまでも。」が10月14日から全国公開される。昨年、個人事務所を設立して以降、初の主演作となった俳優の高杉真宙(26)に、作品を通して感じた家族の大切さ、俳優業と社長業をこなす日々などについて聞いた。(取材・文=西村綾乃)

 映画は、ひょんなことから、ひとつ屋根の下で暮らすことになった男女の恋と、それを見守る家族の姿を描いたもの。物語は海辺の小さな町で開業医をしている祖父(石橋蓮司)と共に医師として働く市川俊英(高杉)のもとに、俊英がひそかに憧れていた女性にそっくりな関口亜子(関水渚)が現れたことから少しずつ展開していく。

「俊英と僕は、頑固で不器用。そして人づきあいが苦手な所が似ているなと思いました。僕が演じた俊英は家族以外には本心を出すことは少ないのですが、本音でぶつかって来る亜子と出会い変化していきます。感情を爆発させるシーンもあったので、撮影の前には、関水さんがやりにくいところがないかなど、気になることを確認してから臨みました。お互いが持っているものを出し合えたから生まれるものも多くありました。芝居はひとりではできないのだということを痛感しました」

 世間体など、社会の中には自分を生きづらくさせてしまうものが存在する。自身と重なる部分があった俊英を演じたことで、「自由に生きて良いんだと思うことが出来た」と振り返る。

「亜子と俊英は繊細だから、自分の言動を後悔したり、悩んで止まってしまうことがあるけれど、人生を良くするのも悪くしてしまうのも、自分の行動次第。どうなっても死んだりはしないのだから、思うように生きてみたい。真っ直ぐに生きようとするふたりの姿は、僕自身へのエールのように感じる部分もありました」

 祖父と俊英の暮らしは、家政婦のきよさん(芹川藍)が支える。囲む食卓には、ふっくらとした卵焼き、カレーなど愛情いっぱいの料理が並ぶ。

「僕が家族との団らんを思い出す味は、小学校の時に食べたピーマンの肉詰めです。母に聞いたら、『あんまり作ったことがない』と言われたのですが、母が二等分にしたピーマンの中にひき肉で作ったタネを詰めているところ、油をひいたフライパンの上でピーマンが焼かれているところ、焼きあがった肉詰めが皿の上にきれいに並べられた場面などを細かく覚えていて。ケチャップを付けて食べたのですが、忘れられない家族の味です」

 亜子は「マンガを描く才能」、きよさんは「料理」など物語の中では、それぞれが「得意なこと」を活かし、周囲を幸せにしようと努力する。

「僕自身はまだ『僕はこれで人を幸せにできる』というものを持ててはいませんが、見つかると良いですよね。普段何気なくしていることで、家族や周囲が喜んでくれたら幸せだと感じます。最近、感じた幸せは、いとこに赤ちゃんが産まれたことです。コロナ禍でなかなか実家に帰ることが出来なかったのですが、先日久しぶりに帰ったら迎えてくれた祖父母が『成長の様子は、アプリでも見られるんだよ』と教えてくれて。家族に幸せをくれた、いとこ。誕生を心から喜んでいることを伝えてくれた祖父母にも感謝しています」

「僕は人を笑わせることが出来る人はヒーローだと思っている」

 小学校6年生の時にスカウトされ、13歳で俳優としての活動をスタート。これまで50本以上の映画やドラマに出演してきた。レギュラー出演中のバラエティー番組「ぐるぐるナインティナイン」(日本テレビ系)の人気コーナー「グルメチキンレース ゴチになります!」では、新たな一面も披露しファンを楽しませている。

「出演が決まった時は、驚かれました。僕は人を笑わせることが出来る人はヒーローだと思っているので、俳優とは別の一面として挑戦し続けたいと思っています」

 昨年4月には個人事務所「POSTERS」を設立。「安定が欲しい」と本音も漏らしたが、新しい挑戦は良い刺激になった。

「事務所を設立する前は、俳優として役の事だけを考えて、現場に行けば良かったですが、いまはそうではない。取り巻く状況は変わりましたが、その環境が幸せだったと振り返ることが出来るようになったことで、周囲にいるいろいろな立場の人を尊敬できるようになりました。これはこの1年間で最も変わった部分です。演技以外に費やす時間が増えても、作品が作られる経緯や、会社の成り立ちなど、僕が知りたかったことを知ることができた」

 険しい道を選択した背景には、役者をしてすべきことを追求したいという思いもあった。

「俳優の仕事を続ける中では、『人が商品である』という感覚を受け入れていました。でもその状況でも、僕には意思があったので、疑問をあいまいにしたままでは続けられなかったということがありました。独立して、自分の人生に責任を持ち過ぎている、大変だなと感じることもあるけれど、面白そうだなと思うものに対してどん欲になっているところもあります。僕自身はクリエイターではないので、演技を追求していきたいと思いますが、映画を撮りたいという思いを抱えている俳優仲間もいますし、タイミングが合えば俳優だけで作品を作るなど、色々なことに挑戦をしていきたいです」

■高杉真宙(たかすぎ・まひろ) 1996年 7月4日、福岡県出身。小学校6年生の時にスカウトされ芸能界入り。2009年に舞台で俳優デビューした。18年には、主演した映画「笑顔の向こうに」が、「第16回モナコ国際映画祭エンジェルピースアワード」の最優秀作品賞を受賞。ドラマ「サギデカ」、映画「前田建設ファンタジー営業部」、同「十二人の死にたい子どもたち」など、これまでに出演した作品は50本を超える。バラエティー番組「ぐるぐるナインティナイン」(日テレ系)の人気コーナー「ゴチになります」でレギュラーを務めるほか、放送を開始したばかりのNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」、10月スタートのドラマ「PICU 小児集中治療室」(フジテレビ系)に出演が決定している。170センチ、A型。

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