小籔千豊「世間の人は“タブー”に慣れている」 3年ぶり復活「BAZOOKA!!!」に思うこと

6月4日に3年ぶりに復活した「BAZOOKA!!!」。世の中の事象に独自の目線で切り込み、笑いとシリアスを絶妙に織り交ぜ、視聴者に伝えるバラエティー番組だ。放送開始から約2か月、MCを務める小籔千豊に番組への手応えや復活した意味を聞いた。

3年ぶりに復活した「BAZOOKA!!!」のMCを務める小籔千豊【写真:ENCOUNT編集部】
3年ぶりに復活した「BAZOOKA!!!」のMCを務める小籔千豊【写真:ENCOUNT編集部】

“長”に必要な資質も明かす

 6月4日に3年ぶりに復活した「BAZOOKA!!!」。世の中の事象に独自の目線で切り込み、笑いとシリアスを絶妙に織り交ぜ、視聴者に伝えるバラエティー番組だ。放送開始から約2か月、MCを務める小籔千豊に番組への手応えや復活した意味を聞いた。(取材・文=島田将斗)

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 高校生RAP選手権や日本映画界に蔓延る性被害の実情、エキストラNO.1決定戦などさまざまなテーマを放送してきた。小籔は率直な感想を口にする。

「よう笑うことが増えましたね。『BAZOOKA!!!』やってると笑ける回が多いので本当に笑います。もちろんキコキコ(水原)のシリアスな回もありました。女性の風俗のやつとか、あれも楽しい部分もありましたけれど、やっぱり女性の性についてのリアルを知れたし、考えさせられました」

 問題になった映画界の性被害についても番組では切り込んだ。「被害者の方が来られて、その人は番組だから明るく務められていたので楽しい雰囲気もあった。でも、やっぱり僕らも話を聞いていると男として考えなあかんな、子どもにもそういう部分を伝えなあかんなって考えさせられる部分もあります」と慎重に語る。

 シリアスな内容だけならドキュメンタリー番組と変わらない。笑いと真剣のさじ加減はどうしているのか。

「スタッフに超優秀な人が集まっています。なので中身に関しては手放しで与えられたことをやる。率直な感想でおろうと。意識してこんなことを言おうとかこんな回にしようとかいう考えはいらない。僕が素直にシリアスなときはシリアスになったらいいし、笑けるときは笑って。本当に素に近い部分でいようとしています」

 出演するのは芸能人だけではない。この番組は一般人にもフォーカスを当てる。小籔は相手が誰であろうと真っすぐに自分の意見を述べるのが特徴だ。見る人によっては遠慮がないという印象を受けるかもしれないが、発言に込める真意があった。

「どこまで触られたらOKかというラインは人それぞれすぎるんですよね。何でもOKって言っている人が5人おっても、『なんでも』の範囲が人によって全然違ったり。いじらんといてほしいって思っている人もおる。そのラインをいじるというのは感覚とセンスでしかないんですよ」

 もちろん相手を傷つけることは言わない。時に厳しい意見があるものも「僕の中では正義がある」としていた。

「僕がガサツに言っているように見られるかも分からないですけれど、本当に『カイジ』の鉄の棒の上を歩いている感覚ではあります。番組で『57歳の男性が17歳の女子にガチ恋している』という話がありました。それ自体は悪いことではないと思うんですけれど、僕は自分の息子、同期が同じことを言ってたら心配して思ったことを言います。そういう感覚です。僕は神様とか先祖に恥じがないようなことを言います」

「耳を傾ける」必要性を強く感じていた小籔千豊【写真:ENCOUNT編集部】
「耳を傾ける」必要性を強く感じていた小籔千豊【写真:ENCOUNT編集部】

陰謀論を番組で取り扱う意味

 番組独自目線というなかで陰謀論に関する企画も扱う。MCとして扱う意義についても言及した。

「昨今は陰謀論って言ったら『あんなん信じているやつはアホや』と言う人もいる。陰謀という言葉でくくっていますけれど、『陰謀』だから話を聞かないって言っている人は頭硬いなって思います。僕はどんな情報であろうがフラットに聞いて、取捨選択をしています」

 吉本新喜劇の座長を務めていたからこそ「耳を傾ける」ことの必要性を強く感じていた。

「自分基準で判断したりとか『こういう人らが言うのは全部ウソや』は僕はしない。座長としても必要な資質だったと思うんですよ」

“長”の器について例え話をして説明した。

「例えば『Aさんにいじめられているんです』っていう被害報告があったとしたときにそこですぐに信じる奴はアホですよね。そいつがAさんを陥れたいから言っている可能性もあるし、本当に被害を受けている可能性もある。なので、僕はそれを聞いたらAさんの周りの人に聞いたり、報告してきた人の周りにも聞いて、自分で調べてから1回話をしようかってなる。誰かの報告1つで烈火のごとく怒る人、あれは上に立つ者に向いていないと思います」

色あせない理由を語る小籔千豊【写真:ENCOUNT編集部】
色あせない理由を語る小籔千豊【写真:ENCOUNT編集部】

タブーに切り込むよりも大切なもの

 暴露などさまざまなエッジの効いた情報が簡単に手に入る時代に復活した意味。小籔は番組の売りは「タブー」や「エッジが効いている」ではなく、スタッフの切り取り方だと強調した。

「今まで“タブー”に切り込む番組だったんですよね。当初はYouTubeとかはなくて、カルチャーを作ったり、闇の部分にスポットライトを当ててみたり、地上波に呼ばないような人を呼ぶ。先っちょ行ってたと思うんですよ」

 1回目の放送がスタートしたのは2011年。高機能なカメラが搭載されたスマホも急速に普及。事件に居合わせればカメラを構えSNSにアップ。「誰でも記者」とも呼ばれる時代に突入していった。

 MCの小籔も「YouTubeでは昔の『BAZOOKA!!!』っぽいことはみんなやり出していますよね。なんだったらもっとタブーだけに特化したYouTuberの方もいらっしゃる。世間の人は“タブー”に慣れてきている」と分析する。

 だからこそ「僕としてはこの番組、タブーに切り込むというコンセプトやけれど、そこまで切り込まなくてはいいのかなと思っています。ただただ“タブー”を見せて『えぐいなこれ』『えげつないところいってるな』という勝負をするとYouTubeにはかなわんし。僕らもそれをやりたいわけじゃない」という思いがあった。

「女性風俗とかも単純に『おもしろそうだ』という興味はある。でもその先には女性の性ってどうなのか。実際に受けてはる方はどうなのかって。入り口は『おもしろそう、覗いてみたいな』ですけれど、その先には真面目なテーマがあるんですよね。ただただ笑わされるときもあるけれど、ふざけているだけではなく、考えさせられる割合が他にはない感じかな」

 これだけSNSが発達した世の中でも色あせない理由。それは番組の切り口だけではない。「すごい」の先にあるものが視聴者を引き付けているようだ。

□小籔千豊(こやぶ・かずとよ)。1973年9月11日、大阪府大阪市生まれ。吉本新喜劇の元座長、バンド・吉本新喜劇ィズ、ジェニーハイのメンバーでドラムを担当。YouTubeチャンネル「フォートナイト下手くそおじさん」ではゲーム配信も実施している。

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