「天津」木村がヒロミから怒られた一度だけの“お説教” 芸人として人としての学び

昨年4月より岩手に移住、芸人として充実の時間を過ごしているお笑いコンビ「天津」の木村卓寛は、かつて“エロ詩吟”のネタで名をはせたが、意外にも登山やキャンプを趣味とするアウトドアな一面も併せ持つ。プライベートでは先輩芸人・東野幸治にまさかの“タメ口”、専属ドライバーを務めたヒロミからの“叱責秘話”など、大御所からも愛される木村が「2人の師」と仰ぐ両者のエピソードを明かした。

岩手の大自然を満喫している「天津」木村卓寛【写真:吉本興業提供】
岩手の大自然を満喫している「天津」木村卓寛【写真:吉本興業提供】

先輩芸人の東野幸治とディレクター椎葉氏の3人で結成された東野登山隊

 昨年4月より岩手に移住、芸人として充実の時間を過ごしているお笑いコンビ「天津」の木村卓寛は、かつて“エロ詩吟”のネタで名をはせたが、意外にも登山やキャンプを趣味とするアウトドアな一面も併せ持つ。プライベートでは先輩芸人・東野幸治にまさかの“タメ口”、専属ドライバーを務めたヒロミからの“叱責秘話”など、大御所からも愛される木村が「2人の師」と仰ぐ両者のエピソードを明かした。(取材・文=佐藤佑輔)

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 初めて山に登ったのは21、22歳のときですね。車で北海道を一人旅してて、地元の人に富良野岳っていう1900メートルくらいの山を紹介してもらって、ふらっと登ったんですよ。そのとき、小学校の頃に山で遊んだ原風景みたいなのをぶわっと思い出して、「山、いいな」って思ったんです。

 その後、エロ詩吟で売れた2008年頃に、ふとやりたいと思ったことやっていかなと思って、ツアーで富士山に登ったんですけど、山頂で達成感からめちゃくちゃ叫んでしまって。すっかりハマって次の年から年に3~4回いろんな人を連れて、多いときは週2で富士山に登ってました。高校生がマックに寄るようなペースですよ。

 東野登山隊は17年に、「老後のために何か始めたい」という東野さんと、ディレクターの椎葉さんを富士山に連れてったことがきっかけで結成されました。とはいっても、5合目からスタートして6合目でバテて撤退しましたけど(笑)。それからプライベートでもあちこち3人で登るようになって、それが番組につながった感じですね。今思えば、当時は僕が全然仕事がなかった時期で、何か仕事につながればと東野さんが声かけてくれたんと違うかなという気もします。本人からそんなん聞いたことないですし、本当に何となくなんですけど、そういう優しさがある人なんで。

 お陰さまで番組も続いてますけど、キャンプ芸人みたいに登山芸人がブームになることはないと思いますよ。だってしんどいじゃないですか。キャンプはやらない人でもやってみたくなるけど、登山はやらない人からしたら意味分からないものの筆頭ですから。

専属ドライバーをしたヒロミから「愛」のなさを叱られた

 これまでに3人で登ったのは30座くらい、百名山も7~8座は登ったかな。冬の八甲田山でちょっと遭難しかけて、途中でおじいさんが「天気悪なるから、私のスキーの跡をついてきなさい」って言ってくれたんですけど、どんどんふぶいてきてトレースがなくなってホワイトアウトになって……。何とか避難小屋までたどり着いたんですけど、あれはヤバかったですね。

 甲武信ケ岳に行ったときは日が暮れて辺りが暗くなってきて、みんな疲れてるなか椎葉さんがコケたんですけど、東野さんだけ走って「大丈夫か!」って支えに行って。こういうとき人間性が出ますよね。東野さんはお腹弱くて、すぐ携帯トイレでしてきていいか聞いてくるんですけど、普通見えないところまで行くじゃないですか。僕らから2メートルくらいのやぶの中でするんですよ(笑)。またそういうときに限ってカップルが通りかかるんですけど、澄ました顔でいてますね。

 東野登山隊では本当に人間性丸出しで、僕なんかは本当にクズの部分が出てる。番組をエゴサすると「木村最悪だな」「絶対こんなやつと一緒に登りたくない」って声がわんさか出てきますよ(笑)。でも、自分としてもブレーキはかけんでおこうと。高いところは怖い! 焼き肉は食いたい! 東野さんへのタメ口も3回まではセーフ! そういう、人間むき出しで腹割ってぶつかっていける感じが楽しいんですよね。

 この10年くらいは東野さんの背中を見てやらしてもらってましたけど、ヒロミさんの専属ドライバーをさせていただいてるときは、東野さんとはまたちょっと違う角度からいろいろ学ばせてもらいました。たった3か月でしたけど、すごく濃い3か月。運転手をしていて、一度ヒロミさんに怒られたことがあって。テレビ局で見送りの方が頭を下げてるとき、僕は「ああいう場って頭下げてる方も下げられてる方もちょっとした気まずさがあるよな……」と思って、ちょっと早くドアを閉めて車を出そうとしたんです。

 そしたらヒロミさんから「危ないだろ!」と怒られて、僕は僕なりに気を遣ってやったことだったのでちょっと言い返したら「それはお前、愛がないんだよ! 俺が気まずいから出してくれって言ったか? お前は愛がないから、俺の立場に立って考えてないんだよ」と。そこで「愛」という言葉が出てくるのがすごく意外で、ヒロミさんが大事にしてるのは「愛」なんだ、確かに僕は愛を持って相手の立場に立ってなかったなと反省しました。

 今回移住を決意したのも、ヒロミさんから「俺の運転手なんか辞めて、仕事をくれた向こうの気持ちに応えてこい!」と背中を押されたから。東野さんやヒロミさんから教わったことを忘れずに、岩手の人に愛されるような芸人になりたいですね。

■木村卓寛(きむら・たくひろ)1976年5月22日、兵庫県姫路市出身。漫才コンビ「天津」のツッコミ担当。99年、NSCの同期である向清太朗と「天津」を結成。08年、詩吟と下ネタを融合させた「エロ詩吟」でブレーク。決めぜりふの「あると思います」で09年の「新語・流行語大賞」にノミネートされる。21年3月中旬から岩手県へ単身移住。4月から岩手朝日テレビの新番組「Go! Go! いわて」のMCを担当する。

次のページへ (2/2) 【写真】岩手で雪上トレッキングを楽しむ木村のオフショット
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