台湾で現役続ける牧田和久を支える妻の覚悟「心の栄養士でいたい」 戦力外でかけた言葉

夫は元楽天の牧田和久投手。実業家の顔も持つタレント牧田シュウは2020年1月に結婚して妻となった。夫は10年ドラフト2位で西武に入団。11年に22セーブを挙げて新人王に輝いた。18年にMLBのパドレスに移籍し、米通算27試合に登板。20年から楽天に所属したが21年のシーズン後には戦力外に。今年5月から台湾の中信兄弟で新たなスタートを切ったが、妻は戦力外を通告された夫をどう支えてきたのか。アスリートの夫を持つ妻の覚悟を聞いた。

夫への思いを語る牧田シュウ
夫への思いを語る牧田シュウ

夫は昨シーズン後に楽天を戦力外、5月からは台湾の中信兄弟に

 夫は元楽天の牧田和久投手。実業家の顔も持つタレント牧田シュウは2020年1月に結婚して妻となった。夫は10年ドラフト2位で西武に入団。11年に22セーブを挙げて新人王に輝いた。18年にMLBのパドレスに移籍し、米通算27試合に登板。20年から楽天に所属したが21年のシーズン後には戦力外に。今年5月から台湾の中信兄弟で新たなスタートを切ったが、妻は戦力外を通告された夫をどう支えてきたのか。アスリートの夫を持つ妻の覚悟を聞いた。(取材・文=中野由喜)

「主人と初めて会ったのは2016年。再会したのがパドレスに行くとなった18年の渡米前でした。お付き合いが始まったのは夫が渡米した後の18年9月ごろです。メールや電話のやり取り、行き来する遠距離交際が始まりました。私は野球を見たことがなく、お付き合いが始まってから勉強しました」

 夫は渡米したものの18年5月にマイナーに降格となっていた。交際を始めた当時は夫の苦しい時期だったはず。

「夫はアメリカの環境になじむのに大変そうでした。でも弱音をはくタイプではなく、いかに切り替えが早くでき、自分で切り開いていけるかと考える人。私も当時は野球に詳しくありませんでしたし、メールや電話でのやりとりでしたから支えると言っても……。私は自分が落ち込んだときはひたすら行動します。プランABCと準備し大事な時に自分の実力を全部出し切ろうと考えるタイプ。悪いことは考えずポジティブシンキングです。主人も同じです。なので、当時、私からは基本的にポジティブな言葉しかかけていないです。チームとその1勝をつかむために、常に重圧とプレッシャーの中にいるので『少し肩の力を抜いて野球を楽しんでね』と」

 落ち込んでいる姿を人に見せない夫の強い精神力。そんな夫は日本に戻って所属した楽天から昨年10月、戦力外通告を受けた。度重なる苦境。そんな夫には当時、やり切ったという完全燃焼の感覚はなかった。

「夫は人に弱みを見せるタイプではないです。ただ悔しさは大きかったと思います。私からは『自分が納得するまでやったらいいんじゃない』という言葉をかけました。今、自分が必要とされる場がまだあるのはすごく貴重なこと。プロ野球の世界で現役は生涯に1度しかないこと。野球ができる機会があるのは幸せなことだと思います。納得いくまでやってほしいと思いました」

 夫は今年5月にプロ野球選手としての活躍の場を台湾に移した。コロナ禍のため簡単には行き来できない。

「毎日、テレビ電話で話しています。長いときは1時間くらい話すでしょうか。夫に会えないので、時間とエネルギーをすべて仕事に注いでいます(笑)」

 娘は2歳。パパもかわいい娘に会いたいはず。妻も寂しいはずだが弱音を吐かずに笑顔で答えてくれる。

「夫は元々、遠征で月の半分は家にいない状態でした。少し慣れはあると思います。でも、一緒に過ごす時間が限られていると互いを大切に思う気持ちが増していく気がします。会ったときの時間を大切にしようと思ったりもします。互いにポジティブシンキングなので」

 繰り返されるポジティブシンキングという言葉に勝負の世界で生きるアスリートの妻の強さ、前向きな姿勢を感じる。

「私は全て主人におんぶにだっこという考え、イメージはなくて、結婚前から主人も私も相手を尊重することをとても大事にしていました。将来のために準備できることを夫のいない時間でやってきたつもりです。アスリートの現役の時間は限られていて、その後の人生もすごく大事。その中で私も自分は何ができるのかと考え、夫と一緒に過ごす以外の時間を有効活用したいと考えてきました」

 実業家の顔を持つ妻は花を使った空間デザインやジュエリーの会社「LISM」を経営している。夫がいつか引退したときを考え、家計を支えるつもりで仕事をしているのか。

「もちろんです(笑)。ただ家族を支える柱はあくまでも主人。でも私も家族を支える力をつけたいと思っています」

 野球を離れた夫の素顔も聞いてみた。

「めちゃくちゃ子煩悩です。あとは人が良すぎる、優しすぎる(笑)。裏表が無く、家族や友人、後輩を大切にする人で、実家のご両親とも連絡をまめに取り合い、『無理しないように』と言ったり、大切に思い、気遣っています。あとは人としてすごく真っすぐで、野球に対して熱すぎる(笑)。野球の話を始めると1時間くらい止まりません。配球などマニアックな話です」

 最後にアスリートの妻に必要な要素を聞いてみた。

「ご飯など栄養管理なども大切ですが、私は『心の栄養士』みたいな感じでいたいと思っています。私が支えるという大げさなことではなく、お互いに自分らしくいられて、言いたいことが言えて、いい関係を築けることが理想。私に野球の専門知識はありませんので、夫が話したいときに話を聞いてあげる。共感したり……。やはり、話を聞いてあげることが大切でしょうか。あとは家では楽しく笑顔でいるようにしています。私が笑顔でいるためには自分自身を満たしてあげることが必要です。それが私には仕事だったりします」

(取材協力・カロスエンターテイメント)

□牧田(まきた)シュウ 1992年10月21日、東京生まれ。女子美術大学付属高校を卒業後、インテリアの専門学校に進学。その後、デザインに関わる仕事に就く。小学時代は上海に留学して中国語をマスター。中学時代は上海のサマースクールやシンガポールで英語を覚えた。両親、祖父母を含めると中国、フィンランド、ロシア、日本にバックグランドを持つ。特技はバトントワリング、着物の着付け。アスリートフードマイスターの資格も持つ。

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