悪に染まった3冠王・諏訪魔 50周年を迎えた全日本プロレスをけん引する根っからの悪党

やはり根っからの暴走体質だった。本性そのままに暴れまくる諏訪魔がイキイキしている。全日本プロレスの至宝・3冠王座を奪還した諏訪魔。VOODOO-MURDERS(ブードゥーマーダーズ)の暴君らしく、やりたい放題で王道トーナメントをひっかき回している。

3冠ベルトを誇示する諏訪魔【写真:諏訪魔提供】
3冠ベルトを誇示する諏訪魔【写真:諏訪魔提供】

柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.107】

 やはり根っからの暴走体質だった。本性そのままに暴れまくる諏訪魔がイキイキしている。全日本プロレスの至宝・3冠王座を奪還した諏訪魔。VOODOO-MURDERS(ブードゥーマーダーズ)の暴君らしく、やりたい放題で王道トーナメントをひっかき回している。

 当初、エントリーされていたのに「チャンピオンが出る必要はねえ」と一方的にボイコットを表明した。

 王道トーナメントは、過去、歴代3冠王者がエントリーして来た。ところが諏訪魔は「ジェイクがいつも言っていたよな。勝ったヤツが正義だって。じゃあ俺が正義なんだ!」とボイコットも当然だと主張、前代未聞の展開に強引に持ち込んだ。

 ところが、8・7東京・後楽園ホール大会で入場式に割り込み。「このトーナメントに優勝したヤツ、武道館で俺に挑戦してこい。俺が今、決めた。正式決定だ」と、これまた身勝手な通告を突きつけると「地獄に落ちろ」と、最近のお気に入りの決めせりふを残して、意気揚々と去っていった。

 選手はもちろん観客席もあ然ぼう然。不穏な空気が残る中、ブードゥー軍団を引き連れた諏訪魔は、永田裕志、佐藤光留、田村男児組と対戦。反則プレーを連発し、永田をとことん追い詰めた。だが「全日本の良心」和田京平レフェリーの毅然たる裁定で反則負けをコールされた。

 これには怒り心頭の諏訪魔は「なんだ。和田京平は情を入れているじゃねえか。ルール度外視しているのは、そっちの方だ。地獄へ落ちろ」と、理不尽発言を繰り返した。なおも諏訪魔の狼藉は続く。自分に代わって王道トーナメントに送り込んだオジキことTARUと宮原健斗との1回戦に乱入。「ブードゥーに戻って来いよ」と宮原に執拗に迫った。宮原には「今日でブードゥー入り問題は終了だ」と完全拒絶されてしまったが、諏訪魔があっさりとあきらめるとは思えない。今後も勧誘活動を続けそうだ。

「地獄に落ちろ」と何のためらいもなく吐き捨てる様子は、まさに諏訪「魔」。悪魔に魂を売り飛ばしたごとく憎々し気な表情を浮かべている。今年5月、ブードゥーに復帰して以降、身も心も「悪の原点回帰」した諏訪魔が乗りに乗っているのは、まぎれもない事実である。

 2006年にプロデビュー1年半にして、悪党軍団ブードゥー入りした諏訪魔。本名の「諏訪間幸平」を捨て、リングネームを変更したが、その後、何度もリングネームを本名に戻す機会はあった。自ら軍団を立ち上げたり、専務に就任したときもいいチャンスだったが、その度に「う~ん、このままでいいや」と頑なだった。

 思えば、自分が諏訪「魔」なことを、自覚していたのだろう。体の底から湧き上がってくる悪の感情を抑えきれない。粗暴なセリフが自然に口から出て来る。「地獄に落ちろ」と吐き捨てると、気持ちが良くなる。暴走ファイトに磨きがかかり、今まで以上に暴れ回る。コメントも試合も豪快この上ない。諏訪魔はブードゥーが本来の居場所だったのだ。

 創立50周年の全日本。記念大会(9月18日、東京・日本武道館)のメインイベントは3冠戦だろう。しかも最後に花道から入場してくるのは、王者の諏訪魔。天国のジャイアント馬場さんはどう思っているのだろう。ジャンボ鶴田さん、三沢光晴さんの胸中やいかに。

「そんなの知ったこっちゃねぇ!」という諏訪魔の高笑いが聞こえる。

次のページへ (2/2) 【写真】諏訪魔は和田京平レフェリーにも猛反発
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