韓ドラ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」 日本語字幕には限界も…“回文”翻訳に苦労の跡

Netflixは7日(米国時間6日)、9月第1週(8月29~9月4日集計)のグローバルTOP10を発表した。韓国ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」が視聴時間4882万時間を記録しグローバルNetflixTV部門全体(英語と非英語)で1位となった。「ウ・ヨンウ」は7月第2週(4~10日)に初めて非英語圏1位を記録後、7月第4週の1回を除いて非英語圏1位の座を守り続けている。日本のテレビ部門TOP10でも6週連続で1位を独走中だ。世界中に“ウ・ヨンウシンドローム”が広がる中、日本国内の多くの視聴者は日本語字幕を目で追っているだろうが、実は日本語字幕だけでは原作の魅力が十分伝わらない、というジレンマが指摘されている。

Netflixテレビ部門1位を維持した「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」【写真:(C)Netflix】
Netflixテレビ部門1位を維持した「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」【写真:(C)Netflix】

「ウ to the ヨン to the ウ!」の元ネタはBIGBANG

 Netflixは7日(米国時間6日)、9月第1週(8月29~9月4日集計)のグローバルTOP10を発表した。韓国ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」が視聴時間4882万時間を記録しグローバルNetflixTV部門全体(英語と非英語)で1位となった。「ウ・ヨンウ」は7月第2週(4~10日)に初めて非英語圏1位を記録後、7月第4週の1回を除いて非英語圏1位の座を守り続けている。日本のテレビ部門TOP10でも6週連続で1位を独走中だ。世界中に“ウ・ヨンウシンドローム”が広がる中、日本国内の多くの視聴者は日本語字幕を目で追っているだろうが、実は日本語字幕だけでは原作の魅力が十分伝わらない、というジレンマが指摘されている。

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(※以下、ドラマの内容に関する記述があります)

 同ドラマは韓国の新興ケーブルチャンネルENAの水木ドラマとして放送され初回の視聴率は0.9%だったが、口コミで話題となり最終回は17.5%と驚異的な伸びを見せた。自閉スペクトラム障害を持つIQ164の新米女性弁護士ウ・ヨンウ(パク・ウンビン)が一流弁護士事務所「ハンバダ」に入所し、さまざまな裁判で活躍する姿を描いたヒューマン法廷ドラマ。世の中に残る偏見や差別、また韓国社会の教育、環境、労働問題に正面から問題提起をする一方、親子、友人、職場の同僚との温かい人間関係をほほえましく描くなど多彩な魅力で視聴者の心をつかんだ。

「ハンバダ」という弁護士事務所の名前には深い意味が込められている。「ハンバダ」とは韓国語で「広い海」といった意味。クジラを愛するウ・ヨンウが飛び込んだ先が「広い海」だったわけだ。最初は奇異の目で見られていたウ・ヨンウだが、抜群の記憶力と大胆な発想で大活躍し先輩、同僚、クライアントらの信頼を勝ち取っていく。腹黒策士と呼ばれた新人男性弁護士も最後はウ・ヨンウを応援し、ハンバダの代表弁護士ハン・ソニョンはウ・ヨンウの正式雇用を決めた。自閉症の子どもは水の流れや動き、光る様子を好むという研究があり、そうしたことも「ハンバダ」の名前に込められていそうだ。一方、「ハンバダ」と対抗する大手法律事務所の名は「テサン」。韓国語では「高く大きな山」という意味で、ここに「海」VS「山」という対立構造が表れている。法律事務所テサンのパートナー弁護士テ・スミはウ・ヨンウの実母だが、出産直後にウ・ヨンウを捨てておりウ・ヨンウにとっては高く険しい存在だ。

 第1話で登場したウ・ヨンウの最初のあいさつも日本語字幕だけでは面白さが伝わらない。法律事務所ハンバダに初出勤したウ・ヨンウが自己紹介する際、日本語字幕では「どちらから読んでもウ・ヨンウです。キツツキ、トマト、スイス、子猫、南、駅三駅」となっており一瞬、「えっ、どういうこと?」となってしまうが、韓国語のせりふは「私の名前はウ・ヨンウと申します。そのまま読んでも逆から読んでもウ・ヨンウです。キロギ(鳥の雁:カリ)、トマト、スイス、インドイン(インド人)、ビョルトンビョル(流れ星)、ウ・ヨンウ、ヨクサムヨク(駅三駅)」となっている。回文の日本語翻訳にかなり苦労した跡がうかがえる。

 ウ・ヨンウが親友トン・グラミとあいさつする際の決まり文句も興味深い。ウ・ヨンウを見つけたトン・グラミは「ウ to the ヨン to the ウ!」、これを受けてウ・ヨンウは「トン to the グ to the ラミ!」と返して互いに決めポーズ。「トン・グラミ」の韓国語の意味は「円、丸、円形」。自閉障害を持つ人は円形を見ると安心する、という専門家の意見を取り入れたネーミングだ。ウ・ヨンウが丸い形のキムパプ(韓国風のり巻き)を好むのもそうした理由からだ。ちなみに、「ウ to the ヨン to the ウ!」の元ネタはBIGBANGが2009年に公開した「LAST FAREWELL(最後のあいさつ)」という楽曲のミュージックビデオ中に登場している。「B to the i to the g、bang bang!」(ビー トゥザ アイ トゥザ ジー、バンバン」というラップのフレーズが韓国で当時大流行していたことを思い出したトン・グラミ役の女優チュ・ヒョニョンが自ら考案したという。もともと台本にはなかったせりふが「ウ・ヨンウ」をさらに盛り上げることとなった。

 そもそも「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」は日本配信用のタイトルだ。オリジナルは「風変わりな弁護士ウ・ヨンウ」。印象がずいぶん異なることが分かるだろう。韓国ドラマの日本語字幕は文化や習慣の違いからオリジナルの意味とどうしてもずれてしまうことがある。韓国語が聞き取れれば「ウ・ヨンウ」の魅力をさらに深く理解できるだろう。

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