TKO木本の投資トラブル報道、仮想通貨業界が大反論「暗号資産がスケープゴートに」

お笑いコンビ「TKO」の木本武宏が総額数億円にのぼる投資トラブルについて報じられ、23日付けで所属事務所の松竹芸能を退所するなど波紋を広げている。報道では、投資トラブルが暗号通貨(仮想通貨)を使ったNFTゲーム「STEPN(ステップン)」によるものではとも報じられているが、これにNFTゲーム業界からは「問題はそこじゃない」と反論の声が上がっている。

「TKO」の木本武宏【写真:ENCOUNT編集部】
「TKO」の木本武宏【写真:ENCOUNT編集部】

総額数億円にのぼる投資トラブルが報じられ、所属事務所の松竹芸能を退所

 お笑いコンビ「TKO」の木本武宏が総額数億円にのぼる投資トラブルについて報じられ、23日付けで所属事務所の松竹芸能を退所するなど波紋を広げている。報道では、投資トラブルが暗号通貨(仮想通貨)を使ったNFTゲーム「STEPN(ステップン)」によるものではとも報じられているが、これにNFTゲーム業界からは「問題はそこじゃない」と反論の声が上がっている。

 NFTゲームとは、暗号資産のブロックチェーン技術を利用したゲームのこと。ゲーム内容はカードゲームバトルや実際の歩行距離に応じて仮想通貨がたまる位置情報ゲームなどさまざまで、一般的なソーシャルゲームと同じくスマートフォンひとつで手軽にプレイすることができ、ゲーム内で手に入れた仮想通貨を電子マネーなどの形で日本円など実際の通貨に換金することができる。仮想通貨の価値は株式と同じようにゲーム運営企業へやゲーム経済圏に対する信用で成り立っており、利用者数やサービス内容次第では価格が変動するリスクはあるものの、国や銀行等を介することなく財産的価値をやり取りする仕組みとして、近年大きな注目を集めている。

 木本がハマっていたと報じられている「STEPN」は、ゲーム内で架空の「スニーカー」を購入し、実際に歩いた距離に応じて仮想通貨が手に入るというNFTゲーム。4月にテレビ東京で放送された「やりすぎ都市伝説 2022春」では、木本自ら「歩くだけで稼げるんですよ」と熱心に紹介していた。

 仮想通貨バブルだった2018年には、出川哲朗が出演するCMをきっかけに仮想通貨に参入した人たちが、CM放送直後にバブルがはじけて大損。「出川組」という言葉が生まれるなど、仮想通貨に限らず芸能人が絡んだものは注目を集めやすく、センセーショナルに報じられる傾向にある。そんな状況に危機感を抱くのがNFTゲーム業界の関係者だ。

資金の大きさから、大部分は他の投資によるものではないかと予想

 NFTゲームを始める人向けに、今どのゲームが稼げるのかや、ゲームの攻略情報などをアドバイスするブロックチェーンゲームギルド「LCA Game Guild(LGG)」の庄司隆弘氏は「STEPNは今年4月までは稼げるアプリとして有名で、1か月に2000万円を稼ぐユーザーもいました。しかし、5月に運営が暗号通貨が厳しく規制されている中国からの撤退を発表。新規ユーザーを見込めなくなり通貨の価値が大きく下落しました」と現状を解説。

 その上で「ただ、あくまでも歩かなければ仮想通貨が溜まらないのがSTEPN。いくら知人から集めたにしても、報道されている5億円、7億円もの額はあまりに大きすぎる。集めた資金がSTEPNに使われていたかは、現時点で警察から正式発表はされてませんし、資金の大きさから、大部分は不動産やFXなど他の投資によるものではないかと予想します。STEPNが分かりやすいゴシップとしてやり玉にあげられていますが、問題はそこじゃない。これでは暗号資産がスケープゴートにされているだけですよ」と現在の報道のされ方に疑問を唱える。

「今回の件には正直『またか』と辟易しています。ようやく今年から高校で投資の授業が始まりましたが、根底には投資に疎く、それで得た金を汚いと感じる国民性がある。それでいて国全体の閉塞感から、安易にギャンブル的な投機に手を出して失敗しているのが現状です。投資はきちんと勉強して、信頼できる一次情報にアクセスし、リスクを分散して手堅く利益を得るもの。他人に資金を預けるなんてとんでもない。今回の件で『やっぱり仮想通貨は信用できない』となると、ますますマネーリテラシーが育たず、いずれは東南アジアにも抜かれるようになるでしょう」(庄司氏)

 1990年代にも、インターネットの利用拡大において、日本は米国に大きく出遅れ水をあけられた。新しい技術の誕生直後はなかなか世間に浸透しづらいものだが、リスクについて正しく学びリテラシーを養うことこそ求められているのかもしれない。

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